鬼憑きの姫なのに総モテなんて!

鳩子

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第六章 大ピンチ! 呪いも運命も蹴散らして

17.それはそうと、理想の尻

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 源大臣は、長年探し求めてきた『理想の尻』を、中将に見たらしい。はた迷惑な人である。

 そして、よろよろと中将に近づいて来ると、「おおっ!」と驚いて目を丸くした。

 おそるおそる、中将に近づく。

「なんと………あなたは、青女せいじょさまに瓜二つ……、あの方の、係累のかたなのですか?」

 源大臣が『青女』というが、私は聞き覚えのない言葉だったので、鬼の君に目配せする。

「青女触れ来たる菊上きくじょうの霜―――大陸の神話で雪降らす女神だよ」

 みんな、知って居て当然という顔をしている。うう、真名まな(漢字)なんか、殆どやってきてないわよっ!

「そうなのです。私は、かつて、登華殿の女御様にお仕えしていた、中将という名の女房と、情を通じておりました。私がまだ、十七歳……あの方が、二十六だったか……。
 私は、あの方を、青女さまと読んでお慕いしていたのです。けれど、あの方は、私をこっぴどく振って、そのまま、どこぞへと消えてしまった。それ以降、私は、青女さまの事が忘れられず、あの方と同じような麗しい尻を求めて彷徨うほどに……」

 ん?

 尻の話はともかくとして。

 たしか、中将は中将で、男が来なかったと言ってなかったか?

「源大臣。……私が知って居る話ですと、中将は、殿御と待ち合わせをしていたのに、現れなかったとか」

「いや、約束をすっぽかされたのは、私のほうですぞ、山科の姫。……私の文使いは、確かに、六条廃院に青女さまがいると言っていたのに、おいでにならなかったのですから。
 ……それにしても、こちらの女房殿は、青女さまに瓜二つ……」

 源大臣の眦が、すこし潤んでいる。

 中将は、戸惑っている様子だったけれど、扇で口許を隠してから、ふふ、と笑った。

「中将が、生前お世話になりましたのね?」

「では、あなたは、あの方の……知り合いで? それにしては、瓜二つですが」

 源大臣は戸惑う。

「わたくしの知って居る話を申し上げましょう。……中将は、あなたを待つと言って、寒空の月明かりの下、ずっと待っていたのです。場所は、いつもの………三条の邸。
 けれど、あなたがかつて中将に贈った歌のように、中将の元に来たのは、霜ばかりで……中将は、自分ばかりがあなたに染まっていくのに、あなたは、約束も守らず、いずれ奥方様をお迎えになって立派に家を継いでいくのだろうと思って……思い詰めた上で、儚くなりました」

「もしや、私と、中将は……場所を間違えていた……?」

「そうなのでしょうね。きっと、中将も、あなたさまも、勘違いしていたのでしょうし、行き違いがあったのでしょう。けれど、中将は、あなたを、何よりもあいしていましたよ? ……けれど、もう、理想のお尻を追い求めて女性に挑むのはお止め下さいませ。
 きっと、それをしったら、中将も、悲しみます……さあ、源大臣さま。参りましょう。いまは、京を揺るがす一大事でございます」

 好き合ってるのに、すれ違うなんて……なんて、酷いんだろう。

 中将をちらりと見遣ると、口唇を噛んで必死に涙を堪えている様子だったから、私は、思わず、「ちょっと待って下さいっ!」と声を上げていた。

「なんだい、姫。………せっかく、夢見るジジイの昔話が終わったところなのに」

 鬼の君、興味ないことに対しては、容赦ないな……。

「私、身支度を調えたいのですけれど。陽、お部屋をお借りできないかしら?」

 そうそう。馬に乗ってきたから、割と、とんでもない格好だしね!

 と思っていたら、鬼の君は盛大に勘違いして、小さく私に耳打ちした。

「これは、きづかなくて済まないね……おまるなら用意させるから、お部屋を借りてきなさい」

 トイレだと思われたっ!

 うう、まあ、良いわ。仕方がない。








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