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しおりを挟む「添い寝してくれ。誰かに傍にいて欲しい」
「……誰か?」
「親友に」
康哉は一つしか無い俺のベッドに遠慮がちに入ってきた。
「……異世界から連れて帰ってきて、ごめんな」
眠気と戦いながらそれだけ言うと、康哉は俺の手を取って、じっと見つめた。
「……康哉?」
突然ぐいと引き寄せられて、康哉の唇が俺の頬を掠める。頬と、それから額にキスされたんだと気づいた。そのまま抱き寄せられて、康哉の身体にしがみつく形になる。
ドクドクいう康哉と自分の心音を聞いていると
「王子様じゃなくて残念だな」
という康哉の声がした。
***
夢を見ていた。
巨大な植物の生えた森を逃げ回っている夢。
姿の見えない土蛇から逃げ回っていると、ぬかるみに足をとられて沼に落ちてしまう。花カブトの沼だと気づいて這い上がろうともがくと、岸辺に誰かが立っているのが見えた。頭に角を生やした半獣、ラウルだ。
「シュウヘイだいじょぶ?」
……ラウル。
ラウルに手を引っ張られて沼から這い上がる。お礼を言おうとしたら、顔をペロペロ舐められた。
「シュウヘイいつ帰ってくる? ラウル待ってる。はやくなかよししたい」
『ごめん、もう帰れないんだ。ラウルとの約束は守れない……』
ラウル、半獣の村でずっと待ってるんだろうか。俺の帰りを信じて。俺は半獣でもラウルの仲間でもないのに。
もっときちんと説明すれば良かった。ラウルに酷い事をしてしまった。
「そうですよ。ミサキ様は酷い人です」
別の声がして、驚いて振り向くと、石工の街にいるはずのリックがいた。
「僕の気持ちを知っていたのに、行ってしまった。僕はあなたをどうやって忘れたらいいんですか?」
リックが悲しそうな顔で言う。
『……ごめん』
人嫌いのリックを無理やり襲ってしまったのに、時間がないからって自分はすぐに街を出たんだ。すごく無責任だった。
「同感だな。お前は無計画で、淫乱なだけが取り柄の馬鹿だ」
また別の声がしてそっちを見ると、盗賊のアニキがこっちに歩いてくる所だった。
「ミサキ、五年経っても俺が生きていると思うか?」
アニキが俺の頬をなで上げながら言う。
「復讐も出来ずに契約期限がきて無駄死にするのがオチだな。お前が……」
アニキが俺のイヤリングを噛んで、耳たぶがキリリと痛んだ。
「俺の復讐を邪魔したからだ。そうしておいて自分は、故郷に帰るんだな」
痛みで言葉が出てこなかった。胸の痛みだ。アニキの言うとおりだ。
「シュウヘイ……」
身体が震えた。
いつの間にかルーシェンがいて、厳しい顔でこっちを見ていた。
「そばにいて欲しかった。互いを必要だと思っていたのは、俺だけだったのか?」
『……ごめん。みんな、本当にごめんなさい』
自分が無責任で酷い人間だと感じて、涙が止まらなくなった。
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