67 / 209
波乱含みの婚約式
7 王妃様の魔法
しおりを挟む
下着姿の変態魔法使いは、贅肉のついた腹を揺らし近づいてくる。駄目だ、トラウマになりそう。
身体は熱くて痒いから、触られたら大嫌いな変態親父でも抵抗できずにいいようにされてしまいそうだ。想像しただけで吐きそう。
「魔力は無いが、魔法防御が高いというのは珍しい体質だね。君にはもう少し強い魔法が必要らしい」
魔法使いが両手に魔力を集める。
その魔力の渦がはっきりと見えて、恐怖に身体がすくんだ。
これをくらったら死ぬんじゃないだろうか。死ななくても終わりだ。こんな親父に抱かれたら、もうルーシェンに顔向け出来ない。
必死に腕に力を入れると、奇跡的にロープが外れた。
だけど次の瞬間、魔法使いの魔力が稲妻のように襲いかかってくる。咄嗟に両手で顔をガードした。
……え?
覚悟した痛みが襲ってこない。
目を開けると、稲妻はらせんを描くように収束し、俺の手の甲に集まっている。そして吸い込まれるようにして消えた。
「何だと……?お前……今、何をした?」
驚いたのは俺だけじゃなかったらしい。魔法使いが俺を凝視している。それまでの余裕のある話し方が一変し、表情が険しくなっている。
俺の手の甲は赤く光っていた。王妃様と面会した時と同じだ。魔法を吸収……したのか?
「その腕を見せなさい」
『嫌だ!こっちに来るな……!』
魔法使いが近づいてくる。
後ろは壁だ。逃げ場がない。魔法使いは片手で俺の手首を掴み、杖を振り上げた。
『うわぁ!離せ!』
振り払おうと力を入れる。
何かが弾けたような音がして、俺の手の甲から垂直に炎が立ち上った。魔法使いが炎に包まれる。
「ギャアア……!」
耳を塞ぎたくなるような悲鳴。そして爆発音が響いた。
***
しばらく意識を失っていたと思う。
ほんの数分かもしれないけど。風が吹き抜けるのを感じて体を起こすと、背後の壁に穴が開いていた。
目の前に魔法使いが倒れている。床には焦げたような跡があり、壊れた家具と壁の破片が散乱していた。
もしかして……死んだのか?俺が殺した?
怖くなって近寄ると、魔法使いは火傷を負って意識を失ってはいるものの、息はあった。自動的に回復するよう魔法がかけられているんだろう。じわじわと白い光に包まれていくのが見える。
ほっとしたと同時に焦りが生まれた。たとえこんな変態親父でも殺したり傷つけるのは嫌だから、回復してくれて助かった。けど、元気になるとこっちが困る。爆発音で部下が来てもまずい。早く逃げないと。
逃げようと思っても、扉にはきっと鍵がかかってるしその先には部下もいる。逃げ場は壁に開いた穴しかなさそうだった。
壁の先は緑水湖だ。水面からの高さは十メートル程度。この体で泳げるだろうか。深さは十分だろうか。考えている暇はない。
魔法使いはまだ倒れている。
俺は一度だけ後ろを振り返り、息を整えると、覚悟を決めて緑水湖に飛び込んだ。
身体は熱くて痒いから、触られたら大嫌いな変態親父でも抵抗できずにいいようにされてしまいそうだ。想像しただけで吐きそう。
「魔力は無いが、魔法防御が高いというのは珍しい体質だね。君にはもう少し強い魔法が必要らしい」
魔法使いが両手に魔力を集める。
その魔力の渦がはっきりと見えて、恐怖に身体がすくんだ。
これをくらったら死ぬんじゃないだろうか。死ななくても終わりだ。こんな親父に抱かれたら、もうルーシェンに顔向け出来ない。
必死に腕に力を入れると、奇跡的にロープが外れた。
だけど次の瞬間、魔法使いの魔力が稲妻のように襲いかかってくる。咄嗟に両手で顔をガードした。
……え?
覚悟した痛みが襲ってこない。
目を開けると、稲妻はらせんを描くように収束し、俺の手の甲に集まっている。そして吸い込まれるようにして消えた。
「何だと……?お前……今、何をした?」
驚いたのは俺だけじゃなかったらしい。魔法使いが俺を凝視している。それまでの余裕のある話し方が一変し、表情が険しくなっている。
俺の手の甲は赤く光っていた。王妃様と面会した時と同じだ。魔法を吸収……したのか?
「その腕を見せなさい」
『嫌だ!こっちに来るな……!』
魔法使いが近づいてくる。
後ろは壁だ。逃げ場がない。魔法使いは片手で俺の手首を掴み、杖を振り上げた。
『うわぁ!離せ!』
振り払おうと力を入れる。
何かが弾けたような音がして、俺の手の甲から垂直に炎が立ち上った。魔法使いが炎に包まれる。
「ギャアア……!」
耳を塞ぎたくなるような悲鳴。そして爆発音が響いた。
***
しばらく意識を失っていたと思う。
ほんの数分かもしれないけど。風が吹き抜けるのを感じて体を起こすと、背後の壁に穴が開いていた。
目の前に魔法使いが倒れている。床には焦げたような跡があり、壊れた家具と壁の破片が散乱していた。
もしかして……死んだのか?俺が殺した?
怖くなって近寄ると、魔法使いは火傷を負って意識を失ってはいるものの、息はあった。自動的に回復するよう魔法がかけられているんだろう。じわじわと白い光に包まれていくのが見える。
ほっとしたと同時に焦りが生まれた。たとえこんな変態親父でも殺したり傷つけるのは嫌だから、回復してくれて助かった。けど、元気になるとこっちが困る。爆発音で部下が来てもまずい。早く逃げないと。
逃げようと思っても、扉にはきっと鍵がかかってるしその先には部下もいる。逃げ場は壁に開いた穴しかなさそうだった。
壁の先は緑水湖だ。水面からの高さは十メートル程度。この体で泳げるだろうか。深さは十分だろうか。考えている暇はない。
魔法使いはまだ倒れている。
俺は一度だけ後ろを振り返り、息を整えると、覚悟を決めて緑水湖に飛び込んだ。
17
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
【16+4話完結】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜
キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」
平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。
そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。
彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。
「お前だけが、俺の世界に色をくれた」
蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。
甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
最弱オレが、最強魔法騎士様のパートナーになった件
竜也りく
BL
「最悪だ……」
その日イールはめちゃくちゃ落ち込んでいた。
イールが通う魔術学校の卒業試験は制限時間72時間の中でどれだけ強い魔物を討伐できるかで審査される上、二人ひと組のチーム選だからだ。
入学してからこのかた常にダントツ最下位を取り続けてきたイールと組むなんて誰だってイヤだろうと思うと気が重いのに、パートナーを見てさらにため息を深くした。
イールのパートナーは、入学以来ダントツで首席な上に、代々騎士の家系に生まれたせいか剣の腕にも定評がある。その上人を寄せ付けない雰囲気ではあるものの顔もいいという、非の打ちどころのない完璧さを誇る男だった。
しかも彼はとんでもないSランクの魔物を仕留めるだなんて言いだして……。
生まれ変わったら知ってるモブだった
マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。
貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。
毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。
この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。
その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。
その瞬間に思い出したんだ。
僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる