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研修生活スタート

17 本気って何が?

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 姉ちゃんに、異世界(メールでは外国)で元気にやっていること、今は見習いで研修中なこと、ご飯はわりと美味しい事なんかを書いて、少しだけ悩んで、好きな人が出来た事を追加した。
 好きな人とは身分が違っているけど、頑張ってみようと思っている事を書いて送信する。
 普段なら姉ちゃんにそんな事は絶対に言わないんだけど、異世界でナーバスになっていたのかもしれない。ルーシェン付きの侍女達の中では完全にアウェイだから味方が欲しかったのかも。

 気持ちを切り替えて鳥小屋を掃除しているとすぐに返信が来た。
 姉ちゃん今仕事中じゃないのか?
 返信の早さにおののきながらもメールを開くと、

『弟の恋愛一ミリも興味ない』

 という言葉があざ笑う絵文字と共に書いてあった。
 その下には、見習いの分際で身分違いの恋なんて贅沢だから仕事しろという文章と、恋愛運を上げるにはピンクを着ろというアドバイス?が。
 ……ナーバスになって損した。

 でも、姉ちゃんの言うことは正しいかもな。
 性別を抜きにしても、見習いと王子じゃ差がありすぎて反対されるのが目にみえてる。研修頑張って、とにかく早く一人前になろう。後は……ピンクか。

***

「あれ、岬さん出勤してたんですか?」

 午後になると如月が異世界担当課に戻って来た。
 俺は如月より先に戻って来た梅子さんと、魔方陣ならびに異世界語の書類について勉強中だ。

「岬ちゃん頑張ってるのよ」
『頑張ってます』
「それは良かったです」

 そう言いながら、如月は胡散臭い笑顔で書類を俺の机に追加した。

『これ何ですか?』
「岬さんのこれからのスケジュールです」
『研修のスケジュールですか?』

 それならもうもらってるんだけど。

「いえ、それは追加分です」
『追加!?』
「良かったですね。岬さんの大好きな飛竜に乗って空を飛行する為の研修が追加されますよ」
『ええっ!?』
「そのうち王子から話があると思いますが、出来るだけ早い段階で飛行訓練を開始して欲しいと打診がありました。飛行訓練は見習いには無理ですから、岬さんには一人前になる試験を一回目でパスしていただいて、その後飛竜のトレーナー試験を経て飛行訓練です。これから忙しくなりますよ。一年では難しいかもしれませんが」
『い、一年?』

 どうやら俺は、想像以上に頑張らないといけないらしい。

『何で一年なんですか?』
「それは王子に直接伺ってください。でも……岬さん、王子はどうやら本気のようですよ」

 本気って何が?とは怖くて聞けなかった。
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