立日の異世界冒険記

0088.部屋と人形

　健は、深呼吸してからその場に座り込んだ。まずは、ゆっくり考えてみることにしたのだ。これは戦いではなく、頭脳戦だ。銀髪の女達は、健が唸りながら考えこんでいるのを見ている。健は、色々考えているうちに、視線の先に先程投げ捨てた黒焦げの人形が目に入った。その瞬間、健の頭の中に稲妻が走った。
「そうか。そうかもしれないぞ。」
　健は、立ち上がると、先程入ってきた正面の扉に向かった。銀髪の女達も健に続く。
「何か分かったの。」
「いや、まだだ。少し試してみたいことがある。」
　そう言うと、健は閉まっている銀の扉を開けた。扉の先には今いる部屋とまったく同じ部屋が見える。今までと同じ現象だ。健は、部屋の中を指差して皆に言った。
「部屋の中をよく見ろ。何か分かるか。」
　火の精は、何を言われているのかサッパリ分からず、目をパチクリさせている。
「何も分からないよ。さっきと同じようにずっと同じ部屋だよ。」
「そうね。」
　健は、そんな二人に言った。
「ほら、こっちの部屋には黒焦げの人形がないだろ。」
　火の精はポカンとしている。そして今いる部屋の中にある黒焦げの人形を指差した。
「そんなの当たり前じゃん。人形はあそこにあるんだから。」
「そうだな。じゃあ、みんな。この部屋に入ろう。」
　健は、皆が部屋の中に入ってから銀の扉を閉じた。
「さて、ここからが本番だ。今から、この扉をもう一度開けるぞ。どうなってると思う。」
「そりゃあ、今来た部屋じゃん。」
「果たして、そうかな。」
　健はゆっくり銀の扉を開ける。
「ほら、同じ部屋じゃん。」
「そうかな。よく見てみろ。さっきと同じか。」
「人形がなくなってるわ。」
「あっ、本当だ。」
「どうやら、俺の予想は当たったようだ。扉を閉めてからもう一度開けると、前とは違う部屋になっている。つまり、扉を開ける度に新しい部屋になるということだ。」
「ほえー。」
「勿論、部屋が新しくなるのではなく、毎回、違う部屋に繋がるという可能性もある。だが、俺は、部屋が新しくなる可能性の方が高いと思う。まあ、いずれにしても、この後にやることでどっちなのか分かるはずだ。」
「何をやるの。」
　健がどんどん頭の中で話を進めるので、さすがに銀髪の女もついていけなくなったようだ。
「今ので、扉を開けるタイミングで新しい部屋ができていただろ。だから、今から、すべての扉をどんどん開けっぱなしにしていく。」
「どういうこと。」
「つまり、扉を開けたまま、どんどん新しい部屋を作られせていったら、いずれその能力に限界がくるかもしれないということさ。」
「そしたら、どうなんの。」
「それは俺も分からない。だが、今の状況を打開できる可能性はあるはずだ。」