鬼憑きの姫なのに総モテなんて!

鳩子

文字の大きさ
65 / 186
第四章 後宮には危険が一杯!

2.宮中は、とにかく広いんです

しおりを挟む


 勘解由さんとお話ししている間に、やっとの事で二条の姫さまが追いついた。

「お……二人とも、早い……です……わ!」

 息が上がっている。顔が真っ赤に上気していて、かなり可愛い。

「あのなあ、仕方がないだろう? この宮中、ちんたら歩いていたら、日が暮れるんだよ。私らは、あっちによばれ、コッチに呼ばれ……で大変なんだ。おかげで、長袴がすり切れるったら」

 ……うわー……。

「ま……あ、そうとは、知らずに失礼を……。勘解由さまは、毎日、……この広々とした宮中を駆け回って、おいでなのです、ね……」

 はあはあ、と二条の姫さまは、息も絶え絶えで苦しそうだ。

「アンタ、大丈夫かい? なんなら、この近くに関白の直廬じきろがあるから、休んでいこうか」

 おおい、勝手に良いのかい!

 突っ込みたかったけれど、ちょっと、直廬とやらには興味はあったし、さっきから、頭痛もしてきた。

 ちなみに直廬っていうのは、宮中に賜ったお部屋のことね。

「まあ、嬉しい。すこし、休まないと、私、こんなに、あるいたこと、ないのですもの」

「あー、アンタ、それじゃ、出仕は辛いぜ? 結構、お后さんたちも、歩き回るはずだからな。なんてったって、お召しがあったら、主上の所までいかなきゃならないし、儀式のたびに、やれあっちだのこっちだの……」

 ケラケラと、勘解由さんは笑う。

 本当に、優雅とかそう言うのとは、全く縁遠い雰囲気で、気が楽になる。

 私は、自分の装束を見遣って、胆が冷える思いになった。

 この勘解由さんでさえ、色をゆるされてはおらず、萌黄色の唐衣。勿論、二条の姫さまも、色を聴されて居ないので、浅黄の唐衣だ。

 なのに、私一人で、これ見よがしに『赤』!

 色を聴されて、名前まで頂いて? ……これは、

『私、帝のお気に入りですけど、何か? ふふん』

 と吹聴して歩いているようで、痛い!

 私は、もう、このまま、回れ右して引き返そうかと思うほど、帝の前に出るのが嫌になってしまった。

「参内は疲れるだろ。関白さんに甘えて、休もうぜ……私の所の女房に、木菓子でも持ってこさせるから」

「まあ! 嬉しい」

「あ、あのー」と私はついつい、申し出てしまった。「直廬をお借りするお礼に、関白殿下にも、木菓子をお裾分けできますか?」

「ん? ああ、構わんよ。あの人、アレで、スイーツ男子だから! ……って、悪い意味じゃないぞ、アンタの兄貴だもんな。仕事カンペキのイケメン関白が、実はスイーツ男子っていうギャップが良いのよ! 尊いわ! という女房がいてだな」

「あら……兄上は、女房達に嫌われているのだと思っておりましたわ」

「なんでだい?」

「なんだか、閉じ込められたり、儀式の時にも裾をふまれたりしていたと、仰せでしたから」

 イジメに近いな……。と思ったけど、閉じ込めに関しては、先ほど、勘解由さんが真相を語ってくれたから。これはまあ、帝が悪いので、関白殿下は、まるっきりのとばっちり。

 裾をふむのは、ちょっと……と思っていたら、勘解由さんが、微妙な表情をした。

「いやあ……妹のアンタの前で言うのも変なんだけど……、関白は、一部の女房達から、『困り顔が見たい』とかいう理由で、いろいろ、ちょっかいを受けているんだよな……。関白が気にしているようなら、女房達を遠ざけるようにはするが、どうだろう」

「あ、それでしたら大丈夫です、うちの邸にもそういう女房はいるので」

 いるのかい!

「あ、そう……ならいいが……ちなみに、スイーツをこっそり食べている関白を影からこっそりのぞき見するのが趣味という特殊な女房達も居るが……」

 なんか、関白さん、濃いのに好かれてるな。

 困り顔が見たい、とか、スイーツ食べてるところがイイ……なんて、ちょっと、変質者の領域だろう。

「そんなわけで、嫌われているわけではなく、むしろ、絶大な人気を誇っているから、そこは気にするな」

 勘解由さんは、やっと息の整った二条の姫さまと私を引き連れて、関白殿下の直廬へと立ち入る。

 ここは、関白殿下が個人的に賜っている執務室なので、関白殿下の側付の女房だとかが、部屋には控えていたりする。でないと、いざ、装束を脱いで休んだあとに、装束が着れない! なんて事になるかも知れないからね。

 ―――とはいえ、ここの女官さんたちなら、小袖一枚で、アタフタする関白殿下を見て、にやにや笑っていそうで怖いけど。



しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜

侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」  十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。  弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。  お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。  七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!  以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。  その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。  一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる

若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ! 数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。 跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。 両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。 ――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう! エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。 彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。 ――結婚の約束、しただろう? 昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。 (わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?) 記憶がない。記憶にない。 姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない! 都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。 若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。 後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。 (そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?) ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。 エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。 だから。 この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し? 弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに? ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...