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認定式
2 合格
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歴史の試験が終わってから数日後、仕事(買い出し)から戻った俺を、にこやかな笑顔の部長と如月が待ち受けていた。
『どうしたんですか?お揃いで』
仕事の小さなミスはたまにやらかしていたけど、笑顔だからそんな事じゃなさそうだ。
「おめでとう!岬くん!」
『え?』
まさか。
部長は懐からキラキラ光る緑色のバッチを取り出した。
「これで君もはれて、この、ラキ王国の王宮で働く一人前の兵士と言うわけだ!」
『合格ですか!?』
如月に確認すると、いつものクールな笑顔で頷いた。
「いやったああああ!!」
「よかったわね!修平ちゃん!」
「おめでとう」
部長が俺の制服の胸元に、緑色のバッチをとめてくれる。これが一人前の証らしい。その様子見ていた梅子さんと太郎さんが拍手でお祝いしてくれた。
「いやぁ……良かった良かった。君がいつまでも試験に合格出来なかったり、異世界に帰るなんて言い出したらどうしようかと心配していたんだよ。いろいろな圧力から解放されて、ようやく私も熟睡出来るというものだ。な、ハルちゃん」
「これからが大変でしょうけど、おめでとうございます。岬さん、良かったですね」
『ありがとうございます!』
部下を一人前にするのってそんなに大変なのか。頑張って良かった。
「つきましては岬さん、合格者の為の式典がありますので、後日そちらに参加してくださいね。一般の見習い兵はここで配属先が決まるんですが、岬さんは異世界の方ですし、魔法関連部から変わることはありませんのでご安心ください。出張や他の部署への応援は増えるかもしれませんが」
『はいっ』
「研修は今までより少し楽になりますが、飛竜の研修などこれから始めて欲しい物にはチェックをいれていますのでスケジュールを見ておいてくださいね」
『はいっ』
ようやく見習い卒業か。これで王宮でずっと働ける。ルーシェンに報告して祝ってもらおう。
仕事が終わってから楽しく部屋に戻ると、ベランダに動く巨大な影が見えた。
『ルーシェン!?』
慌ててベランダに出ると、ちょうど白い飛竜が庭園に舞い降りる所だった。
優雅さに見とれたのも一瞬で、着地したと同時に翼を羽ばたかせたため、突風でベランダの柵にぶつかりそうになった。近くで見るとすごい迫力だ。
「シュウヘイ」
王子が飛竜の背中から飛び降りて、よろけた俺を抱き止める。相変わらずすごい運動神経だ。
『仕事終わりですか?』
今日はベランダからなんですね、と続けようとしたら、ぎゅうっと抱きしめられた。
『ルーシェン?』
「五日ほど、王宮を離れる事になった」
『えっ?』
「辺境に魔物が出没し被害が出ている。これから部下を連れて討伐に行く」
『大丈夫なのですか?』
「報告通りなら五日で帰れるはずだ」
そんな事言って、アルマの事件の時もそんな感じじゃなかったか?
