47 / 209
引っ越し
6 引っ越し
しおりを挟む
「荷物はこれだけか?」
『はい』
「少ないな」
部屋の中はさすがに何の魔法もかけられてはいなかった。鍵を閉めていたから当然といえば当然だけど。
俺は各部屋にある荷物を一カ所にまとめ、キャリーバッグに詰めていた。アークさんと如月は別室で何事かを話し込んでいる。ルーシェンは腕組みをして俺の行動を眺めている。何もすることがないなら手伝ってくれたらいいのに、王子様には引っ越しを手伝うという概念がないらしい。そして何より機嫌が悪い。アークさんも如月も、最低限の事しか話しかけてこないのは、ルーシェンの怒りのとばっちりを受けるのが嫌だからだ、きっと。
『終わりました』
短い王宮生活だった。
次はどこに住むんだろう。出勤が楽だから王都のどこかがいいな。ここも楽しかったけど、ごちゃごちゃした街並みでも、緑水湖の見える場所でも、地下街だって住めば楽しいだろう。地上なら突き落とされたりはしないだろうけど、王宮から出てもしつこく付きまとわれて、緑水湖に沈められたりするかもな。まあ、その時はその時だ。
部屋を出て、15階の浮遊石エレベーターまで到着する。
アークさんと如月はこの先別行動らしい。アークさんは討伐の報告書を作成しないといけないらしいし(国王や重臣の前で成果を発表するみたいだ)如月は魔法のトラップについて部長に相談し、魔法使いに探りを入れるらしい。二人とも優秀だから忙しいんだろうな。
「王子、それでは私はこれで」
アークさんが一礼してエレベーターを降りていく。
「私もこれで失礼いたします。岬さん、体調が戻るまでゆっくり休んでくださいね。落ち着いたら電話してください」
『分かりました』
如月もそそくさとエレベーターに乗って17階に行ってしまった。
ルーシェンと二人きりにはなりたかったけど、今のルーシェンかなり機嫌悪いよな。気まずい。
『それでは私も引っ越し先を探しに行って参ります。引っ越し先が見つかったら報告します』
部下らしく敬礼して言ったのに、ルーシェンに冷たい目で睨まれた。
「何を言っている」
『え?だから、新しい引っ越し先……』
「もう決まっている」
『え?そうなんですか?』
だから如月もアークさんも何も言わなかったのか。
『どこですか?王都ですか?』
「21階だ」
『へえ……21階……え?21階!?』
21階って王族のプライベートエリアじゃなかったか?一般人立ち入り禁止の。
「シュウヘイの魔力酔いが治まるまでもう少し様子を見たかったが、仕方が無い。21階は魔力は強いが他のどんな場所より安全だ」
『でも、王族しか入れないんですよね?』
「なんだ、不満か?」
『いえ別に不満という訳じゃ……』
ルーシェンがムッとした表情のまま、いきなり背中に腕を回してきて、そのまま壁際に追い込まれた。
『ルーシェン、怒ってますか?怒ってますよね……?』
「当たり前だ。恋人を殺されかけて、怒らずにいられるか?冷静に対応している事を褒めてもらいたいくらいだ」
『恋人……』
不謹慎だけど、その一言で沈んでいた気持ちが浮上した。
「何を笑っている……相変わらずシュウヘイは、事態の深刻さが飲み込めていない」
ルーシェンはそう言うと、俺の唇にゆっくりと唇を押し当ててきた。そのまま強引に唇を開かれて、舌が絡めとられる。目まいがするような気持ち良さに背筋が震えた。会えなかった時も、幽体離脱していた時も、ずっとキスしたかった。
誰もいないのをいいことに、しばらく夢中でお互いの熱を確かめ合う。
『……ルーシェン……好きです』
「シュウヘイ……」
『何で王子なんですか……』
ルーシェンが王子じゃなかったら、もっと簡単なのに。身分の差がもどかしい。
「そう言うな」
俺の八つ当たりを聞いて、ルーシェンは弱々しく笑う。俺もその笑みにつられて笑ってしまった。事態の深刻さが飲み込めていないって俺に言うルーシェンも、ゾンビが襲って来たってキスしてくるような性格だったよな。そんな所が愛おしくなってぎゅっと抱きつくと、もう一度深く口づけされた。
『はい』
「少ないな」
部屋の中はさすがに何の魔法もかけられてはいなかった。鍵を閉めていたから当然といえば当然だけど。
俺は各部屋にある荷物を一カ所にまとめ、キャリーバッグに詰めていた。アークさんと如月は別室で何事かを話し込んでいる。ルーシェンは腕組みをして俺の行動を眺めている。何もすることがないなら手伝ってくれたらいいのに、王子様には引っ越しを手伝うという概念がないらしい。そして何より機嫌が悪い。アークさんも如月も、最低限の事しか話しかけてこないのは、ルーシェンの怒りのとばっちりを受けるのが嫌だからだ、きっと。
『終わりました』
短い王宮生活だった。
次はどこに住むんだろう。出勤が楽だから王都のどこかがいいな。ここも楽しかったけど、ごちゃごちゃした街並みでも、緑水湖の見える場所でも、地下街だって住めば楽しいだろう。地上なら突き落とされたりはしないだろうけど、王宮から出てもしつこく付きまとわれて、緑水湖に沈められたりするかもな。まあ、その時はその時だ。
部屋を出て、15階の浮遊石エレベーターまで到着する。
アークさんと如月はこの先別行動らしい。アークさんは討伐の報告書を作成しないといけないらしいし(国王や重臣の前で成果を発表するみたいだ)如月は魔法のトラップについて部長に相談し、魔法使いに探りを入れるらしい。二人とも優秀だから忙しいんだろうな。
「王子、それでは私はこれで」
アークさんが一礼してエレベーターを降りていく。
「私もこれで失礼いたします。岬さん、体調が戻るまでゆっくり休んでくださいね。落ち着いたら電話してください」
『分かりました』
如月もそそくさとエレベーターに乗って17階に行ってしまった。
ルーシェンと二人きりにはなりたかったけど、今のルーシェンかなり機嫌悪いよな。気まずい。
『それでは私も引っ越し先を探しに行って参ります。引っ越し先が見つかったら報告します』
部下らしく敬礼して言ったのに、ルーシェンに冷たい目で睨まれた。
「何を言っている」
『え?だから、新しい引っ越し先……』
「もう決まっている」
『え?そうなんですか?』
だから如月もアークさんも何も言わなかったのか。
『どこですか?王都ですか?』
「21階だ」
『へえ……21階……え?21階!?』
21階って王族のプライベートエリアじゃなかったか?一般人立ち入り禁止の。
「シュウヘイの魔力酔いが治まるまでもう少し様子を見たかったが、仕方が無い。21階は魔力は強いが他のどんな場所より安全だ」
『でも、王族しか入れないんですよね?』
「なんだ、不満か?」
『いえ別に不満という訳じゃ……』
ルーシェンがムッとした表情のまま、いきなり背中に腕を回してきて、そのまま壁際に追い込まれた。
『ルーシェン、怒ってますか?怒ってますよね……?』
「当たり前だ。恋人を殺されかけて、怒らずにいられるか?冷静に対応している事を褒めてもらいたいくらいだ」
『恋人……』
不謹慎だけど、その一言で沈んでいた気持ちが浮上した。
「何を笑っている……相変わらずシュウヘイは、事態の深刻さが飲み込めていない」
ルーシェンはそう言うと、俺の唇にゆっくりと唇を押し当ててきた。そのまま強引に唇を開かれて、舌が絡めとられる。目まいがするような気持ち良さに背筋が震えた。会えなかった時も、幽体離脱していた時も、ずっとキスしたかった。
誰もいないのをいいことに、しばらく夢中でお互いの熱を確かめ合う。
『……ルーシェン……好きです』
「シュウヘイ……」
『何で王子なんですか……』
ルーシェンが王子じゃなかったら、もっと簡単なのに。身分の差がもどかしい。
「そう言うな」
俺の八つ当たりを聞いて、ルーシェンは弱々しく笑う。俺もその笑みにつられて笑ってしまった。事態の深刻さが飲み込めていないって俺に言うルーシェンも、ゾンビが襲って来たってキスしてくるような性格だったよな。そんな所が愛おしくなってぎゅっと抱きつくと、もう一度深く口づけされた。
20
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
【16+4話完結】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜
キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」
平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。
そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。
彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。
「お前だけが、俺の世界に色をくれた」
蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。
甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
最弱オレが、最強魔法騎士様のパートナーになった件
竜也りく
BL
「最悪だ……」
その日イールはめちゃくちゃ落ち込んでいた。
イールが通う魔術学校の卒業試験は制限時間72時間の中でどれだけ強い魔物を討伐できるかで審査される上、二人ひと組のチーム選だからだ。
入学してからこのかた常にダントツ最下位を取り続けてきたイールと組むなんて誰だってイヤだろうと思うと気が重いのに、パートナーを見てさらにため息を深くした。
イールのパートナーは、入学以来ダントツで首席な上に、代々騎士の家系に生まれたせいか剣の腕にも定評がある。その上人を寄せ付けない雰囲気ではあるものの顔もいいという、非の打ちどころのない完璧さを誇る男だった。
しかも彼はとんでもないSランクの魔物を仕留めるだなんて言いだして……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる