立日の異世界冒険記

0169.地下最下層

　それからもう一休憩した後、健は龍を起こすことにした。本当は、ゆっくりと時間をとって龍を回復させてあげたいが、どうやら骨龍は倒されていないようであり、いつ戻って来るかわからない。このまま、ここにいるよりは先に進むことに決めたのだ。
「チビ助、キツいかもしれないが、ここにいると骨龍が戻って来るかもしれない。先に行こう。」
「分かったよ。行こう。」
　強靭な肉体を持つ龍は、どうやら自分で歩ける位までは体力が回復したようである。
「よし、ロング。また俺達を先導してくれ。」
　健達は、そのまま他の敵に遭遇することなく、さらに下の階への階段に辿り着くことができた。そして、健達が階段を降りて、アンデッドゾーン第六階層に着くととても予想外な景色が広がっていた。
　何と迷宮の中とは思えぬ広さの空間が広がり、奥には神殿がそびえている。床から天井までも非常に高く、地下とは思えぬほど明るい。神殿の前には綺麗な庭が広がり、無表情だか清潔な服を着た男達が作業をしている。
「これは一体どういうことだ。」
　健が呆気にとられていると、神殿の方から綺麗な服装の男女が健達のところに近付いて来た。二人とも腰に剣を下げているが、両手を上げて敵意がないことを示している。ただ、庭で作業をしている男達と同様に表情はない。
「皆様、ようこそいらっしゃいました。我が主がお待ちしております。私共がご案内致しますので付いて来て下さい。」
　健は混乱した。これまで死闘を繰り広げてきた地下の最終地点がこんなに平和に満ち溢れた世界だとは予想外だ。健は、紐の意見を聞いてみた。
「ロング、これは付いて行っても大丈夫なのか。」
　紐が大きな輪っかを作り、オーケーサインを出して来たので、健達一行は迎えに来た男女に付いて行くことにした。
　神殿に向かう途中の道はどこも綺麗に整備されており、身なりの良い無表情の男達が黙々と作業をしている。だが、健は、神殿の入口を警備している重装備のスケルトン達を見た時にここは間違いなくアンデッド達の最終拠点であると思い知らされた。警備しているアンデッド達の装備は武器や防具としての性能も良さそうだが、綺麗なデザインであり、見た目もとてもよい。
　健は警備をしているスケルトン達が襲って来ないか警戒していたが、スケルトン達は、迎えの男女に先導される健達にはまったく注意を払わない。おかげで、健達はすんなりと神殿に入ることができた。
　神殿の中は、とても豪華で綺麗な空間が広がっていた。健達を先導している男女と同様に外で作業をしている男達よりも綺麗な服装の男女が忙しそうに動き回っている。だが、全員が無表情なのは変わらない。