俺の不安を察したのだろう、ルーシェンは笑顔を作ってみせた。
「心配するな。大した魔物じゃない」
『帰りが遅くなったら迎えに行きます』
「それは心強いな」
ルーシェンは俺の制服のバッチに気づいて、大事そうに指で触れた。
「シュウヘイ、試験に合格したのか」
『はい。これでようやく見習い卒業です』
「慣れない世界の文化や習慣を覚えてくれて礼を言う。それなら式に間に合うように帰らなければな」
『頑張りました。何かご褒美ください』
「褒美?」
『い、一日デートとか……』
そう言うと、ルーシェンは笑い出した。
「分かった。約束しよう。討伐から帰ったら、俺の部屋でも、どこかシュウヘイの好きな場所でもいい。二人で過ごそう」
『楽しみにしてます。だから早く帰って来てください』
すぐに出なければならないと言っていたルーシェンと、それでもしばらく抱きあって、何度かキスをする。たった五日なのに別れが寂しい。
飛竜に乗って飛び立つルーシェンを見送りながら、彼が無事に帰って来ますようにと祈った。
歴史の試験が終わってから数日後、仕事(買い出し)から戻った俺を、にこやかな笑顔の部長と如月が待ち受けていた。
『どうしたんですか?お揃いで』
仕事の小さなミスはたまにやらかしていたけど、笑顔だからそんな事じゃなさそうだ。
「おめでとう!岬くん!」
『え?』
まさか。
部長は懐からキラキラ光る緑色のバッチを取り出した。
「これで君もはれて、この、ラキ王国の王宮で働く一人前の兵士と言うわけだ!」
『合格ですか!?』
如月に確認すると、いつものクールな笑顔で頷いた。
「いやったああああ!!」
「よかったわね!修平ちゃん!」
「おめでとう」
部長が俺の制服の胸元に、緑色のバッチをとめてくれる。これが一人前の証らしい。その様子見ていた梅子さんと太郎さんが拍手でお祝いしてくれた。
「いやぁ……良かった良かった。君がいつまでも試験に合格出来なかったり、異世界に帰るなんて言い出したらどうしようかと心配していたんだよ。いろいろな圧力から解放されて、ようやく私も熟睡出来るというものだ。な、ハルちゃん」
「これからが大変でしょうけど、おめでとうございます。岬さん、良かったですね」
『ありがとうございます!』
部下を一人前にするのってそんなに大変なのか。頑張って良かった。
「つきましては岬さん、合格者の為の式典がありますので、後日そちらに参加してくださいね。一般の見習い兵はここで配属先が決まるんですが、岬さんは異世界の方ですし、魔法関連部から変わることはありませんのでご安心ください。出張や他の部署への応援は増えるかもしれませんが」
『はいっ』
「研修は今までより少し楽になりますが、飛竜の研修などこれから始めて欲しい物にはチェックをいれていますのでスケジュールを見ておいてくださいね」
『はいっ』
ようやく見習い卒業か。これで王宮でずっと働ける。ルーシェンに報告して祝ってもらおう。
仕事が終わってから楽しく部屋に戻ると、ベランダに動く巨大な影が見えた。
『ルーシェン!?』
慌ててベランダに出ると、ちょうど白い飛竜が庭園に舞い降りる所だった。
優雅さに見とれたのも一瞬で、着地したと同時に翼を羽ばたかせたため、突風でベランダの柵にぶつかりそうになった。近くで見るとすごい迫力だ。
「シュウヘイ」
王子が飛竜の背中から飛び降りて、よろけた俺を抱き止める。相変わらずすごい運動神経だ。
『仕事終わりですか?』
今日はベランダからなんですね、と続けようとしたら、ぎゅうっと抱きしめられた。
『ルーシェン?』
「五日ほど、王宮を離れる事になった」
『えっ?』
「辺境に魔物が出没し被害が出ている。これから部下を連れて討伐に行く」
『大丈夫なのですか?』
「報告通りなら五日で帰れるはずだ」
そんな事言って、アルマの事件の時もそんな感じじゃなかったか?
俺の不安を察したのだろう、ルーシェンは笑顔を作ってみせた。
「心配するな。大した魔物じゃない」
『帰りが遅くなったら迎えに行きます』
「それは心強いな」
ルーシェンは俺の制服のバッチに気づいて、大事そうに指で触れた。
「シュウヘイ、試験に合格したのか」
『はい。これでようやく見習い卒業です』
「慣れない世界の文化や習慣を覚えてくれて礼を言う。それなら式に間に合うように帰らなければな」
『頑張りました。何かご褒美ください』
「褒美?」
『い、一日デートとか……』
そう言うと、ルーシェンは笑い出した。
「分かった。約束しよう。討伐から帰ったら、俺の部屋でも、どこかシュウヘイの好きな場所でもいい。二人で過ごそう」
『楽しみにしてます。だから早く帰って来てください』
すぐに出なければならないと言っていたルーシェンと、それでもしばらく抱きあって、何度かキスをする。たった五日なのに別れが寂しい。
飛竜に乗って飛び立つルーシェンを見送りながら、彼が無事に帰って来ますようにと祈った。
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