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波乱含みの婚約式
2 そのままでよろしいのですよ
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家族の事を考えていると、如月が咳払いした。
「続けていいですか?岬さん」
『あ、はいどうぞ』
「婚約式から結婚式までのスケジュールですが」
そう言って如月は数枚の紙をくれた。ラキ王国の紙ではなく、日本のレポート用紙だ。如月は安くて良質な日本の紙と、ボールペンや万年筆がお気に入りみたいで、日本に行く度にノートやコピー用紙など文房具を買い込んでしまうらしい。
レポート用紙には異世界語でスケジュールが書かれていた。専門用語には日本語訳も入っている。
『うっ……』
スケジュールはざっくりしていたが、なんとなくハードである事は予想がついた。
「簡単に説明しますと、婚約式が明後日です。これが日本でいう所の結婚式のようなもので、岬さんは朝、禊ぎを受けた後、王子と合流して国賓の方々の前で婚約の儀式があります。その後王宮の3階で大規模な婚約パーティーがあり、それから王都のメインストリートを角竜に乗ってパレードです」
ちょっと待て、今聞き捨てならない単語があったぞ。角竜?
『角竜って何ですか?』
「硬い皮膚と角を持つ大型動物です。大人しいから大丈夫ですよ。サイを大きくしたような動物だと思ってください」
すごく楽しみだ。角竜見たい。
「翌日から岬さんと王子は主要都市に挨拶まわりに出かける事になります。おそらく飛竜に乗って移動でしょう。街に着けば、その街の歓迎パーティーと祭りに顔を出して、しばらく滞在します。数日したら次の街に移動です」
『主要都市っていくつくらいまわるんですか?』
「平均は五つくらいですが、現国王と王妃様は少なくて、三都市しかまわっていません。ですからルーシェン王子にはぜひ来て欲しいと要望が殺到しています。大体七都市くらいで調整していると思いますよ」
な、七都市で毎回パーティーするのか……。パーティーといってもカラオケパーティーみたいなやつじゃないよな、もちろん。
「七都市をまわったら、王宮の最上階にある浮島で、王子と二人で誓いの儀式があります。これが結婚式ですね。こちらの世界では婚約式が派手で、結婚式は大体二人きりなんです。婚約式から結婚式までの期間が大体半年から一年くらいかかります」
『長いですね……そんなに長くて大丈夫ですか?国民とか怒らないんですか?』
「いえ、長ければ長いほど喜ばれます。この期間、ラキ王国はずっと祝賀ムード一色で、税金は安くなりますし、罪人には恩赦が出ます。各地でお祝いやお祭りが行われ、同じ時期に結婚する若者が続出します。経済効果もかなりありますよ。岬さんのグッズも売られる予定ですし」
げげっ、俺のグッズ……!?そんなもの買う奴いるのか?
『売れ残ったら買い取りですか?』
不安が顔に出ていたのだろう、如月が笑った。
「大丈夫ですよ。たとえ岬さんのグッズでも、王子様の結婚相手というだけで飛ぶように売れます。すでに王宮の一部の兵士達の間では、岬さんと同じ髪型にするのが流行っているみたいですし」
恐るべし、王子様との結婚……!
***
如月が帰ってからも、頭の中は婚約式の事でいっぱいだった。
国賓の前での婚約式にパーティーやパレード、そんな立派な場所に俺が出て幻滅されないかな。えっ?こいつが王子様のお相手?みたいな……。
「ミサキ殿」
うわの空だったので、フィオネさんに話しかけられても気付かなかった。
「ミサキ殿、王子がお帰りです。どうなさいました?」
『あ、すみません。考え事をしてました』
「考え事とは?」
『式典で何か失敗するんじゃないかと心配で……』
認定式でも派手に倒れたからな。でもフィオネさんは優しく笑った。
「大丈夫です。そのままのミサキ殿でよろしいのですよ」
そうか。
いつもの俺でいいのか。フィオネさんに励まされて、心が軽くなった。
***
ルーシェンが帰ってきて、その日は久々に二人でゆっくりお風呂に入った。
明後日に婚約式だから、明日の仕事は最終的な打ち合わせだけで、ほとんど休みみたいなものらしい。
「シュウヘイ……準備に時間がかかったが、ようやく終わりだ」
風呂場で俺にもたれかかるルーシェン。誉めて欲しいらしい。頭を撫でてみる。
『お疲れさまでした』
「これでやっと、国民にシュウヘイを紹介出来る。これからはどこに行くにも一緒だ」
『七都市をまわるんですか?』
「そうだな。五つは決定しているが、残りは未定だ。シュウヘイはどこか、行きたい所はないか?」
『そうですね……石工の街と、桃花村に行きたいです』
「桃花村……?村か」
『異世界に来て、初めて訪れたのが桃花村で、みんな優しくしてくれました』
「そうか、では村長に話をしてみよう」
ルーシェンが言いながらぎゅっと抱きしめてくれる。桃花村のみんな、王子様が来たらびっくりするだろうな。
「シュウヘイ、明日は休みだから、今日は好きなだけ抱いてもいいか?」
ルーシェンの言葉に吹きそうになった。ストレートすぎてのぼせそうになる。
『き、今日だけですよ!明日は駄目です。婚約式に睡眠不足で出るのは困ります』
「分かったよ」
これ、絶対分かってない顔だ。
でも睡眠不足でも幸せならいいか。そのままの俺でいいってフィオネさんが言ってたし。そう思ってルーシェンの首に腕をまわした。
「続けていいですか?岬さん」
『あ、はいどうぞ』
「婚約式から結婚式までのスケジュールですが」
そう言って如月は数枚の紙をくれた。ラキ王国の紙ではなく、日本のレポート用紙だ。如月は安くて良質な日本の紙と、ボールペンや万年筆がお気に入りみたいで、日本に行く度にノートやコピー用紙など文房具を買い込んでしまうらしい。
レポート用紙には異世界語でスケジュールが書かれていた。専門用語には日本語訳も入っている。
『うっ……』
スケジュールはざっくりしていたが、なんとなくハードである事は予想がついた。
「簡単に説明しますと、婚約式が明後日です。これが日本でいう所の結婚式のようなもので、岬さんは朝、禊ぎを受けた後、王子と合流して国賓の方々の前で婚約の儀式があります。その後王宮の3階で大規模な婚約パーティーがあり、それから王都のメインストリートを角竜に乗ってパレードです」
ちょっと待て、今聞き捨てならない単語があったぞ。角竜?
