20 / 209
研修生活スタート
7 パーティーの始まり
しおりを挟む
何も手につかないまま、うきうきした気分で翌日の夕方を迎えた。
仕事や研修でそれなりにスケジュールが詰まっていた一日だったけど、正直あまり覚えていない。
異世界担当課のベランダで鳥たちに夕方の餌を早めにあげてしまえば、今日の仕事は終了だ。
夕焼け空もいつもよりすごくきれいに見える。
もうすぐルーシェンに会えるのか。どんな顔して会おう。出来ればこの間の事を謝りたい。自分の気持ちはあまり整理できていないけど、今日は会えるだけで嬉しいから、それで良しとしよう。
餌やりが終わったので、鳥たちの羽や糞のついた作業服を脱ぎ、支給されていた制服に着がえる。
普段の制服はシャツにズボンにマント程度だけど、パーティーではネクタイとジャケットが必須だ。
ジャケットは日本で見るようなスーツのジャケットとは少し形が違っていて、異世界風のデザインだ。ネクタイは杖の形のプリントされた青いもの。
制服を着た自分を鏡で見ていると、外出していた如月が戻ってきた。
「岬さん、準備出来ました?」
「これ、変かな」
「特におかしな所はありませんよ。では行きましょうか」
今回のパーティー会場は王宮の3階で行われるらしく、まだ時間前なのに3階付近では大勢の出席者が集まっていた。
みんな着飾っていてキラキラと眩しい。俺は出席者の中ではかなり地味な服装だった。
3階の扉前の行列に並んで、武器や攻撃魔法を携帯していないかチェックを受け、身分証を提示して如月と一緒に会場入りした。
会場ではテーブルの上に色とりどりの料理が並べられ、先に入っていた招待客達が料理や飲み物を手に雑談をしている。偉い人もたくさんいると思うけど、見た感じはあまり堅苦しいパーティーじゃなさそうだ。
それにしてもこの光景どこかで見たような気がする。
そうだ、魔法村の3階にあったパーティー会場の光景と同じ。
まさかこの風景魔法じゃないよな。おもわずフライパンを探したが、無くて安心した。
「如月、ルーシェン王子は?」
「まだ早い時間なので、いらしてないようですね」
『そうですか……』
会場にはまだルーシェンの姿も王様や王妃様の姿も無かった。
「おや、そこにいるのは修平君じゃないか」
振り向くと、派手な衣装の部長が、フェロモン垂れ流しながら立っていた。藤子さんも一緒だ。芸能事務所の社長かホストクラブの店長に見える。
『岬修平でございます。部長におかれましてはご機嫌麗しく、えーと……』
「修平君、だいぶこちらの言葉を使いこなすようになったな」
『恐れ入ります』
丁寧に異世界式のお辞儀をすると、何故か爆笑された。
「如月は堅物だから一緒にいてもつまらないだろう。私が直々に何でも教えてやるから、頻繁に部長室に顔を出したまえ」
『ははっ』
「岬ちゃんたら素直で可愛いわね」
「悪かったですね、つまらない堅物で」
雑談をしながら部長に勧められた飲み物を受け取る。一口飲んでみると、よく分からないが強烈な味がした。
話してみれば部長はもとは異世界担当課の出身らしく、異世界(つまり日本)が大好きなのだそうだ。
「魔法関連部の部長になってからは、なかなか異世界に行けなくて寂しい限りだよ。料理が美味しかったなぁ」
確かに、俺も日本の料理が恋しい。こっちの料理も慣れれば美味しいけど。
そんな事を考えていると、会場の奥の方が騒がしくなった。人々が集まって歓声を上げる。一段高い位置から顔を出したのは、ラキ王国の国王、ルーシェンの父ちゃんだ。
「皆の者、待たせたな!今日は存分に楽しんでくれ」
よく通る太い声で話す国王は、魔法村で見た姿と同じくヤクザの親分のように見えた。かろうじて頭に小さな冠を乗せているから王様だと分かる。
「今日は遅い方ね」と藤子さんが言う。
意味が分からず聞き返すと、ラキ王国の国王はかなりせっかちで、とにかく時間より早く行動しなければ気が済まないらしい。部下達は全員それを踏まえて動いているのだそうだ。
「ちなみに王妃様はかなりマイペースな方なのよ。おそらく一番遅れていらっしゃると思うわ。王子様はその中間、つまり定刻通りに行動されるのよ」
なんだか自由な国だな、ラキ王国って。
藤子さんの予言通り、パーティーの始まる予定時刻頃ルーシェンがやって来た……らしい。
らしいというのは、周りに取り巻きが殺到して全然姿が見えなかったからだ。
挨拶するファンの列に並ぼうとして、ドレス姿の女性達に押し退けられた。
「見習いは引っ込んでなさい」
という捨て台詞付きだ。
あの取り巻きの中で、この間の夜はごめんなさいとか言うのもまずい気がして、仕方なく壁際に戻る。
「もう少し時間がたてば話すチャンスも訪れますよ」
如月に慰めてもらい、しばらく壁際で飲み食いしながら様子を見る事にした。
仕事や研修でそれなりにスケジュールが詰まっていた一日だったけど、正直あまり覚えていない。
異世界担当課のベランダで鳥たちに夕方の餌を早めにあげてしまえば、今日の仕事は終了だ。
夕焼け空もいつもよりすごくきれいに見える。
もうすぐルーシェンに会えるのか。どんな顔して会おう。出来ればこの間の事を謝りたい。自分の気持ちはあまり整理できていないけど、今日は会えるだけで嬉しいから、それで良しとしよう。
餌やりが終わったので、鳥たちの羽や糞のついた作業服を脱ぎ、支給されていた制服に着がえる。
普段の制服はシャツにズボンにマント程度だけど、パーティーではネクタイとジャケットが必須だ。
ジャケットは日本で見るようなスーツのジャケットとは少し形が違っていて、異世界風のデザインだ。ネクタイは杖の形のプリントされた青いもの。
制服を着た自分を鏡で見ていると、外出していた如月が戻ってきた。
「岬さん、準備出来ました?」
「これ、変かな」
「特におかしな所はありませんよ。では行きましょうか」
今回のパーティー会場は王宮の3階で行われるらしく、まだ時間前なのに3階付近では大勢の出席者が集まっていた。
みんな着飾っていてキラキラと眩しい。俺は出席者の中ではかなり地味な服装だった。
