赤い髪の騎士と黒い魔法使い

カム

文字の大きさ
72 / 92
服従と抵抗

1 面会

しおりを挟む
 シンが目を開けるまでに三日、ベッドから起き上がれるようになるまで一週間ほどかかった。
 アルフレッドは翌日から毎日シンの面会に来ていたが、担任だとかいう教師にあれこれと理由をつけては断られ、実際に会えたのは一週間後だった。

「良かった……目が覚めないのかとすごく心配した」

 本当に嬉しそうに笑った兄を見て、シンは胸がいっぱいになった。だからなんとか微笑み返したが、何も告げられなかった。本当はずっと意識があった事も、理事長に魔法をかけられていた事も。

「大丈夫だよ。兄さん。平気だから……」

 ベッドから身体を起こせるようになったのに、悲しそうな表情を浮かべるシンを見てアルフレッドは複雑な気持ちになった。

「まだどこか痛むのか?」
「大丈夫。もうどこも痛くないよ」

 否定しているのにとてもそんなふうには見えない。
 それになんだか弟がよそよそしい。これまでの優しくて無邪気な部分が影を潜め、妙に大人びて見えた。

「魔力……吸い取られたのか?」

 心配になってそう聞くと、小さく頷く。

「気にするな。お前は無理に魔法使いにならなくてもいいんだ。五つ星と戦って命があっただけで十分だろ。もしも学校をやめたらずっと家にいればいい」

「兄さんが養ってくれるの?」
「任せろ」

 自信満々にそう言うアルフレッドに、シンはくすりと笑い、兄の手を両手で包んだ。

「多分退学にはならないよ。魔力は減ったけど、ギリギリで進級するんじゃないかな」

「そっか」
「でも、兄さんに養われるのも悪くないな」

「出来るだけ多く稼いで、楽に生活できるようにしないとな」

「一緒に暮らせたら僕はそれでいいよ」

「いや、俺は後継ぎだから。家もあるし使用人もいるし、面倒だけど仕方ない。シン一人くらいなら大丈夫なんだけどな」

「うん……」 

「どうした? 本当に元気ないな。まだ面会しない方がよかったか。無理せずもう少し寝とくか?」

「平気だよ……元気はまだあんまり出ないけど、毎日兄さんに会いたかったから嬉しい」

「俺も会いたかったけど、騎士候補生は魔法使い棟に入るなって、お前の担任が言ってきてさ、あいつ腹立つな」

「校則で決まってるから」

「まあいいや。また会いに来るから、はやく元気になれよ」

 立ち上がったアルフレッドの手を、シンは咄嗟に掴んだ。

「どうした? シン」
「あ、あのね……これ」

 シンがアルフレッドの手に握らせたのは、折り畳まれた紙だった。手紙かと思って開いたが、何も書かれていない。

「これ何だ?」
「僕の魔法書のページ。誰にも渡さずにずっと持っていて。教師にも秘密にして欲しい」
「分かった」

 全く意味が分からなかったが、弟があまりに真剣に頼むので、アルフレッドはその紙を胸ポケットにしまった。






 
 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?

藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。 なんで?どうして? そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。 片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。 勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。 お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。 少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。 (R4.11.3 全体に手を入れました) 【ちょこっとネタバレ】 番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。 BL大賞期間内に番外編も完結予定です。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は未定 ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い ・本格的に嫌われ始めるのは2章から

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...