『角竜って何ですか?』
「硬い皮膚と角を持つ大型動物です。大人しいから大丈夫ですよ。サイを大きくしたような動物だと思ってください」
すごく楽しみだ。角竜見たい。
「翌日から岬さんと王子は主要都市に挨拶まわりに出かける事になります。おそらく飛竜に乗って移動でしょう。街に着けば、その街の歓迎パーティーと祭りに顔を出して、しばらく滞在します。数日したら次の街に移動です」
『主要都市っていくつくらいまわるんですか?』
「平均は五つくらいですが、現国王と王妃様は少なくて、三都市しかまわっていません。ですからルーシェン王子にはぜひ来て欲しいと要望が殺到しています。大体七都市くらいで調整していると思いますよ」
な、七都市で毎回パーティーするのか……。パーティーといってもカラオケパーティーみたいなやつじゃないよな、もちろん。
「七都市をまわったら、王宮の最上階にある浮島で、王子と二人で誓いの儀式があります。これが結婚式ですね。こちらの世界では婚約式が派手で、結婚式は大体二人きりなんです。婚約式から結婚式までの期間が大体半年から一年くらいかかります」
『長いですね……そんなに長くて大丈夫ですか?国民とか怒らないんですか?』
「いえ、長ければ長いほど喜ばれます。この期間、ラキ王国はずっと祝賀ムード一色で、税金は安くなりますし、罪人には恩赦が出ます。各地でお祝いやお祭りが行われ、同じ時期に結婚する若者が続出します。経済効果もかなりありますよ。岬さんのグッズも売られる予定ですし」
げげっ、俺のグッズ……!?そんなもの買う奴いるのか?
『売れ残ったら買い取りですか?』
不安が顔に出ていたのだろう、如月が笑った。
「大丈夫ですよ。たとえ岬さんのグッズでも、王子様の結婚相手というだけで飛ぶように売れます。すでに王宮の一部の兵士達の間では、岬さんと同じ髪型にするのが流行っているみたいですし」
恐るべし、王子様との結婚……!
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如月が帰ってからも、頭の中は婚約式の事でいっぱいだった。
国賓の前での婚約式にパーティーやパレード、そんな立派な場所に俺が出て幻滅されないかな。えっ?こいつが王子様のお相手?みたいな……。
「ミサキ殿」
うわの空だったので、フィオネさんに話しかけられても気付かなかった。
「ミサキ殿、王子がお帰りです。どうなさいました?」
『あ、すみません。考え事をしてました』
「考え事とは?」
『式典で何か失敗するんじゃないかと心配で……』
認定式でも派手に倒れたからな。でもフィオネさんは優しく笑った。
「大丈夫です。そのままのミサキ殿でよろしいのですよ」
そうか。
いつもの俺でいいのか。フィオネさんに励まされて、心が軽くなった。
***
ルーシェンが帰ってきて、その日は久々に二人でゆっくりお風呂に入った。
明後日に婚約式だから、明日の仕事は最終的な打ち合わせだけで、ほとんど休みみたいなものらしい。
「シュウヘイ……準備に時間がかかったが、ようやく終わりだ」
風呂場で俺にもたれかかるルーシェン。誉めて欲しいらしい。頭を撫でてみる。
『お疲れさまでした』
「これでやっと、国民にシュウヘイを紹介出来る。これからはどこに行くにも一緒だ」
『七都市をまわるんですか?』
「そうだな。五つは決定しているが、残りは未定だ。シュウヘイはどこか、行きたい所はないか?」
『そうですね……石工の街と、桃花村に行きたいです』
「桃花村……?村か」
『異世界に来て、初めて訪れたのが桃花村で、みんな優しくしてくれました』
「そうか、では村長に話をしてみよう」
ルーシェンが言いながらぎゅっと抱きしめてくれる。桃花村のみんな、王子様が来たらびっくりするだろうな。
「シュウヘイ、明日は休みだから、今日は好きなだけ抱いてもいいか?」
ルーシェンの言葉に吹きそうになった。ストレートすぎてのぼせそうになる。
『き、今日だけですよ!明日は駄目です。婚約式に睡眠不足で出るのは困ります』
「分かったよ」
これ、絶対分かってない顔だ。
でも睡眠不足でも幸せならいいか。そのままの俺でいいってフィオネさんが言ってたし。そう思ってルーシェンの首に腕をまわした。
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