赤い髪の騎士と黒い魔法使い

カム

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入学試験

2 試験当日

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 試験当日の朝がやってきた。

 準備万全のアルフレッドはたっぷりと睡眠をとり、爽やかな朝を迎えていた。対するシンは、眠そうな目をこすりながらよろよろと部屋から出てきた。

「兄さん、おはよう」
「シン、お前徹夜してたのか?」
「少しは寝たよ……勉強してないと不安で」

 シンの目は充血していて、目の下にはクマが出来ている。確かにここ最近ずっと夜に部屋の灯りがついていた。そんな生活も今日で終わりだと思うと、アルフレッドは少し安堵する。

 家族がそろう食卓の長いテーブルにつくと、すでに食卓についていた父親が兄弟二人を見ていつもの挨拶をはじめた。

「……今日は入学試験だったな。二人とも実力を出し切って頑張るように。特にアルフレッド、お前はバージェス家の名に傷をつけぬよう振る舞いには十分に気をつけるのだぞ」
「はい。父上」
「大丈夫です」
「アルフレッド……お前の自信過剰な性格は一体誰に似たのか」
「若い頃のあなたにそっくりですわよ」

 母親があきれたように言う。
 アルフレッドには実際、ほとんど不安はなかった。召し使い達が運ぶ栄養満点の朝食を胃におさめると、意気揚々と家を出る。

 シンとは試験開場が別だ。別々の馬車に乗り込む前に、アルフレッドはシンをぎゅっと羽交い締めにした。

「兄さん……!?」

(騎士になって、俺が守ってやるからな)

 兄はいつかの誓いを頭の中で繰り返す。

「頑張れるおまじないだ」
「痛いよ……兄さんは力が強いんだから」
「悪いな」

 手を離して笑うと、シンは赤くなってそっぽを向いた。


 騎士候補生の試験は、王族の別荘を貸し切って行われる事になっていた。
 今年の入学希望者は千人以上いるらしい。実際に受かるのはある程度の水準をクリアした上位五百位までの生徒だ。

 上位五百位までに入るのなんて楽勝だとアルフレッドは思っていた。

「それではアルフレッド様、健闘をお祈りしております」

 馬車で俺を送ってくれた使用人頭の爺やに手を上げて、門から試験会場まで歩く。
 まわりは候補生だらけだ。年は同じくらいに見えるが、服装はバラバラだった。シンプルな茶色の町民の服に、布のバッグを一つ下げて歩いている者もいる。おそらく試験の為に地方から出てきたのだろう。

 アルフレッドが歩いていると、彼と同じように馬車で乗りつけてきた、いかにも金持ち風の男が視界に入った。

「あいつ、レオンか?」

 レオンことレオンハルトは名門貴族出身の男だ。レオンの父親とアルフレッドの父親は同じ隊に所属する騎士同士で、子供の頃はよくパーティー会場で一緒になり遊んでいた。
 金髪で顔はいいのに頭はいつも爆発したような髪型で、ちょっと馬鹿な奴だったと彼は記憶していた。ずっと会っていなかったが、レオンの爆発ヘアーは大人になっても健在らしくアルフレッドにはすぐに分かった。

「レオン!」

 レオンもアルフレッドに気付いたらしい。

「よお、アル!久しぶり~!相変わらず髪が真っ赤だな!目がチカチカするぞ!何、お前も試験受けんのか?」
「ああ」
「お前って十五だっけ?」
「一応な」
「老けてるから年上かと思ってた!」
「お前に老けてるとか言われたくない」
「あはは!そうだな」

 アルフレッドも背はそんなに低くはないが、レオンはさらに高くなっていた。おまけに体格もがっちりしている。筋肉の付いた腕や足を見て、強そうだと感じた。

「けっこうトレーニングしたみたいだな」
「俺のオヤジも、お前の家と同じで騎士のメンツがどうのってタイプなんだ。知ってるだろ?」
「ああ」

 アルフレッドもレオンも金持ちの家に生まれ、何不自由なく生活してきたが、その代償はこれから先騎士になる事で支払われるんじゃないかと彼は思う。父親を見ていれば分かるが、騎士というのはハードな生き方だ。忠誠を誓った主の為に命をかけることが当然で、どれほど無茶な任務でも命令とあればこなさなければならない。

 それでもこんなに騎士になりたい奴がいるのか……と試験会場に向かう大多数の候補生を見ながらアルフレッドは思った。
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