ずっと親友だと思っていたのに(康哉編)

カム

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 アパートに帰ると、さっそく料理を始めた康哉を不思議な気持ちで眺める。実際料理している姿を見るのは初めてだ。俺が見てもはっきり分かるくらい手際がいい。野菜の皮を包丁でするする剥いていく。

「スゲー」
「普通だろ」
「いや、すごい! お前料理人とかなれるんじゃないか?」

 興奮して言うと康哉が吹き出した。

「何だよ。本気でほめてんのに」
「お前、小学生の頃と言うことが同じだな」
「そうか?」

 何か手伝おうとしたけど、出来ることがないので、唯一出来るお米をといで炊飯器にセットするという作業をこなした。その後は夕食ができるまでゲームをして遊ぶ。康哉は姉ちゃんと違って手伝わなくても怒らないし、優しい親友だ。

 康哉はあっと言う間に美味しそうな料理を何品も完成させた。

「うわぁ! 美味そう」
「一応、お前の好きそうな物を作ってみた」

 確かに……。肉や魚のメイン料理に加えて、俺の好きなだし巻き卵とか、名前は知らないけど好きな煮物とか揃ってる。

「さすが康哉様! 結婚してくれ!」

 ノリでそう言うと、康哉は真顔で俺を見た。

「あ、いや……あの。今のはノリで」

 うわ、なんか気まずくなった。仲直りはしたけど、今のこの関係をなんと呼んでいいのか俺には全然分からない。幼なじみでセフレ? いや、親友以上恋人未満とか? それとも一晩限りの関係なんだろうか。

「康哉?」
「食べようか」
「ああ、うん」

 料理は本当に美味しくて、昼間にハンバーガーしか食べてなかったからいくらでもお腹に入った。そして本当に高校生の頃食べていた弁当の味がした。

「美味い……」
「だろ」
「いや、本当に。弁当と同じ味がする」

 鼻の奥がつんとした。
 母さんが亡くなって、何もする気が起きなかった時の辛い気持ちを思い出した。何かを食べて泣きそうになるなんて、ヴァネッサさんの家以来だ。でも恥ずかしいから下を向いてごまかす。

「修平……」
「ありがとう、康哉」
「泣くな」

 目をごしごし擦って、美味しい料理を口にした。

***

 食後は康哉がコーヒーをいれてくれた。俺には砂糖とミルク入り、自分はブラックだ。食後の片づけはさすがに手伝ったけど、康哉は料理を作りながら片づけを同時にするタイプらしく、洗い物は食器しか無かった。

 明日は大学だ。康哉も忙しいだろうし、そろそろ帰るんだろうか。

「あのさ、また料理作ってくれよ」
「分かった」

 康哉の了解が取れてほっとした。本当はできるだけ長くいて欲しいけど、そろそろ帰る時間かな。次いつ会う? の一言が言えない。俺こんなにシャイだったかな。

 テレビを見ながら他愛ない会話をして、会話がとぎれないように気をつけて……でもやっぱり、会話が途切れる瞬間はある。こんな不安定な関係ならなおさらだ。

「修平……」
「康哉」

 同時に口を開いて、同時に口ごもる。

「そろそろ帰るか? えっと、明日早いだろ?」

 康哉が何も言わないので俺が言葉を続けた。

「康哉?」
「修平、腰痛くないか?」
「え? 大丈夫だけど」
「そうか。なら、明日の授業は休むよ」
「ええ? 何で?」

 優等生の康哉が? その言葉に康哉は微笑みを返した。

「泊まって帰りたいから」
「だ、大学は?」
「一日くらいどうって事無い。それに、修平より優先するものなんてない」

 言い切った康哉に思わず顔が赤くなる。

「帰れなんて言うなよ」
「いや、俺もまだ一緒がいい」

 そう言うと、康哉に顎を取られてキスされた。そのまま壁際に追いつめられて、いろいろ覚悟を決めようとした時、康哉が
「先にシャワー浴びてくる」
と言って離れた。

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