鬼憑きの姫なのに総モテなんて!

鳩子

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第四章 後宮には危険が一杯!

14.『私は気付かなかった』……ということで!

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 まさか……その、鬼の君の『母君』が、登華殿の女御様だというのならば。

 私は、自分の指先が、すぅっと冷たくなっていくのを感じていた。

 つまり、鬼の君は―――前の『廃帝』。

 おそらく、二条関白家の筋の廃帝ということで、『二条廃帝』とでも呼ばれる方だ。

 私は、小鬼に鬼の君の正体を問い掛けようとして、やめた。もし、本当に、鬼の君が『二条廃帝』だというのならば、目的も解らずに、問い掛けるのは、危険だ。

 だって、あの人は言ったはず。



『私は、ずっと、人を食う鬼の国に居て……、私自身も鬼になってしまったから、もはや、このまま死ぬ他ないと思っていましたが、あなたに命を救われ、自らを省みたときに―――鬼退治をしなければならないと、心に誓ったのです。』



 鬼の君の言う『鬼』は、誰のことか。

 そして、今現在のほぼ公式見解になって居る『前帝が皇太后(登華殿の女御)を呪殺した』という話を考えたら、もう、これは、聞くべきじゃない。

 はっきり言って、私みたいな、下級貴族の娘が知って居て良い『秘密』ではない。

 うん。私は何も知らない。気付かなかった! 鬼の君が、二条廃帝だなんて、考えもしなかった! そういうことで!

「あのぅ、姫さま?」

 小鬼が不審そう聞く。

「えーと……それにしても、なぜ、鬼の君は、あなたを、私の護衛に付けたのかしら? 普通に考えたら、関白殿下や帝に思いを寄せられたら、それは、もう女としては勝ち組よ? そのまま、入内でもなんでもした方が、家の為にはなるじゃない」

「ええ……ですが、我が主は、それだけがあの二人の目的では無いと考えているのです」

 つまり、私ではなく……、おそらく『登華殿の女御様の薫り』を身に纏っていた私だ。

 今、あの薫りを作ることが出来るのは……おそらく、『二条廃帝』と言うことになるのだろう。

 そして、その『二条廃帝』は―――崩御されたか、島流しにあったか、それとも、別の何かかも知れないけれど。私は、その方の居場所がわからない。

「あの薫りは、なんなのですか?」

 私は、とりあえず何も知らないふりをして聞く。まあ、小鬼が、正直に答えるとも思えないけど。

「あれは……我が主の母君の好んでおられた調合法で作られた、無銘の香です」

「そうだったの」

 では、やはり、小鬼の主―――つまり、鬼の君は、登華殿の女御様の息子。つまり、二条廃帝で間違いない。

 私は、陰陽師殿の奇妙な占いのことを思い出した。

 

『あなたの近くに、尊き影が二つ。あなたを巡り回っているのが見えます』


 これは、関白殿下と帝の事だと思っていたけれど、今上帝と前帝の事なのだろう。

 一体、どういう状況なんだか、一向に掴めない。

「ちょっと、小鬼、あなた、鬼の君には、連絡が付けられるの?」

「それは、勿論ですが?」

「だったら、連絡して欲しいことがあるのよ。まずは、私が、宮中で、登華殿の女御様に間違えられて襲われたっていうこと。それと……」

 私は、そこで口ごもってしまった。

 誰が敵で、誰が味方なのか、ちっとも解らない。

 そんな時に、ヘタに質問なんかしたら、きっと、命取りだ。

「他は……、何でしょう」

 小鬼が、私に問い掛ける。

「ううん、何でもないわ。鬼の君が元気かどうか聞きたかっただけ」

「そうですか。我が主ならば、息災でおいでです」

「それならば良かったわ。じゃあ、……あとで、鬼の君に逢えると良いけど」

「それは、近いうちに。では」

 と言い残して立ち去ろうとした小鬼だけど、人の気配が近づいてきたので、とっさに、小鬼には几帳の裏に隠れて貰うことにした。

 ……関白殿下が、淑景舎においでになったようだ。

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