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第四章 後宮には危険が一杯!
24.三つ巴
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三つ巴だ。
まずいことに、三つ巴。
「山吹、こうなったら、誰と付き合うか、今、決めなさい。まあ、あなたは、私を選ぶのだろうけど」
にっこりと、関白殿下は言う。
陰に、『あなたの父親と、兄上の進退は私にかかってますよ』という文字が見える気がして、ぞっとした。
「そんな、関白殿下……。物語のかぐや姫ではありませんけど、いずれも立派な殿方ばかりですから、とても、どなたかを選ぶなんて、できませんわ」
と、私は、よよ、と泣き崩れてみた。(嘘泣き)
「おや、そうなの? ならば、一番、立派な、私になさい」
「関白殿下! 立派という意味なら、将来性のある、私だって、立派ですよ!」
「自分で、言いますか、それ」
ため息混じりに言うのは、陰陽師殿。
「あなた方、ご自分が、如何に、ご立派かを、クドクドと仰せですが、どうです。私は、この恋の為ならば、すべてを捨てて、東国にでも二人手を取り合って、駆け落ちできますよ。
あなた方に、そんな覚悟がおありですか?」
関白殿下は、ぐっ、と呻いた。確かに、二条関白家と称される、立派な家のご当主だもの、駆け落ちなんか絶対に無理だ。
「いや! 私は、そもそも、駆け落ちするような事態にはならないね。
当主の私に、楯突くものがいるとも思えないし……家のものたちは、皆、私に、協力するさ。きっと、諸手を振って歓迎するはずだよ」
「僕だって、駆け落ちくらいできますよ。うちは、兄さんがいるし。
だけど、駆け落ちのような無責任なことを推奨してどうするんです。
一時は良くても、貧しくなって、日々の暮らしにも困るでしょう。そうならないような将来を選ぶことが出来なければ、鬼ちゃんだって、不安で堪らないでしょう。ねぇ、鬼ちゃん」
「まあ、駆け落ちで、東国は、ないけど、そんなことより、皆さま方! まずは、片付けることがありますわよ!」
そうだ、そうだ。
この、不毛な、争いをなんとかするためにも、本題に戻そう。
「片付けること?」
陽が、私に聞き返す。
「まずは、私が、首を絞められた件よ。最初は、大事にしたらまずいかもと思ったから、関白殿下にはお知らせしない方が良いかとも思ったけど、登華殿の女御さまが絡んでるならって、関白殿下をお呼びしたの!」
これは、早蕨の判断だけどねー。
「登華殿の女御? なぜ、十年も昔に身罷った皇太后さまの御名が出てくるのだ? 山吹、あなたに、一体、なにがあったんだ?」
陰陽師殿が、私に問う。
「詳しいことは、中で話すから。中へ入って。いいでしょう? 関白殿下」
「仕方がないなあ……」
無精ながらに言うけれど、いま、私は、この淑景舎の(臨時)主なのだ。一応、私の方に、決裁権があるはずだ。
陽と陰陽師殿には、階から上がって貰って、部屋の中へ入った。流石に、暗いけど、油もないし、どうしようかしらね……と思っていると、関白殿下が、パチンと扇を鳴らした。
すると、そそくさと女房が現れて、部屋を整え始める。見覚えのある女房は、関白殿下の直廬にいた千種さんだ。
「関白殿下、千種さんって、いつも控えてるんですか?」
「まあ、大抵の所には呼べば来るよ。……前は、うっかり、通っていた女の邸で扇を鳴らしてしまってね……あの時は、修羅場った修羅場った~」
関白殿下、私はともかくとして、男二人が、ジト目で見てますよー。
たった今、私を口説いていたと思ったら、他の女の話ですもの。正気を疑うわよ。フツー。
「やっぱり、通う方がおいでなんじゃありませんか………私、殿方は、一途な方が好きですの」
うふふ、と笑うと関白殿下はうぐっと言葉を詰まらせた。
「その点だったら、僕は、鬼ちゃん一筋で、まだ、室も迎えてないからね。なにせ、僕の室の座は、鬼ちゃんの為に明けてるんだから。ずっと、予約席なんだからね!」
「なにを。私だって、室はあなたと決めて、上司の娘との婚約を破棄したばかりだぞ!」
ちょっ、とやめてよー。
なんで、私の為に、婚約破棄された可哀想な姫が居るのよ!
「大丈夫、あなたのせいじゃない。もともと、あの女と、私はあんまりソリが合わなかったんだ。というか、リズム? が逢わない」
「リズム……?」
「そう、リズム。どうも、共に合奏などすると、わんさか、寄ってくるものだから」
なにが、とは聞かないことにしよう。
鬼憑きの私より、濃い姫が居たもんだわ。流石は、陰陽寮の上司さんの姫君!
