鬼憑きの姫なのに総モテなんて!

鳩子

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第五章 後宮からの逃走

13.大事なのは真心

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 翌日は、快晴だった。

 今日の装束は、女房装束フルセットだけど、流石に禁色は着ていかない。

 目立つし。

 四人のりの牛車に乗って、私たちは、一路、鷹峯に向かった。

 鷹峯は、都の北にある。ちょっとした山だって聞いているので、山科育ちの私は、ちょっと嬉しい。

 山中におわす上皇なんて、良いわね。

 今日の私は、源大臣家の女房なのだ。鷹峯院という方の評判が、(関白殿下と小鬼の二人から)最悪なので、かなり、不安だけど、とにかく、行くしかない。

 なにせ、私は、命懸けだからだ。もう、本当に、なんでこんなことに!

 でも、命が懸かってると聞いたら、やっぱり私は、死ぬのは嫌だし、うん、恋もしないままなんて、寂し過ぎるわ。

 なーんて思っていたら、ふと、陽に言われた言葉が頭の中を駆けていく。



「じゃあ。あとでおしえて。
 鬼ちゃんは、呪いが解けなくて、死ぬなら、誰の腕の中で死にたいの?」


 めちゃくちゃ、よねえ。

 私、まだ、死にたくないし。死ぬつもりもないんだから。

 関白殿下と、陰陽師殿と、陽と……みんな、いい人だけどね。

 かと言って、帝に殺されるのも真っ平だし。

 人生の最後になにが食べたい? くらいの質問なら、気楽に答られるのに、さ。

 ちなみに、その場合は、山科で取れた木菓子だなあ。

 桃なんか、素晴らしく美味しいし。小さなりんごの酸っぱさもいい。(りんごは、かなり酸っぱいし、小さいの。さくらんぼより、少し大きいくらいね。もしかしたら、千年くらいたったら、大陸のむこうのほうから、大陸らしい大きくてあま~いりんごが渡ってくるかもしれないけど)

 蜜棗を頂いたことがあるけど、あれも贅沢で美味しかったなあ。

 と、私は、食べ物の事を考えて、現実の、殿方たちの諸問題をうやむやにした。

 物語とかでも、どうやって、恋に落ちるかなんて書いてないし。第一、今のところ、私は、殿方と、ちゃんと文を交わしたことだってない。

 うん、やっぱり、文! 文が一番大事よ! でないと、私も、気持ちが整わないじゃない。

 まあ、関白殿下にしろ、陰陽師殿にしろ、陽にしろ、どなたと縁付いても、幸せにはなれそうだわ。うん。

 しかし、私は、ここで、あることを思い出してしまったのだった。

 そう。

 あの、鬼の君のことだ。

 あの方も、軽々しく、私に求婚まがいなことを仰せだった。

 気になって、小鬼に耳打ちしてみる。

「ねえ、小鬼。もしかしたら、鬼の君って……私に求婚、した感じになってる?」

「あの方、本気で求婚したと思い込んでますよ? まあ、私は、山科の姫さまは、鄙住まいの方で、身分も低い方ですから、きっと後々ご苦労なさるでしょうし、お止めになったほうがよろしかろうと、申し上げましたが、無駄でした。あの方、思い込みが激しいので。
 ええ、そこは、父ぎみに似ておいでだとおもいます」

 うわー。私ってば、すごいモテ期!

 帝、前帝、関白、幼馴染み、陰陽師!

 誰を選ぶのが、一番、角が立たないんだろう? なんて、ちょっと、思ったら、少しだけ愉快になった。

「姫さま、どうなさったんです? 先ほど~、にやにやと」

「うーん、私、誰を選ぼうかと思ったら、にやけちゃったわよ。だって、すごいじゃない!」

「私の経験ですと、真心を尽くせる方と結ばれるのがよろしかろうと、おもいますわ。その方を、疑ったり、試したりしては、真心が離れていきます。
 私も、そうやって、命を懸けた恋に破れたのですもの」

 じっさいに恋で命を落とした中将の言葉は、重く響く。

 いつか、私は、中将の話を聞いてみたいな、と思った。

 教えてくれるといいけどな。

 真心。

 確かに、これが一番、大事かもしれないわね。
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