3階の扉前の行列に並んで、武器や攻撃魔法を携帯していないかチェックを受け、身分証を提示して如月と一緒に会場入りした。
会場ではテーブルの上に色とりどりの料理が並べられ、先に入っていた招待客達が料理や飲み物を手に雑談をしている。偉い人もたくさんいると思うけど、見た感じはあまり堅苦しいパーティーじゃなさそうだ。
それにしてもこの光景どこかで見たような気がする。
そうだ、魔法村の3階にあったパーティー会場の光景と同じ。
まさかこの風景魔法じゃないよな。おもわずフライパンを探したが、無くて安心した。
「如月、ルーシェン王子は?」
「まだ早い時間なので、いらしてないようですね」
『そうですか……』
会場にはまだルーシェンの姿も王様や王妃様の姿も無かった。
「おや、そこにいるのは修平君じゃないか」
振り向くと、派手な衣装の部長が、フェロモン垂れ流しながら立っていた。藤子さんも一緒だ。芸能事務所の社長かホストクラブの店長に見える。
『岬修平でございます。部長におかれましてはご機嫌麗しく、えーと……』
「修平君、だいぶこちらの言葉を使いこなすようになったな」
『恐れ入ります』
丁寧に異世界式のお辞儀をすると、何故か爆笑された。
「如月は堅物だから一緒にいてもつまらないだろう。私が直々に何でも教えてやるから、頻繁に部長室に顔を出したまえ」
『ははっ』
「岬ちゃんたら素直で可愛いわね」
「悪かったですね、つまらない堅物で」
雑談をしながら部長に勧められた飲み物を受け取る。一口飲んでみると、よく分からないが強烈な味がした。
話してみれば部長はもとは異世界担当課の出身らしく、異世界(つまり日本)が大好きなのだそうだ。
「魔法関連部の部長になってからは、なかなか異世界に行けなくて寂しい限りだよ。料理が美味しかったなぁ」
確かに、俺も日本の料理が恋しい。こっちの料理も慣れれば美味しいけど。
そんな事を考えていると、会場の奥の方が騒がしくなった。人々が集まって歓声を上げる。一段高い位置から顔を出したのは、ラキ王国の国王、ルーシェンの父ちゃんだ。
「皆の者、待たせたな!今日は存分に楽しんでくれ」
よく通る太い声で話す国王は、魔法村で見た姿と同じくヤクザの親分のように見えた。かろうじて頭に小さな冠を乗せているから王様だと分かる。
「今日は遅い方ね」と藤子さんが言う。
意味が分からず聞き返すと、ラキ王国の国王はかなりせっかちで、とにかく時間より早く行動しなければ気が済まないらしい。部下達は全員それを踏まえて動いているのだそうだ。
「ちなみに王妃様はかなりマイペースな方なのよ。おそらく一番遅れていらっしゃると思うわ。王子様はその中間、つまり定刻通りに行動されるのよ」
なんだか自由な国だな、ラキ王国って。
藤子さんの予言通り、パーティーの始まる予定時刻頃ルーシェンがやって来た……らしい。
らしいというのは、周りに取り巻きが殺到して全然姿が見えなかったからだ。
挨拶するファンの列に並ぼうとして、ドレス姿の女性達に押し退けられた。
「見習いは引っ込んでなさい」
という捨て台詞付きだ。
あの取り巻きの中で、この間の夜はごめんなさいとか言うのもまずい気がして、仕方なく壁際に戻る。
「もう少し時間がたてば話すチャンスも訪れますよ」
如月に慰めてもらい、しばらく壁際で飲み食いしながら様子を見る事にした。
12
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
【16+4話完結】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜
キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」
平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。
そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。
彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。
「お前だけが、俺の世界に色をくれた」
蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。
甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
最弱オレが、最強魔法騎士様のパートナーになった件
竜也りく
BL
「最悪だ……」
その日イールはめちゃくちゃ落ち込んでいた。
イールが通う魔術学校の卒業試験は制限時間72時間の中でどれだけ強い魔物を討伐できるかで審査される上、二人ひと組のチーム選だからだ。
入学してからこのかた常にダントツ最下位を取り続けてきたイールと組むなんて誰だってイヤだろうと思うと気が重いのに、パートナーを見てさらにため息を深くした。
イールのパートナーは、入学以来ダントツで首席な上に、代々騎士の家系に生まれたせいか剣の腕にも定評がある。その上人を寄せ付けない雰囲気ではあるものの顔もいいという、非の打ちどころのない完璧さを誇る男だった。
しかも彼はとんでもないSランクの魔物を仕留めるだなんて言いだして……。
生まれ変わったら知ってるモブだった
マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。
貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。
毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。
この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。
その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。
その瞬間に思い出したんだ。
僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる