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第四章 後宮には危険が一杯!
27.理想のお尻に出会う為
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女御さまは、東宮さまをお上げになって、それから体調を崩されたのだ。
東宮さまは、今、御年九歳だったと思うけど、多分、愛らしいかたなんだろうなあ。
いまは、どちらでお育ち遊ばしているのか、わからないけど。
たしか、帝は、東宮さまにも、冷たくなさっておいでだと聞いたから、もしかしたら、宮中ではなくて、離宮だとか、鷹峯院のところにでもおいでなのかもしれない。
女御様のご実家、源家―――というのは、なさそうね。なんとなく。
「ともかく、その僧は、捕らえましょう。僕の鬼ちゃんを、殺そうとしたんだから、当然だよね」
「いやまて、左兵衛大尉。帝のお気に入りだ。おいそれと、捕縛は出来ぬぞ?」
「なんでだよ。悪いことをしたのは、向こうだろう?」
「ことは、高貴な方が係わるのだ。何にせよ、私の山吹が、酷い目にあったのは、事実だが、それだけでは、弱いのだ。他に目撃した者はいないのか?」
小鬼がいるけど、女装中だから、危ない、よな。女装して、ここに来たと言ったら、多分大事になるだろうし、もし、鬼の君の関係者だとバレたら、マズイよね。うん。
「私を助けてくれた女房はいますけど、どうやら、僧の顔などは見ていないようです」
「そうか。ならば、余計に、人違いだとか言われて、はぐらかされるな」
「山吹には悪いが、ここは、あまり事を大事にしないほうが良いだろう。
左兵衛大尉、陰陽師、済まぬが、ここは、この関白に任せて貰えぬか?」
「任せるといっても、なにを任せるのだ。件の僧か? それならば、熨斗付けてお任せするが、あなたの側に、山吹を置くのは、安堵できない」
「僕も、同意件です。……ねぇ、鬼ちゃん、なんなら、一度、源家においでよ。どうせ、宮中にいても暇でしょう? しばらく、犬の産穢でお召しはないんだからさ」
「左兵衛大尉!」
関白殿下が、怒鳴り付ける。
私は、ちょっと、悪くないな、と思った。なんといっても、中将の願いを叶えてあげたいし。
源大臣なら、淑景舎によびつけるよりは、自然にお会いできるだろう。
「陽。源大臣に、お会いすることは、可能かしらね」
「父上に? うん、勿論、大丈夫だよ」
「じゃあ、私、明日は、源大臣邸にお邪魔するわ」
関白殿下をチラリと見ると、不機嫌そうに腕を組んでいたけど、やがて口を開いて言う。
「まあ、セクハラには注意して。あの人、なんで、あんなセクハラオヤジに、なったんだか。あんなじゃなかったら、もう少し、出世したのにねえ。
登華殿の女御さまなんか、かなり、嫌ってらしたようだけど」
まあ……嫌うよね。それに、あのセクハラジジイが原因で、中将が自殺したんだし。
「すみません。うちの父、大昔、手酷くフラれたらしいんです。通っていた女に、他の男がいたとかで。
それから、理想のお尻に出会う為に、女房のお尻をさわり続けるとか、酷いことをいうもんで……僕も、兄さんも、本当に迷惑してるんですけど。
あ、一番、迷惑しているのは、うちの父にお尻を、さわられた、女房さんたちですね」
なんというか、途中まではありがちな話だったのに、なんで、そう、濃い方向に間違えたんだか。
うーん、中将のこと、覚えてるといいけど。大丈夫かなあ。
「で、山吹。……あなたは、一体、なにを調べてるの? 鬼の、正体?」
ふふ、と関白殿下は薄く笑っていた。
この人って、忘れてた(慣れた)けど、物凄い、美形だったのね。
背筋に、鳥肌が立って、止まらない。
東宮さまは、今、御年九歳だったと思うけど、多分、愛らしいかたなんだろうなあ。
いまは、どちらでお育ち遊ばしているのか、わからないけど。
たしか、帝は、東宮さまにも、冷たくなさっておいでだと聞いたから、もしかしたら、宮中ではなくて、離宮だとか、鷹峯院のところにでもおいでなのかもしれない。
女御様のご実家、源家―――というのは、なさそうね。なんとなく。
「ともかく、その僧は、捕らえましょう。僕の鬼ちゃんを、殺そうとしたんだから、当然だよね」
「いやまて、左兵衛大尉。帝のお気に入りだ。おいそれと、捕縛は出来ぬぞ?」
「なんでだよ。悪いことをしたのは、向こうだろう?」
「ことは、高貴な方が係わるのだ。何にせよ、私の山吹が、酷い目にあったのは、事実だが、それだけでは、弱いのだ。他に目撃した者はいないのか?」
小鬼がいるけど、女装中だから、危ない、よな。女装して、ここに来たと言ったら、多分大事になるだろうし、もし、鬼の君の関係者だとバレたら、マズイよね。うん。
「私を助けてくれた女房はいますけど、どうやら、僧の顔などは見ていないようです」
「そうか。ならば、余計に、人違いだとか言われて、はぐらかされるな」
「山吹には悪いが、ここは、あまり事を大事にしないほうが良いだろう。
左兵衛大尉、陰陽師、済まぬが、ここは、この関白に任せて貰えぬか?」
「任せるといっても、なにを任せるのだ。件の僧か? それならば、熨斗付けてお任せするが、あなたの側に、山吹を置くのは、安堵できない」
「僕も、同意件です。……ねぇ、鬼ちゃん、なんなら、一度、源家においでよ。どうせ、宮中にいても暇でしょう? しばらく、犬の産穢でお召しはないんだからさ」
「左兵衛大尉!」
関白殿下が、怒鳴り付ける。
私は、ちょっと、悪くないな、と思った。なんといっても、中将の願いを叶えてあげたいし。
源大臣なら、淑景舎によびつけるよりは、自然にお会いできるだろう。
「陽。源大臣に、お会いすることは、可能かしらね」
「父上に? うん、勿論、大丈夫だよ」
「じゃあ、私、明日は、源大臣邸にお邪魔するわ」
関白殿下をチラリと見ると、不機嫌そうに腕を組んでいたけど、やがて口を開いて言う。
「まあ、セクハラには注意して。あの人、なんで、あんなセクハラオヤジに、なったんだか。あんなじゃなかったら、もう少し、出世したのにねえ。
登華殿の女御さまなんか、かなり、嫌ってらしたようだけど」
まあ……嫌うよね。それに、あのセクハラジジイが原因で、中将が自殺したんだし。
「すみません。うちの父、大昔、手酷くフラれたらしいんです。通っていた女に、他の男がいたとかで。
それから、理想のお尻に出会う為に、女房のお尻をさわり続けるとか、酷いことをいうもんで……僕も、兄さんも、本当に迷惑してるんですけど。
あ、一番、迷惑しているのは、うちの父にお尻を、さわられた、女房さんたちですね」
なんというか、途中まではありがちな話だったのに、なんで、そう、濃い方向に間違えたんだか。
うーん、中将のこと、覚えてるといいけど。大丈夫かなあ。
「で、山吹。……あなたは、一体、なにを調べてるの? 鬼の、正体?」
ふふ、と関白殿下は薄く笑っていた。
この人って、忘れてた(慣れた)けど、物凄い、美形だったのね。
背筋に、鳥肌が立って、止まらない。
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