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第四章 後宮には危険が一杯!
25.美僧 鉉珱(げんよう)
しおりを挟む「まずは、状況の整理を」
と関白殿下。
「たしかに、必要ね。まず、そもそもの発端は、私が、関白殿下のお邸に臨時雇いの女房として入ったのが切っ掛けだったのよ。それで、帝と関白殿下にお会いして、なんだか気に入られてしまったというわけ。
それで、いろいろあって、山科に居るのも面倒になったから、邸を買ったのよ。今度は、平穏無事に過ごせるわーと思っていたら、あっという間にバレて、管絃をやるからって、宮中にお召しがあったというわけよ」
「ここに来た経緯はわかったけど……なんで、登華殿で倒れていたの?」
陽が首を捻る。陰陽師殿も、うんうんと頷いていた。
「うん。……じつは、折角宮中にきたんだから、すこし、色々見て回っちゃおうかなーと思って。そうしたら、急に、お坊さんに首を絞められたのよ。
『なんでお前が生きている』とか言いがかりを付けられてさあ。それで、気を失って、登華殿の女御様に乗り移る夢を見て、関白殿下と陽に来て貰ったって言うわけ」
「僧? どんな人だった?」
「えーと、凄い美形だったわよ。でも、それ以上は解らないの」
「このあたりに出入りする僧ならば、限られているだろう。おい、左兵衛大尉。お前、このあたりの衛士には顔が利くだろう? 出入りの僧なんか、すぐに解るんじゃないか?」
陰陽師殿は、横柄に陽に聞く。陽は、すこし、イラついたように、顔を顰めたけど、すぐに、手を打ち鳴らした。
すぐさま、陽の配下の者らしい水干を纏った男達が階下に現れる。
ホント、宮中って、どこに耳があるか解らないわね!
「今日、参内した僧について調べるように。関白殿下が、特に早くと仰せだ」
きびきびした声で命じる陽の姿を見て、思わず、私は、感心してしまった。なんとなく、陽って、のんびりしてる感じがしてたのよね。だから、部下なんかいたとしても、上手くやっていけないんじゃないかって、余計な事を考えていた訳よ。
ちゃっかり、関白殿下をダシにするとか、結構、ヤルなあって思うし。
勝手に名前を使われた関白殿下は、案の定、ムッとしたような顔をしているけれど。
水干の部下達は、音も立てずに拘束で歩いて門へと向かうようだった。
しばらく無言のままで待っていると、『殿』と声がして、陽が簀へと向かう。やがて水干の部下達を下がらせると、陽は、固い面差しで戻ってきた。
「左兵衛大尉、なにか解ったのか?」
関白殿下に問われて、陽は、こくん、と一つ頷く。
「本日、このあたりに出入りした僧は、鉉珱殿、一人と言うことでした」
鉉珱、知らない名前だ。というか、私、坊さんに知り合いって殆ど居ないけどね。
「鉉珱……」
関白殿下が、顔を顰めた。あまり、良い印象を持っていないようだ。
「関白殿下、その、鉉珱という僧のことはなにか、ご存じなのですか?」
「ご存じ……というか」と関白殿下は一度言を切った。「帝のお気に入りでね……とはいえ、あの方に、お気に入りなど居ないのかも知れないが……とにかく、何についても、あの鉉珱の意見を聞きたがるから、側に居ることが多いのだろうね」
成る程、秘書とか、そういう役割の人。と言う訳ね。
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