好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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研修生活スタート

9 第三庭園にて①

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 一人で行けますか?とかいう如月の子供扱いを断って、パーティー会場から隣接する庭園に出る。
 庭園も着飾った人達で混みあっていた。でも屋内より堅苦しい雰囲気はなくて、なんだか日本の祭りを思い出した。もちろん屋台とか提灯とか和風の物は何も無いんだけど、夜に皆で楽しく飲み食いしている雰囲気は祭りのそれに近い。数人で踊っているグループもいるし、規模は小さいけど魔法の灯りがキラキラと模様を描いていて花火に見えないこともない。

 盛り上がっている人達に第三庭園の場所を聞いて、たまに料理をつまみ食いしながら移動した。

 第三庭園はパーティー会場から少し離れていた。第一と第二庭園までは賑やかなのに、第三までくると人影もまばらだ。

「ここで合ってるのかな……」

 のこのことやって来たけど、賑やかな場所が好きな俺としては少しさみしい。
 誰もいないベンチに腰掛けて、持ってきた料理と飲み物を胃におさめていると、目の前の生け垣でがさりと音がした。

 びっくりして生け垣を見たけど何もいない。ほっとして料理を食べようとしたら
「お待たせ!」
という声が真横から聞こえて叫びそうになった。

『あ、アークさん??いつ……?』

 ベンチにアークさんが座っている。今までいなかったのに、ゴーストか?それとも忍者?

「遅くなって悪かったね。ちょっと人払いの魔法かけてたんだ」
『魔法?』
「そう。会議室とかさ、使用中の時に使うあれ。別に頼まれた訳じゃないけど、やっぱり誰かに邪魔されるのは嫌だよね。俺ってなんていい部下なんだと思わない?ロベルトは余計な事するなって言うんだけどさ、うちの王子は頑なだから。そこも素晴らしいんだけどね」

 そういえばアークさんはよく喋る人だった。言っている事の意味が半分くらい分からないけど。

「俺はね、ルーシェン王子第一なの。王子の為なら命も捨てられる。それは飛行部隊の全員がそうだと思うけどね。子供の頃から王子にお仕えするのが夢だった。十五歳になったら即飛行部隊の入門試験を受けたよ。今では夢が叶って、いつでもそばで王子を御守りする事ができる」

 アークさんはそこで俺の微妙な表情に気づき、慌てて言葉を続けた。

「もちろん主君として好きって話だよ。恐れ多くて恋なんて出来ない。王子に好きな方が出来れば全力で応援する。……実際には出来るとは思っていなかったけど」

『え?』

「王子の人間不信は飛行部隊では有名な話だからね」

 ルーシェンが人間不信?少しも気付かなかったぞ。

「ルーシェン王子は過去に三度信頼する者に裏切られている。そのせいで王子は滅多に他人に心を開かない。だから、君が現れた時はとても驚いたよ」

 ルーシェンの過去話を聞いたの初めてだ。裏切り者の中にアルマが入っているのか気になる。アルマの事を信頼まではしていなかった気がするから、命を狙われるのは日常茶飯事って事か?

「だからミサキシュウヘイ君!」
『はい!』

 いきなりアークさんにがっしり手を握られた。

「君は王子を裏切らないで欲しい」

 普段の明るさと違って目が本気だ。握られた手に圧力を感じた。

『……』

 裏切るという言葉がどれくらいの意味まで含まれるのだろうと考えていたら、石畳を歩く靴音が聞こえて来た。

「今度はお前か、アーク」

 相変わらず低くて機嫌の悪い声。
 アークさんが慌てて俺の手を離し、立ち上がって礼をとった。

「すみません王子、つい話に熱が入りまして。何しろ部屋が隣同士ですから」

 それからアークさんはルーシェンと俺の知らない話を少し続けた。パーティーに来ていた偉い人の話とか、仕事の話。
 俺は一応作法だから、ルーシェンの目を見ないように生け垣の一部になった気分でじっとしていた。
 灯りが少ないから、ルーシェンの姿ははっきりとは見えない。怒っているだろうし、気まずいし、何だか変な照れくささもあるから目を逸らしているけど、でも会いたかったから足元とかマントや胸のあたりを気付かれないようにチラ見する。

「それでは王子、私はこちらに控えておりますので、お二人は奥にどうぞ」

 アークさんがにこやかに言ったので我に返った。
 奥?そう思って生け垣の奥を見ると、庭園の端に東屋みたいな建物があった。
 アークさん、もしかして俺とルーシェンに二人っきりになれる場所を提供してくれたのか?
 今さらそんな事に気づき、恥ずかしさで痒くなっている俺の手をルーシェンが握った。

 無言のままぐいぐい引っ張られる。地味に痛い。東屋に到着してもルーシェンは無言のままだ。

『怒ってるんですか?』

 ようやく顔を上げて質問すると、魔法の光に縁取られて、ルーシェンは本当にキラキラと光る青いオーラをまとっているように見えた。不機嫌な表情なのにかっこよくて見とれてしまう。

「……怒っている」

 ルーシェンはそう言うと、腕を伸ばしてぎゅっと俺を抱きしめた。
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