4 / 20
4
しおりを挟む
***
「……修平」
『ごめん……ごめんなさい』
「修平、大丈夫か?」
寝ている間に泣いていたらしい。
康哉に揺さぶられて目を開けると、心配そうな康哉と目があった。
「うなされていた。向こうの世界の夢、見てたのか?」
腕で涙を拭った。
情けない。皆の事を思い出して泣くなんて。考えないようにしていたけど全部責められて当然の事だ。
「泣くな」
康哉が俺の頭を撫でる。
「つらかったんだろう? もう思い出さなくていい。修平は悪くない」
「……違うんだ。俺が悪い」
康哉はきっと俺が奴隷にされた事を気にしているんだと思う。でも、俺が辛かったのは奴隷にされた事じゃない。皆にちゃんとお別れが言えなかった事だ。短時間だったけど、友達かそれ以上の存在になっていた。
康哉と帰る事を選んだのは俺なのに、なんてわがままで自分勝手な奴なんだろう。自分にガッカリだ。
康哉に心配をかけるし、全部自分のせいなんだから泣く資格なんてない。そう思うけど、やっぱり涙は止まらなくて、康哉の胸にすがりついて泣いた。
***
まぶしくて目が覚めた。
もう朝なんだろうか。熱が下がったのか昨日よりかなり身体が楽になっていた。頭が痛いのは泣いたせいだ。
ベッドの中で腕を伸ばしても、康哉の身体が見つからない。それで仕方なく身体を起こすと、すぐ近くの狭いキッチンで、康哉が誰かと電話しながら何か作っているのが見えた。
「そうなんだ。お前から言っておいてくれよ」
康哉が誰かに頼み事って珍しい。
「こ……や」
声がめちゃくちゃ掠れてる。それでも康哉は俺の声にすぐに気づいて電話を切った。
「悪い。充電させてもらった」
そう言いながらベッドに戻ってきて、俺の額に手を添える。
「熱下がったな。念のため、ほら」
そう言って体温計を取り出す。
「電話……誰と?」
そんなはずないのに、半獣の面倒を見ていた康哉を思い出して、一瞬半獣の部下としゃべってるのかと思った。そういえば康哉は面倒見がいいから、慕ってる後輩とかたくさんいたよな。
「佐々木。お前バイト一緒だったろ。俺にも連絡が来てた。修平がバイトを休んでるけど何か知らないかって」
ああそっか。
俺バイト休んでた。一応今週は二日しか入れてなかったけど、二日とも確実に無断欠勤だ。
「肝試しに行った後、熱出して倒れて寝込んでると言っておいた。あいつ、お前の霊感体質知ってるからな。妙に納得してたよ」
「……ありがとう」
康哉が俺の着ていたシャツのボタンを外して、脇に体温計を差し込む。
「康哉、母さんみてぇ」
「考えてる事は違うけどな」
「……何考えてんだ?」
「聞くなよ。言ったら引くから」
何だろう。ちょっと怖いんだが。
体温は三十七度だった。もともと平熱が高いから、これくらいなら全然問題なく動ける。
「まだ少し熱があるな」
「……大丈夫」
「駄目だ。今日は一日寝てろ」
「大丈夫だって」
「お前の口癖、気づいてるか? 大丈夫ってすぐに言うやつ。でもお前は何も考えてないし分かってない」
康哉が真顔でビシビシと痛いところを突いてきた。
「だから俺がいいというまで寝てろ」
「……いやだ」
「子供か」
「ずっと寝てるなんて退屈だ」
康哉がため息を吐いた。
「とりあえず昼までは寝てろ」
「……修平」
『ごめん……ごめんなさい』
「修平、大丈夫か?」
寝ている間に泣いていたらしい。
康哉に揺さぶられて目を開けると、心配そうな康哉と目があった。
「うなされていた。向こうの世界の夢、見てたのか?」
腕で涙を拭った。
情けない。皆の事を思い出して泣くなんて。考えないようにしていたけど全部責められて当然の事だ。
「泣くな」
康哉が俺の頭を撫でる。
「つらかったんだろう? もう思い出さなくていい。修平は悪くない」
「……違うんだ。俺が悪い」
