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服従と抵抗
11 思いがけない告白②
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学園祭までの日々はあっという間に過ぎていった。レオンハルトが言っていたように、お店や出し物の準備をするのは上級生が中心で、一年生は学園の飾り付けを担当するだけだ。だけど、日々飾り付けが進んでいく中庭や校舎を見てシンは少しだけ楽しい気分になっていた。
学園祭の時だけは、外部から沢山の店や行商人、武器屋や魔法屋までやってくるらしい。お金持ちの生徒達は、この時のために親からお金を仕送りしてもらっていた。シンのもとにもバージェス家からお金が届いている。そのお金を持ってハンスやナタリー達とお店を見てまわるのも楽しそうだし、前夜祭の魔法は兄と見る約束をしている。何か兄のために魔法用の道具を買って前夜祭の時に渡そうと決めていた。
学園祭までの準備でCクラスに割り当てられていたのは、学園の敷地内に飾られているろうそくやランタンに魔法の力で灯りを灯すことだ。シンは魔法使い棟と騎士棟に隣接している中庭を受け持っていた。
こんな時じゃないと騎士棟にはいけないからシンは少しワクワクしていた。共通で使える校舎にはAクラスの生徒たちが飾った魔法が美しく輝いている。一緒に行動していたCクラスの生徒はその飾りを見上げながらため息をついた。
「いいよなぁ。Aクラスだとこんな準備一瞬で終わるんだろ。俺たちはこの広い庭を何日もかけてまわってるのに」
確かに以前の僕なら大変だっただろうな、とシンも思う。広範囲にある無数の燭台に一つ一つ魔法の灯りを灯すのは、地味だけど疲れる作業だ。
だけど今の僕なら……。
シンは薄い魔法書を開いて、人差し指で目の前にある燭台にポツポツと火を灯していった。魔法書を開いたのは単に人目を気にしたからで、本当なら目をつぶっていてもできるし、呪文を唱える必要もない。この広い中庭のランタンや燭台全てに一瞬で火をつける事すら可能だ。
「やらないけど」
誰に聞かせるでもなく呟く。目立つのは駄目だ。魔法のコントロールが上達していることも、使える呪文が増えていることも知られてはならない。全くの無力だと思われてはいないだろうけど、それでも見くびられていた方が生きやすい。
ゆっくりと時間をかけて、散歩気分で燭台に火を灯してまわっていると、外の運動広場で身体を動かしている騎士候補生が何人も見えた。
兄さんいないかな……?
シンは横目で身体を動かしている候補生達を眺める。赤い髪の生徒はいなくてがっかりだ。
「おつかれ!」
声をかけられてびくっと振り向くと、爆発頭の兄の友人が立っていた。
「あっ、こんにちは。レオンハルトさん」
レオンハルトは中庭を走っていたらしく、全身汗をかいていた。シンの近くの樹にもたれかかる。
「アルフ弟、お前に頼みがある」
「何ですか?」
「疲れたから回復してくれ。俺今日はもう模擬試合を二回やって走り込みして素振りしてフラフラなんだよ。あと女の子にも振られた」
「そうなんですか?」
シンは思わず笑ってしまった。それでレオンハルトに簡単な回復の魔法をかけてあげる事にした。
「手を出してください」
「あ、いいって。冗談。回復魔法って消耗品なんだろ? お前の少ないページがなくなったら悪いからさ」
「大丈夫です」
簡単な魔法をかけてあげると、レオンハルトは飛び上がって喜んだ。
「すげー、身体軽くなった! お前、Cクラスだけど才能あるぜ」
「ありがとうございます」
お礼を言うと、レオンハルトがまじまじとシンの顔を眺める。
「な、何ですか?」
「いや、最初は変な髪の色って思ってたけど」
「すみません」
「でもお前、よく見るとかわいいな。俺のませた妹よりずっと顔立ちがいい。アルフが死ぬほどお前のこと好きなのわかる気がして来た」
「えっ……」
「そんなかわいい顔で振られたばかりの俺に優しくするなよ。俺はあきれるほど惚れっぽいんだからな」
学園祭の時だけは、外部から沢山の店や行商人、武器屋や魔法屋までやってくるらしい。お金持ちの生徒達は、この時のために親からお金を仕送りしてもらっていた。シンのもとにもバージェス家からお金が届いている。そのお金を持ってハンスやナタリー達とお店を見てまわるのも楽しそうだし、前夜祭の魔法は兄と見る約束をしている。何か兄のために魔法用の道具を買って前夜祭の時に渡そうと決めていた。
学園祭までの準備でCクラスに割り当てられていたのは、学園の敷地内に飾られているろうそくやランタンに魔法の力で灯りを灯すことだ。シンは魔法使い棟と騎士棟に隣接している中庭を受け持っていた。
こんな時じゃないと騎士棟にはいけないからシンは少しワクワクしていた。共通で使える校舎にはAクラスの生徒たちが飾った魔法が美しく輝いている。一緒に行動していたCクラスの生徒はその飾りを見上げながらため息をついた。
「いいよなぁ。Aクラスだとこんな準備一瞬で終わるんだろ。俺たちはこの広い庭を何日もかけてまわってるのに」
確かに以前の僕なら大変だっただろうな、とシンも思う。広範囲にある無数の燭台に一つ一つ魔法の灯りを灯すのは、地味だけど疲れる作業だ。
だけど今の僕なら……。
シンは薄い魔法書を開いて、人差し指で目の前にある燭台にポツポツと火を灯していった。魔法書を開いたのは単に人目を気にしたからで、本当なら目をつぶっていてもできるし、呪文を唱える必要もない。この広い中庭のランタンや燭台全てに一瞬で火をつける事すら可能だ。
「やらないけど」
誰に聞かせるでもなく呟く。目立つのは駄目だ。魔法のコントロールが上達していることも、使える呪文が増えていることも知られてはならない。全くの無力だと思われてはいないだろうけど、それでも見くびられていた方が生きやすい。
ゆっくりと時間をかけて、散歩気分で燭台に火を灯してまわっていると、外の運動広場で身体を動かしている騎士候補生が何人も見えた。
兄さんいないかな……?
シンは横目で身体を動かしている候補生達を眺める。赤い髪の生徒はいなくてがっかりだ。
「おつかれ!」
声をかけられてびくっと振り向くと、爆発頭の兄の友人が立っていた。
「あっ、こんにちは。レオンハルトさん」
レオンハルトは中庭を走っていたらしく、全身汗をかいていた。シンの近くの樹にもたれかかる。
「アルフ弟、お前に頼みがある」
「何ですか?」
「疲れたから回復してくれ。俺今日はもう模擬試合を二回やって走り込みして素振りしてフラフラなんだよ。あと女の子にも振られた」
「そうなんですか?」
シンは思わず笑ってしまった。それでレオンハルトに簡単な回復の魔法をかけてあげる事にした。
「手を出してください」
「あ、いいって。冗談。回復魔法って消耗品なんだろ? お前の少ないページがなくなったら悪いからさ」
「大丈夫です」
簡単な魔法をかけてあげると、レオンハルトは飛び上がって喜んだ。
「すげー、身体軽くなった! お前、Cクラスだけど才能あるぜ」
「ありがとうございます」
お礼を言うと、レオンハルトがまじまじとシンの顔を眺める。
「な、何ですか?」
「いや、最初は変な髪の色って思ってたけど」
「すみません」
「でもお前、よく見るとかわいいな。俺のませた妹よりずっと顔立ちがいい。アルフが死ぬほどお前のこと好きなのわかる気がして来た」
「えっ……」
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