好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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王妃様に弟子入り(婚約旅行編)

4 飛竜の島

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 屋外に設置されているテーブルと長椅子にルーシェンが腰掛けると、アークさんが大量の巻物と書類を荷物から取り出してテーブルにどっさりと置いた。あれをわざわざ持ってきたのか。

「王子、今日中にこちらに目を通してくださいね」
「ああ」

 アークさんは書類を置くと、俺の飛竜の専属トレーナーさんと一緒に何か話しながら遠くに見える屋敷に歩いて行った。
 俺に付いてきた従者達もそそくさと距離を取る。視界に入らない位置まで離れると、俺とルーシェンの近くにいるのはエストと太郎次郎だけになった。ルーシェンの白い飛竜のエストは床の上で、じゃれ合っている太郎と次郎を眺めている。
 エストは人間でいうなら若い女の子らしく、太郎と次郎を弟か子供のように扱っているらしい。ほとんどの場合は優しく見守っているけど、たまに二頭のいたずらの度が過ぎると判断した場合、首を咥えて投げ飛ばしたりしっぽでなぎ払ったりする。
 竜のじゃれ合い……迫力があっていいな。
 ちなみに飛竜も個体によって性格や能力にかなりの差があるらしい。エストは頭が良くて勇敢で能力値が高く、他の飛竜達からももてるらしい。やっぱり白いからか。それとも王子を乗せているからかな。
 太郎と次郎は、まだ子供だから何とも言えないけど、太郎は元気いっぱいでちょっと馬鹿、次郎は負けず嫌いで、負けるとすぐに落ち込むタイプみたいだ。どっちも可愛い。

 長椅子に座って巻物と書類に目を通すルーシェン。
 目を通した後、持っているペンで文字を書き加えたり、巻物に書かれた魔方陣と呪文に微量の魔力を使ったりしてる。
 ずっと見ていたいけど邪魔かな。

『何か手伝えることないですか?』
「いや、シュウヘイは勉強の続きをしてくれて構わない」
『そうですか』

 量が多そうだから手伝おうと思ったけど、ルーシェンしかチェック出来ない書類なのかもな。邪魔しちゃ悪いから離れようとしたら、止められた。

「何処へ行く」
『邪魔みたいなのであっちで勉強しようかと』
「何のために書類をここへ持ってきたと思っているんだ」
『え?……気分転換とか?』
「いいから座れ」

 隣に座ると、ルーシェンが当然のように腰に手を回してきた。
 そのまま髪と頬と首筋にキスされて、嬉しいけど困惑する。まさかここで何かするわけじゃないよな。確かにここ数日ずっとルーシェンは忙しくて、朝俺が起きたときにはいないし、帰りも俺が寝た後で戻って来るような状態だ。帰るまで待っていようかと思うけど、つい熟睡してしまうんだよな。夜中にルーシェンに気づいても、起こすの悪いし。だから少しだけ欲求不満だ。だからといって、昼間から屋外でっていうのはいくら俺でもちょっと抵抗があるけど。

『あの、書類はいいんですか?』
「たいした書類じゃない」

 重要じゃない書類ってあるのか?
 そう思っていると俺の心臓の辺りにルーシェンが手を当てた。

「シュウヘイ……あと数日中には全て終わりそうだ」

 俺の胸、ちょうど心臓のあたりには、小さな火傷の跡みたいな魔法の痕跡が残っている。これは婚約式の日に、魔法使いの変態親父に何度か魔法攻撃を受けた跡なのだ。治療師に見せても完全に綺麗にはならなかった。
ルーシェンは初めてそれを見た夜に、こっちがびっくりするくらい激怒した。ルーシェンは優秀な魔法使いだから、傷跡を見ただけで受けた魔法の種類だとかそういう事を理解したんだと思う。
 後で治療師のお姉さんに聞いたら、心臓に直接死なない程度の魔法を撃つのはかなりきつい拷問の一種らしい。確かにあの時は死ぬかと思ったもんな。

『襲撃事件の事ですか?』
「ああ」

 どうなったか聞いた方がいいんだろうか。聞きたいけど、怖いような気もする。でもやっぱり聞いた方がいいのかな。

『王子様を騙したら、やっぱり重罪ですよね』
「主犯の四人は島送りだな。それぞれ別の島になるが。一族は国外追放で財産は没収だ。シュウヘイが二度と嫌な思いをしなくてすむように、あの屋敷は解体して更地にする」

 島送り……って江戸時代か。
 もっと斬首とかそんな感じかとおもったけど、そういえばラキ王国でそういう話を聞いたことがない。

『奴隷だった人達はどうなったんですか?』
「今は治療部屋にいるが、その後は身元を確認して故郷に帰すようになるな」
『そうですか……なにか私に出来ることはないですか?』
「大丈夫だ。シュウヘイが心配することはない」

 ルーシェンはそう言ったけど、これは別の誰かに聞いてみる必要があるな。
 ついでにラキ王国の法律も勉強しよう。知らないことだらけで王太子妃として恥ずかしい。こんな事じゃルーシェンのフォローも出来ないからな。
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