立日の異世界冒険記

0089.部屋からの脱出

　健達は手分けをして部屋の10の扉を全部開け放していく。扉を開けると、同じ部屋が広がっている。全部の扉を開け終わると、正面の扉から次の部屋に入って次の部屋でも10の扉を全部開けていく。この作業を100回以上は繰り返しただろうか。何も変化がない。本当にこの作戦はうまくいくんだろうか。健は少しだけ疑念が出てきた。そんな時、どこかの扉を開けた火の精が声をあげた。
「あれ、何かこの部屋変だぞ。」
「どうした。」
「今までの部屋と違うよ。」
　皆で見にいってみると、扉を開けた先の部屋には扉が全部で5つしかない。つまり、火の精が開けた扉を除けば、4つの扉しか見えない。
「お、これはチャンスかもしれない。みんな、この部屋の中に入って扉を全部開け放してくれ。」
「分かったわ。」
　その部屋の残り4つの扉を開けてみると、開けた先の部屋の中の扉の数も5つである。
「よし、このままどんどんやっていこう。部屋にかけられている魔法か何かの限界が近付いている感じだ。」
　健達が作業を続けてから、また50部屋ほどの扉を開けただろうか。今度は銀髪の女が声を出す。
「また扉の数が変わったわ。」
　健が見に行って見ると、部屋の扉が全部で3つになっている。
「いい感じだ。多分、あと少しだ。頑張ろう。」
　それからまた50部屋ほどの扉を開けただろうか。ついにゴールが現れた。最後は健の開けた扉だった。
「みんな、来いよ。ついに進む先の扉が1つになったぞ。」
「やったー。」
「これで脱出できるかしら。」
「分からん。とりあえず、今までと同じように扉を開け放したままで進んでみよう。」
　健達が次の部屋に進むと次の部屋の扉の数は全部で4つだった。だが、健は成功を確信した。
「見ろ。今までと部屋の雰囲気が全然違うぞ。今までは扉の数が変わっても、部屋の中の壁や床、天井の色も模様も同じだっただろ。今度の部屋は壁の色が赤いし、天井の模様も違うぞ。」
「本当ね。私はこの部屋に見覚えがあるわ。多分、こっちに行くといいと思うわ。」
　銀髪の女が指差したのは銀の扉だった。
「おお、本当か。それなら脱出できたということだな。あと、ティアラ。念の為にネックレスの宝石も確認してみてくれ。」
　銀髪の女がネックレスの宝石を火の精の炎にかざすと、宝石からの光が銀の扉の方を示した。
「さっきまでと違って光が行先を示したわ。やはり、この扉で間違いないみたいよ。」
「これで間違いないな。宝石の光から考えても、俺達は脱出に成功したんだ。それじゃ、先に進もう。」
「行こう、行こう。」