などと、話している間に、部屋には灯りがともり、円座や薄縁が運び込まれて、ついでに、酒と膳まで運ばれた。
酌をするのに、千種さんが残ってくれているようなので、下がって貰おうとしたら、
「大丈夫だよ。千種は、弁えているからね。ここでは、几帳か、半蔀の様なものだと思いなさい」
と関白殿下が、冗談交じりに言う。
一瞬、千種さんの目の奥が、キラリと鋭く光ったのを見て、私は、ぞっとした。なにか、きっと、この千種さんは、関白殿下に仕返しするだろう。ご愁傷様。けど、元はと言えば、関白殿下の、デリカシーのない発言のせいだから、そこは、知ったことではない。
「さあて、それで、私は、何からお話しすれば良いのかしらね」
まずいことに、三つ巴。
「山吹、こうなったら、誰と付き合うか、今、決めなさい。まあ、あなたは、私を選ぶのだろうけど」
にっこりと、関白殿下は言う。
陰に、『あなたの父親と、兄上の進退は私にかかってますよ』という文字が見える気がして、ぞっとした。
「そんな、関白殿下……。物語のかぐや姫ではありませんけど、いずれも立派な殿方ばかりですから、とても、どなたかを選ぶなんて、できませんわ」
と、私は、よよ、と泣き崩れてみた。(嘘泣き)
「おや、そうなの? ならば、一番、立派な、私になさい」
「関白殿下! 立派という意味なら、将来性のある、私だって、立派ですよ!」
「自分で、言いますか、それ」
ため息混じりに言うのは、陰陽師殿。
「あなた方、ご自分が、如何に、ご立派かを、クドクドと仰せですが、どうです。私は、この恋の為ならば、すべてを捨てて、東国にでも二人手を取り合って、駆け落ちできますよ。
あなた方に、そんな覚悟がおありですか?」
関白殿下は、ぐっ、と呻いた。確かに、二条関白家と称される、立派な家のご当主だもの、駆け落ちなんか絶対に無理だ。
「いや! 私は、そもそも、駆け落ちするような事態にはならないね。
当主の私に、楯突くものがいるとも思えないし……家のものたちは、皆、私に、協力するさ。きっと、諸手を振って歓迎するはずだよ」
「僕だって、駆け落ちくらいできますよ。うちは、兄さんがいるし。
だけど、駆け落ちのような無責任なことを推奨してどうするんです。
一時は良くても、貧しくなって、日々の暮らしにも困るでしょう。そうならないような将来を選ぶことが出来なければ、鬼ちゃんだって、不安で堪らないでしょう。ねぇ、鬼ちゃん」
「まあ、駆け落ちで、東国は、ないけど、そんなことより、皆さま方! まずは、片付けることがありますわよ!」
そうだ、そうだ。
この、不毛な、争いをなんとかするためにも、本題に戻そう。
「片付けること?」
陽が、私に聞き返す。
「まずは、私が、首を絞められた件よ。最初は、大事にしたらまずいかもと思ったから、関白殿下にはお知らせしない方が良いかとも思ったけど、登華殿の女御さまが絡んでるならって、関白殿下をお呼びしたの!」
これは、早蕨の判断だけどねー。
「登華殿の女御? なぜ、十年も昔に身罷った皇太后さまの御名が出てくるのだ? 山吹、あなたに、一体、なにがあったんだ?」
陰陽師殿が、私に問う。
「詳しいことは、中で話すから。中へ入って。いいでしょう? 関白殿下」
「仕方がないなあ……」
無精ながらに言うけれど、いま、私は、この淑景舎の(臨時)主なのだ。一応、私の方に、決裁権があるはずだ。
陽と陰陽師殿には、階から上がって貰って、部屋の中へ入った。流石に、暗いけど、油もないし、どうしようかしらね……と思っていると、関白殿下が、パチンと扇を鳴らした。
すると、そそくさと女房が現れて、部屋を整え始める。見覚えのある女房は、関白殿下の直廬にいた千種さんだ。
「関白殿下、千種さんって、いつも控えてるんですか?」
「まあ、大抵の所には呼べば来るよ。……前は、うっかり、通っていた女の邸で扇を鳴らしてしまってね……あの時は、修羅場った修羅場った~」
関白殿下、私はともかくとして、男二人が、ジト目で見てますよー。
たった今、私を口説いていたと思ったら、他の女の話ですもの。正気を疑うわよ。フツー。
「やっぱり、通う方がおいでなんじゃありませんか………私、殿方は、一途な方が好きですの」
うふふ、と笑うと関白殿下はうぐっと言葉を詰まらせた。
「その点だったら、僕は、鬼ちゃん一筋で、まだ、室も迎えてないからね。なにせ、僕の室の座は、鬼ちゃんの為に明けてるんだから。ずっと、予約席なんだからね!」
「なにを。私だって、室はあなたと決めて、上司の娘との婚約を破棄したばかりだぞ!」
ちょっ、とやめてよー。
なんで、私の為に、婚約破棄された可哀想な姫が居るのよ!
「大丈夫、あなたのせいじゃない。もともと、あの女と、私はあんまりソリが合わなかったんだ。というか、リズム? が逢わない」
「リズム……?」
「そう、リズム。どうも、共に合奏などすると、わんさか、寄ってくるものだから」
なにが、とは聞かないことにしよう。
鬼憑きの私より、濃い姫が居たもんだわ。流石は、陰陽寮の上司さんの姫君!
などと、話している間に、部屋には灯りがともり、円座や薄縁が運び込まれて、ついでに、酒と膳まで運ばれた。
酌をするのに、千種さんが残ってくれているようなので、下がって貰おうとしたら、
「大丈夫だよ。千種は、弁えているからね。ここでは、几帳か、半蔀の様なものだと思いなさい」
と関白殿下が、冗談交じりに言う。
一瞬、千種さんの目の奥が、キラリと鋭く光ったのを見て、私は、ぞっとした。なにか、きっと、この千種さんは、関白殿下に仕返しするだろう。ご愁傷様。けど、元はと言えば、関白殿下の、デリカシーのない発言のせいだから、そこは、知ったことではない。
「さあて、それで、私は、何からお話しすれば良いのかしらね」
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