鬼憑きの姫なのに総モテなんて!

鳩子

文字の大きさ
113 / 186
第五章 後宮からの逃走

12.あなたの、名前を呼びたい

しおりを挟む

 さて、困った。

 今回は、私の歓迎会なので、他家の公達は殆んどいないはずだったけど、やはり、多少は、参加していたらしく。

 私の琵琶を聞き付けて、廊下には、陽と潤さん含めて七人の青年公家たちが集ってしまった。

「まあ、あれだけの琵琶の弾き手でしたら、是非とも縁付きたいと思いますわ。当然のことでしょう?」

「そんなもん?」

「ええ、そんなもんです。第一、公家の姫ぎみは、お顔を晒さず、御簾の奥からお話なさいますし、それも、わたくしたち、取り次ぎの女房いての、ことですわ。
 そうなったら、姫ぎみご本人のことをどうやって判じるかと言ったら、楽器の腕前だったり、装束の取り合わせだったり、和歌やご手跡だったりしかありませんからね」

 そうかあ、と私は、生返事をした。私、最近、殿方とふつうにはなすことが多かったわ。これは、はしたなかったわね。

 反省しなきゃ。

「それにしても、姫さま、人気ですね。こんなに多い殿方が集まって……」

「みんな、主賓の私に気を使ってるんでしょう? 誉め言葉も真に受けない!」

 そう、先ほどから、

伎芸天ぎげいてんが降臨されたような、見事な、琵琶で……」

 だとか、

「本当に長々とした美しい黒髪をお持ちで……」

 だとかいうのが、聞こえてくる。

 だいたい、これは、美女への賛辞だけど、耳なれないから、なんというか、面映ゆい。

「せっかく、宴を張ったのに、こんなに邪魔者がくるなんて……」

 集まった貴公子達がなんとか捌けた頃、陽は陽で、ため息を漏らした。

「邪魔者って、陽、そんな言い方は、酷いわよ?」

「酷くないよ。ここで、鬼ちゃんと懇ろに、なって無事結婚ってところまで持って行こうとしたのに、計画が崩れたよ」

 さらっと言ったけど、なんという、おそろしい計画。

「私、陽に、お返事してないわよ?」

「返事を聞くのが恐いから……既成事実を作れば、こっちのもんかなあと」

 ちょっとした、悪魔か! あんたはっ!

「だって、仕方ないじゃない。帝とか関白殿下が、恋敵なんだから、少しは強引な手段を使わないと、鬼ちゃんに入内の命令がくだったりしたら、もう、僕は、手も出せないし」

 だからといって、やり口が強引過ぎる!

「せっかくの宴で、僕はみすみす、ライバル増やしただけじゃないか。一体、鬼ちゃん、誰を選ぶのさ?」

 陽が、私の手を、御簾の下から捕らえた。

 咄嗟に手を引こうとしたけど、強い力だったから、とても、引けない。

「離してよ、痛いじゃない」

「教えてくれたら、放すよ」

「教える……って、私、良く解らないもん。第一、自分で決めていいの? 娘の結婚相手なんて、普通は、家が決めるのよ?」

「はぐらかさないでよ」

 ぴしゃりと、陽に言われて、私は、言葉に詰まる。

 だって。

 決められない、わよ。

 今まで、私って結婚には縁遠かったのよ? 私のステータス、『鬼憑き』って呪い入ってたんだからね? なのに、急に。モテても困る。

「じゃあ。あとでおしえて。
 ねえ、鬼ちゃん。鬼ちゃんは、呪いが解けなくて、死ぬなら、誰の腕の中で死にたいの?」

 死ぬ前提で話をするなっ! と、どなりたくなったのを堪えて、想像してみる。

 私は、誰に、抱き締められたい……?

 誰のぬくもりに包まれて、黄泉へ向いたい?

 答えはでないけど、考えないと、ダメなのか。

「答えは、鬼ちゃんの呪いが解けた時にきくからね」

「でも。私、死ぬかもよ?」

「鬼ちゃんは、死なせない。僕の命を掛けてもいい。鬼ちゃんを救えないなら、僕は、この世に居る意味はないからね。
 だから、改めて、鬼ちゃん、あなたの、名前を呼びたい」

 熱っぽい言葉が、私の頬を熱くさせた。胸がいっぱいで、涙がでる。

「じゃあ、今日は、引き揚げるね。明日は、うちの女房として、鷹峯へ」

「う、うん。わかったわ」

「じゃあ、おやすみなさい、鬼ちゃん」

 陽は、捕らえた私の指先に、そっと口付けをおとしてから、はにかむ陽は笑って去って行った。


しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜

侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」  十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。  弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。  お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。  七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!  以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。  その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。  一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる

若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ! 数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。 跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。 両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。 ――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう! エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。 彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。 ――結婚の約束、しただろう? 昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。 (わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?) 記憶がない。記憶にない。 姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない! 都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。 若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。 後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。 (そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?) ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。 エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。 だから。 この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し? 弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに? ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

処理中です...