赤い髪の騎士と黒い魔法使い

カム

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新しい生活

4 待ち合わせ

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***

 アルフレッドとシンは同じ馬車に乗って寮にむかっていた。明日は入学式だ。入学後に寮に荷物を運ぶ人もいるが、二人は前日から入寮する事にしていた。

 馬車の中ではアルフレッドが、学園の地図を真剣に眺めている。

 学園は広く、騎士コースの人達が通う教室と寮は西側に、魔法コースの人達の教室と寮は東側にあった。
 中央にある建物には、大小複数の講堂とレストラン、カフェやお店や屋上庭園、プールや闘技場も完備されている。それらの施設は騎士と魔法使いが共同で使える事になっていた。

「ほんとに広いね」
「ああ。なあ、シン、お前本が好きだったよな?」
「え?うん……まあ」
「図書館と庭園どっちがいい?」
「え?」
「寮から近いのは庭園だけど、暇潰しになるなら図書館かな」
「何の話?」
「待ち合わせだ。寮も学校も別だから、会うといったら共同の敷地内しかないだろ」
「僕と?」
「他に誰がいる」

 当然といった態度で言い切るアルフレッドを見て、シンは思わず笑ってしまった。

「定期的に顔を見れば安心だろ。心配な事があったら言えよ。俺が何とかするから」      
「大丈夫だよ」
「どっちにする?」
「じゃあ図書館にするよ。兄さん、忙しいかもしれないから、一人でも待っていられるし」
「待たせたりしない」
「でも、試験、トップだったんでしょ?新入生代表で挨拶とかするんじゃないの?」

 シンがそう言うと、アルフレッドは少し困った顔をした。
 騎士クラスも五十番単位でクラス委員長をする事になっていたが、一番の人間はさらに学年を率いるリーダーを兼任する事になる。
 
「俺としてはAクラスに入れれば十分だったんだけどな……王族のパーティーに顔を出せとか、面倒な事ばかり言われる」

 それはシンには初耳だった。兄の忙しさはシンとは比べものにならないらしい。

「挨拶は考えたの?」
「舞台の上で考えるよ」

 そんな事で大丈夫なんだろうかと心配するシンをよそに、アルフレッドは全く何も考えてなさそうだ。

「そんな事より、今日の……そうだな、夕方に図書館で待ち合わせな」
「今日?」
「当たり前だろ。大事な弟が、どんな奴と同じ部屋になったとか気になるだろ。…何笑ってるんだ?」   

 王族とのパーティーより、弟と会う方を優先させてくれる兄を見て、シンはにやけてしまった。
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