立日の異世界冒険記

ナイトタイガー

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0043.回転斬りの爆発

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 真紅の陽炎はその場でできるだけ下がってから陽炎のリーダーに合図した。
「準備はいいか。行くぞ。」
「いつでもいいぞ。」
 その返事を聞くや否や真紅の陽炎は、ベイル達に向かって全速力で走り始めた。それに合わせて陽炎のリーダーは呪文を唱え始める。途中で一回、二回と軽く跳んだ後に、地面を思い切り蹴って高速回転しながら大跳躍する。高速回転する刃が真紅に変わった瞬間、陽炎のリーダーの呪文が効果を発揮し、真紅の刃に黒い濁りが入り混じり始める。そして、まるで回転するドリル同士を衝突させたかのような激烈音が辺りに轟く。
「死ねえええええええええええええええ。」
 真紅の陽炎は高速回転しながら、取り囲んでいるベイル達に突っ込んで行き、その体ごと大爆発した。爆発の中心部からは真紅の光の帯と黒の濁った影の帯が直線状に四方八方に放射され、少し離れたベイル達を貫いた。ベイル達が狂乱状態になっている隙を逃さず、陽炎のリーダーはその場から脱出した。
 健は詰所の部屋で引きこもりになっていた。多数の怪物達が襲って来ている現状も理解不能だが、真紅の陽炎にも付け狙われているので気を付けろと言われている。少しは話ができる陽炎のリーダーも、どこに行ってしまったのかあれから姿を見せない。こんな状況で部屋の外に出て行く気は起こらない。外からは怪物の雄叫びや叫び声に加えて、激しい衝撃音や破壊の振動が頻繁に伝わってくるが、幸いにして健の部屋は今のところは無事だった。健は暖かいベッドに潜り込んで現実逃避を決め込んだのだ。
 外からの騒音も慣れてしまえば、どうってことはない。楽観的なニート思考を最大限活用し、健は眠りに落ちていた。不思議と夢は悪夢ではなかった。健が眠ってからどれくらい経ったのだろう。健の部屋の扉を叩き開けて陽炎のリーダーが飛び込んで来た。
「おい、どこだ。どこにいる。ベッドか。すぐに起きろ。」
 寝ぼけている健は目の前に現れたユラユラする陽炎のリーダーの異形な姿を見て驚いた。しかし、すぐに自分が今は現実世界にいないのだということを思い出した。
「お前の力がいる。ベイル達を止めてくれ。」
「ん、何の話だ。どう言う意味だ。」
「俺もよく分からん。長老の言葉だ。お前ならベイル達を止められると。」
「待て待て待て。さっぱり話が分からない。ベイル達って大草原にいた奴らか。そいつらを止めるってどういう意味だ。お前らはそいつらを捕まえてたじゃないか。」
「ベイル達が怪物になったんだ。仲間が次々にやられた。」
「何だと。じゃあさっき見たあの怪物どもは大草原の奴らなのか。一体何が起こっているんだ。」
「とにかく、外に行こう。」
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