鬼憑きの姫なのに総モテなんて!

鳩子

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第七章 鬼憑きの姫なのに、鬼退治なんてっ!

17.鉉珱の悪あがき

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「なんで、アンタここまで来たのよっ!」

 夜叉王に導かれてきたのは、鷹峯院のお側だった。鷹峯院のきんきん声が響く。

 鷹峯院は、陽に押さえつけられながら、なにやら、がなり立てている様子だった。その足許に夜叉王が絡みついて……とまた、何が何だか、訳がわからない状況に。

 夜叉王は、陽を『狼藉者』認定しているのか、がぶっと足首にかみついたので、溜まらずに陽が「痛いよーっ!」と叫び声を上げる。

 鷹峯院は、まあ、なんというか……髪を振り乱して、装束も乱れ放題。

「鷹峯院! おやめ下さい! 今は、そういう場合じゃないです! 非常事態!」

 嵯峨野の太閤殿下も、必死で宥めているけど効果無し。

「非常だったら、とっとと、あの鉉珱げんようを退治してきなさいよっ! この、ぼんくら太閤っ!」

「ぼんくらとは聞き捨てなりませぬなぁ」

 す、と太閤殿下が双眸を引き締める。

 いや、だから、そういう場合じゃないんだってば!

 私は、なんとなく、うるむさんを見た。



『すみません。あきらめてください。どうしようもないです。私のせいで済みません』



 潤さんの目が、そう語っていたのも、無視!

 断じて、潤さんのせいではない。このお二方が、事態を理解せずに、ケンカをはじめたのが悪い。

「もう! まだ、事件は解決してないんですよ! 鬼の君と、関白殿下と、二条の姫さまと、実敦親王に、何かあったら、今度は私が許しませんからねっ!」

 私は、二人の間に割って入り、太閤殿下の手から、御剣を奪った。

 すくなくとも、上皇が託した剣ならば、何らかのいわれはあるのだろうし、破邪の効果くらいはついてるだろう!

 私は、当てにならない男性陣を完全に無視して、鉉珱げんようの元と向かった。



 幻の炎が燃えている。

 それは、夢の中のような光景で、幻想的だった。

 触れても、熱くはない。

 ずんずん進んでいくと、池の畔に、鉉珱げんようの姿があった。

鉉珱げんようっ!」

 私が呼びかけると、鉉珱げんようは驚いたような顔をして、ぎこちなく私を振り返る。

「あなたには、流石に効かないか……」

 くすくす、と鉉珱げんようは笑う。

「効かない?」

「それ、その『炎』だよ」

 謡うように言って、鉉珱げんようは、指さしてから、舞うように大きく手を動かした。

 水平に、それから天頂へ持っていき、身体の目の前へ。す、と優美な動きで腕を動かしている。

「この炎は、……効く人には効くんだよ。『本物だ』と思えば、たちまち熱を持って、肌を焼く。すぐさま、燃え尽きるものなのだよ。折角、あの者達を滅ぼす為に、地獄から借りてきたのに、ネェ」

 鳥肌が立った。

 私は、(切り方はよく解らないけど)鞘を払って剣を、切っ先を、鉉珱げんようへと向けた。

「古い霊剣ならば、足しから、私を滅することも出来るだろうがね……そうはさせるものかっ!」

 鉉珱げんようが唐突に動いた。

 私向かって突進してくる、

 怖い……けど仕方がない。とにかく、私は、遮二無二、剣を振るう。




 その、切っ先から、肉を断つ……嫌な感触が、伝わってきた。

 鉉珱げんようの身体を見る。

『私が』切ったところが、ぱっかりと口を開けていた。

 熟した石榴が、自ずと割れたみたいに、ぱっかりと開いたそこは、肉と……臓物らしきモノが薄らと見え、そして、夥しい、血を、迸らせていた。

「あっ……っ」

 私自身が、望んでやったこととはいえ、相手が、多分『霊』だったとはいえ。

 震えが止まらなくなった。

 私、は。

  人、を。


   ―――――切ったのだ。


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