康哉はきっと俺が奴隷にされた事を気にしているんだと思う。でも、俺が辛かったのは奴隷にされた事じゃない。皆にちゃんとお別れが言えなかった事だ。短時間だったけど、友達かそれ以上の存在になっていた。
康哉と帰る事を選んだのは俺なのに、なんてわがままで自分勝手な奴なんだろう。自分にガッカリだ。
康哉に心配をかけるし、全部自分のせいなんだから泣く資格なんてない。そう思うけど、やっぱり涙は止まらなくて、康哉の胸にすがりついて泣いた。
***
まぶしくて目が覚めた。
もう朝なんだろうか。熱が下がったのか昨日よりかなり身体が楽になっていた。頭が痛いのは泣いたせいだ。
ベッドの中で腕を伸ばしても、康哉の身体が見つからない。それで仕方なく身体を起こすと、すぐ近くの狭いキッチンで、康哉が誰かと電話しながら何か作っているのが見えた。
「そうなんだ。お前から言っておいてくれよ」
康哉が誰かに頼み事って珍しい。
「こ……や」
声がめちゃくちゃ掠れてる。それでも康哉は俺の声にすぐに気づいて電話を切った。
「悪い。充電させてもらった」
そう言いながらベッドに戻ってきて、俺の額に手を添える。
「熱下がったな。念のため、ほら」
そう言って体温計を取り出す。
「電話……誰と?」
そんなはずないのに、半獣の面倒を見ていた康哉を思い出して、一瞬半獣の部下としゃべってるのかと思った。そういえば康哉は面倒見がいいから、慕ってる後輩とかたくさんいたよな。
「佐々木。お前バイト一緒だったろ。俺にも連絡が来てた。修平がバイトを休んでるけど何か知らないかって」
ああそっか。
俺バイト休んでた。一応今週は二日しか入れてなかったけど、二日とも確実に無断欠勤だ。
「肝試しに行った後、熱出して倒れて寝込んでると言っておいた。あいつ、お前の霊感体質知ってるからな。妙に納得してたよ」
「……ありがとう」
康哉が俺の着ていたシャツのボタンを外して、脇に体温計を差し込む。
「康哉、母さんみてぇ」
「考えてる事は違うけどな」
「……何考えてんだ?」
「聞くなよ。言ったら引くから」
何だろう。ちょっと怖いんだが。
体温は三十七度だった。もともと平熱が高いから、これくらいなら全然問題なく動ける。
「まだ少し熱があるな」
「……大丈夫」
「駄目だ。今日は一日寝てろ」
「大丈夫だって」
「お前の口癖、気づいてるか? 大丈夫ってすぐに言うやつ。でもお前は何も考えてないし分かってない」
康哉が真顔でビシビシと痛いところを突いてきた。
「だから俺がいいというまで寝てろ」
「……いやだ」
「子供か」
「ずっと寝てるなんて退屈だ」
康哉がため息を吐いた。
「とりあえず昼までは寝てろ」
13
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
とあるΩ達の試練
如月圭
BL
吉住クレハは私立成城学園に通う中学三年生の男のオメガだった。同じ学園に通う男のオメガの月城真とは、転校して初めてできた同じオメガの友達だった。そんな真には、番のアルファが居て、クレハはうらやましいと思う。しかし、ベータの女子にとある事で目をつけられてしまい……。
この話はフィクションです。更新は、不定期です。
路地裏の王子様と秘密のカフェ ―10年ぶりに再会した親友はトップアイドルでした―
たら昆布
BL
大学生の千秋がバイト帰りの路地裏で助けたのは、今をときめくアイドル『GALAXY』のセンター、レオだった。
以来、レオは変装して千秋の働くカフェへ毎日通い詰めるようになる。
「千秋に会うと疲れなんて全部消えちゃうんだ」
トップアイドルとは思えないほど素直に懐いてくるレオに、千秋は戸惑いながらも多忙な彼を支えたいと願うようになる。
しかし、千秋はまだ知らない。
レオが10年前に「また絶対会おう」と約束して別れた泣き虫な親友の玲央本人だということに。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる