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研修生活スタート
15 これが王族ってやつか
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しばらく言葉が出なかった。
でも、そうだよな。ルーシェンは体感的には一年近く魔法村に閉じ込められていたんだから、トラウマになっていてもおかしくない。
『アルマは……魔法で消えました。もう存在しません』
「そうだな」
俺の言葉に微笑んだルーシェンが切なくて、胸が苦しくなる。
『私も同じです。今でも時々ゾンビや、真っ黒お化けの夢を見ます』
たまに登場する程度だけど。
でもルーシェンは俺の言葉に目を見開いた。
『夢の中で真っ黒お化けが入ってこないように窓を閉めているのですが、もぐら叩きのようにあっちの窓やこっちの窓から真っ黒お化けが次々と……』
「モグラタタキ?」
『日本のゲームです。穴から出てきたもぐらを、ピコピコハンマーで叩くという』
「つまり武術のような物か。ぴこぴこハンマーという武器は初めて聞くが」
『武術じゃないです。ゲームです』
「もぐらというのは魔物か?あまり危険な事はするな」
なんで変な所に食いつくんだ。ゲームだってば。でも、ルーシェンが俺の事を心配してくれているのは嬉しい。
『私は大丈夫です。夢の中ではピコピコハンマーで真っ黒お化けを追い払いますから。それより王子の方が心配です』
本当は、夢の中では逃げ回ったあげくに土蛇や花カブトに遭遇して半泣きになるんだけど、この手の悪夢は昔からたまに見ていたし、不眠症になる程深刻じゃない。
「……シュウヘイは強いな」
『今頃気付いたんですか、ハハハ!』
実際には半泣きだけど内緒だ。
でもルーシェンに真顔で
「そんな所も愛おしい」
と言われて吹きそうになった。顔に熱が集まるのが分かる。
『なっ……何をいきなり……』
「本当だ。会えなかった一年をどれほど長く感じた事か。シュウヘイを探し出してくれて、ハルバートには心から感謝している」
如月、俺を見つけてもしばらく報告せずに観察してたって言ってなかったか?これも黙っておこう。
あれこれ考えていると、ルーシェンにキスされた。触れるだけの軽いやつだ。
「シュウヘイ、もう寝ろ。疲れただろう」
『ルーシェンが眠るまで起きています。先に寝てください』
「分かった」
ルーシェンはそう言ったけど、多分先に記憶をなくしたのは俺の方だ。パーティーとその後のイチャイチャで、あっさり眠りに落ちてしまった。
***
さわやかな朝が来た。
ちょっと身体がだるい。昨日は久々すぎて疲れたんだろうな。
朝の光が窓から差し込んでいるのを感じながら、暖かいシーツの中でモゾモゾして、隣に眠る人を探す。
すぐに身体に腕が回されて、嬉しくてしがみついた。ぎゅっと抱きしめられて、目を閉じていても笑ってしまう。
少し離れた寝室から俺のかけていた目覚まし時計の音が聞こえてきた。
ああ、止めに行くの面倒くさいな。アラーム切っておけば良かった。
まだ鳴ってる。
でも起きたくないな、と思った時、聞いたことのない女性の声が耳に飛び込んできた。
「失礼いたします。王子、この音はいかがいたしましょう」
びっくりして飛び起きる。
寝室の扉が少し開いていて、五十代くらいのワンピースを着た女性が頭を下げて立っているのが見えた。
うわああ……!!
俺、裸だった。あせってシーツで前を隠す。
隣で起き上がったルーシェンが、平然と
「シュウヘイ、あの音はなんだ?」
と聞いてくる。
『目覚まし時計……っていうか、この人は誰ですか?』
「ああ、彼女は俺専属の侍女頭で、子供の頃から身の回りの事を任せている」
五十代くらいの女性は、俺に対して恭しく礼をとった。
「はじめまして、ミサキシュウヘイ様、ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。私はルーシェン王子専属の侍女頭フィオネと申します」
『……あ、は、はじめまして。わ、私の名前は岬修平です。よろしくお願いします……』
イチャイチャした翌朝で、裸で王子とベッドにいなければ、もっとましな対応が出来ていたと思う。恥ずかしすぎてまともに目も合わせられない。
でも、フィオネさんはまったく動じていなかった。きっちりとまとめられた髪型と同じで、表情にも仕草にも隙が無い。部下の鑑だ。
ルーシェンも裸だというのに、平然としている。これが王族ってやつか。
しどろもどろで目覚まし時計の止め方を説明する。
「畏まりました。それでは隣室に控えておりますので、御用があればお呼びくださいませ」
フィオネさんは頭を下げて出ていった。
口をパクパクさせながらルーシェンを振り向くと、
「今朝はシュウヘイの部屋で過ごしたかったんだ」
と悪びれるわけでもなく言う。
絶句していると、隣室からはパタパタと複数人の足音と、若い女性達の声、それにフィオネさんの
「静かになさい。隣で王子がくつろいでいらっしゃるのよ」
という声。何人来てるんだよ。
羞恥心でいっぱいになる俺を、ルーシェンが背後から抱きしめる。
「昨日の続きでもするか?」
にやつくルーシェンを見て、王族はおそろしいとつくづく感じた。
でも、そうだよな。ルーシェンは体感的には一年近く魔法村に閉じ込められていたんだから、トラウマになっていてもおかしくない。
『アルマは……魔法で消えました。もう存在しません』
「そうだな」
俺の言葉に微笑んだルーシェンが切なくて、胸が苦しくなる。
『私も同じです。今でも時々ゾンビや、真っ黒お化けの夢を見ます』
たまに登場する程度だけど。
でもルーシェンは俺の言葉に目を見開いた。
『夢の中で真っ黒お化けが入ってこないように窓を閉めているのですが、もぐら叩きのようにあっちの窓やこっちの窓から真っ黒お化けが次々と……』
「モグラタタキ?」
『日本のゲームです。穴から出てきたもぐらを、ピコピコハンマーで叩くという』
「つまり武術のような物か。ぴこぴこハンマーという武器は初めて聞くが」
『武術じゃないです。ゲームです』
「もぐらというのは魔物か?あまり危険な事はするな」
なんで変な所に食いつくんだ。ゲームだってば。でも、ルーシェンが俺の事を心配してくれているのは嬉しい。
『私は大丈夫です。夢の中ではピコピコハンマーで真っ黒お化けを追い払いますから。それより王子の方が心配です』
本当は、夢の中では逃げ回ったあげくに土蛇や花カブトに遭遇して半泣きになるんだけど、この手の悪夢は昔からたまに見ていたし、不眠症になる程深刻じゃない。
「……シュウヘイは強いな」
『今頃気付いたんですか、ハハハ!』
実際には半泣きだけど内緒だ。
でもルーシェンに真顔で
「そんな所も愛おしい」
と言われて吹きそうになった。顔に熱が集まるのが分かる。
『なっ……何をいきなり……』
「本当だ。会えなかった一年をどれほど長く感じた事か。シュウヘイを探し出してくれて、ハルバートには心から感謝している」
如月、俺を見つけてもしばらく報告せずに観察してたって言ってなかったか?これも黙っておこう。
あれこれ考えていると、ルーシェンにキスされた。触れるだけの軽いやつだ。
「シュウヘイ、もう寝ろ。疲れただろう」
『ルーシェンが眠るまで起きています。先に寝てください』
「分かった」
ルーシェンはそう言ったけど、多分先に記憶をなくしたのは俺の方だ。パーティーとその後のイチャイチャで、あっさり眠りに落ちてしまった。
***
さわやかな朝が来た。
ちょっと身体がだるい。昨日は久々すぎて疲れたんだろうな。
朝の光が窓から差し込んでいるのを感じながら、暖かいシーツの中でモゾモゾして、隣に眠る人を探す。
すぐに身体に腕が回されて、嬉しくてしがみついた。ぎゅっと抱きしめられて、目を閉じていても笑ってしまう。
少し離れた寝室から俺のかけていた目覚まし時計の音が聞こえてきた。
ああ、止めに行くの面倒くさいな。アラーム切っておけば良かった。
まだ鳴ってる。
でも起きたくないな、と思った時、聞いたことのない女性の声が耳に飛び込んできた。
「失礼いたします。王子、この音はいかがいたしましょう」
びっくりして飛び起きる。
寝室の扉が少し開いていて、五十代くらいのワンピースを着た女性が頭を下げて立っているのが見えた。
うわああ……!!
俺、裸だった。あせってシーツで前を隠す。
隣で起き上がったルーシェンが、平然と
「シュウヘイ、あの音はなんだ?」
と聞いてくる。
『目覚まし時計……っていうか、この人は誰ですか?』
「ああ、彼女は俺専属の侍女頭で、子供の頃から身の回りの事を任せている」
五十代くらいの女性は、俺に対して恭しく礼をとった。
「はじめまして、ミサキシュウヘイ様、ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。私はルーシェン王子専属の侍女頭フィオネと申します」
『……あ、は、はじめまして。わ、私の名前は岬修平です。よろしくお願いします……』
イチャイチャした翌朝で、裸で王子とベッドにいなければ、もっとましな対応が出来ていたと思う。恥ずかしすぎてまともに目も合わせられない。
でも、フィオネさんはまったく動じていなかった。きっちりとまとめられた髪型と同じで、表情にも仕草にも隙が無い。部下の鑑だ。
ルーシェンも裸だというのに、平然としている。これが王族ってやつか。
しどろもどろで目覚まし時計の止め方を説明する。
「畏まりました。それでは隣室に控えておりますので、御用があればお呼びくださいませ」
フィオネさんは頭を下げて出ていった。
口をパクパクさせながらルーシェンを振り向くと、
「今朝はシュウヘイの部屋で過ごしたかったんだ」
と悪びれるわけでもなく言う。
絶句していると、隣室からはパタパタと複数人の足音と、若い女性達の声、それにフィオネさんの
「静かになさい。隣で王子がくつろいでいらっしゃるのよ」
という声。何人来てるんだよ。
羞恥心でいっぱいになる俺を、ルーシェンが背後から抱きしめる。
「昨日の続きでもするか?」
にやつくルーシェンを見て、王族はおそろしいとつくづく感じた。
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