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第四章 後宮には危険が一杯!
5.勅命ゲットだぜ!
しおりを挟む「はあ? 穢れって、なにがあったんだよ!」
勘解由さんが、女房を怒鳴りつける。
「それが、この先の渡殿の下で、犬が子を産んでおりまして……」
慣れているのか、女房は平然と、勘解由さんに答えていた。
そうなのよね~。出産も『産穢』と言って、穢れ扱いなのよね~。血が出るからと言うより、お産そのものが穢れ扱い。お産のあった家の主は、その日は出仕も出来ないから、まあ、ポジティブに出産休暇と思えば良いと思うけどさ。
そうすると、月のもの(生理)も穢れだから、こっちは、月経休暇かあ~。
「ああ、確かに最近太った犬が居たと思ったら」
勘解由さんは、思い出したように言う。狐とか、犬とかって、割合、宮中にのんびりしてるって事ですかね。帝に一刀両断されなきゃ、ほのぼの宮中モフモフライフだったのに。
「そうなんです。太った犬だとばかり思っていたのに、子を孕んでいただなんて」
はあ、と女房はため息を吐く。
「折角、いろいろと仕度致しましたのに。だって、この帝の宮中で、女人をお迎えするなんて、初めてのことなのですよ? 折角、私たち、頑張りましたのに!」
なんだか、こんな後宮でいいんだろうか。少なくとも、八年も後宮が空って言うのは、あんまり、正常なことじゃない。
嫌な考えだけど、万が一、帝に何かあったら。その上、東宮殿下にも何かあったら。
まだ、宮筋の方とかがいるから、完全には血統が絶えることはないとはいえ、やはり、今上帝の血筋が絶えてしまうことになる。
そういう意味で、帝は、他にお后さまを迎えるべきなのだが……。
女房たちがこの様子じゃ、いまの帝に見込みはなさそうだなあ。
「まあ、仕方がないだろ。それで、帝は、なんて仰せだ?」
「ええ。折角だから、関白殿下の直廬に泊まっていったらよいだろうと仰せです。また、明日、早いうちから参内するのも大変ですからね」
えーっ? 帰れると思ったのに。
私の本音は、だだ漏れていたらしく、勘解由さんが笑う。
「アンタは帰りたかっただろうがね。あの方は、帰さんよ。……折角、参内させたんだから、やすやすとは帰れないと思った方がいいぜ?」
「そんなの、困ります。替えの装束も、小袖もありませんのに」
そりゃあ、小袖も装束も何日も着ることは着るけど、さすがに、高貴な方とお逢いするとわかっていたら、気を使うわよ。今日だって、ちゃんと、頂いた装束に、愛用の薫りをたきしめたりしてるんですからね!(早蕨が)
「そうね、夜休むのに、装束のままというわけには行かないし、お化粧もあるものね……」
姫さまの言葉に、私も同意する。
「本当に、帝の御前に適当なかっこうで出るわけには行かないですから!」
「まあ、そーいうことを気にする方じゃないけどなあ……アンタら、一応、未婚の女だもんなあ、気にするか」
あーメンドクセーと、頭を掻きながら勘解由さんがいう。
「いいや、千種。関白に、連絡。泊まるから姫さんのお泊まり道具一式用意して持ってこいって伝えてくれ。部屋は直廬使うぞ」
「ええーっ! そんな、横暴な!」
「そうですわよ。勘解由さま。そんなことをしたら、荷物を載せた牛車が二十台は連なりましてよ!」
えー? そんなにはならないんじゃない?
と言おうとしたけど、二条の姫さまに便乗することにした。
宮中に、泊まるとか、本当に無理だ。なにか危険すぎる。
「姫さまの荷物の他に、私も荷物がありますからね!」
勘解由さんが、チッと舌打ちする。
「しゃあねぇなあ、奥の手つかうか。おい、アンタ、こうなったら、勅命貰ってこい! じゃないと、コイツらは云うことなんか聞かんからな!」
勅命……って、帝のご命令よ。誰も逆らえないヤツじゃない! 逆らったら、うっかり逆賊になるわよ!
「横暴な!」
「強情はった、アンタの自業自得だよ!」
勘解由さんは。若干、キレ気味だった。
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