84 / 209
王妃様に弟子入り(婚約旅行編)
6 まさか、俺の話じゃないよな
しおりを挟む
ルーシェンを待っているつもりだったのに、ベッドに入ったらすぐに眠ってしまったらしい。
らしいというのは、ベッドに入ってからの記憶がないからだ。次に起きたのは夜中で、突然何かの重圧を感じたせいだ。
うわ……!
何がおきたのかと思ってベッドの上に飛び起きたら、真上にシロがいた。
やけにハッキリと見える。それもルーシェンが寝室に張り巡らせている魔法のすぐ上を、まるでトランポリンの上で跳ねるように飛行して遊んでいる。
何だ……シロか。びっくりした。
隣を見てもルーシェンはいなかった。
まだ仕事をしているんだろうか。今日は早く帰るって言ってたのにな。
下の階に降りていって水とか夜食をもらおうか悩む。身分が低ければ何てことのない行動だけど、今の立場でそれをやると侍女達が大騒ぎする。誰かは必ず起きているけど、眠れる立場の侍女達まで起こすのは申し訳ないような気がするし、我慢しようか考えていたら下の方で声がした。
ルーシェンだ。多分帰ってきたんだな。
裸はまずいから脱いだ服を着て、びっくりさせてやろうとこっそり寝室を抜け出す。ついでに夜食ももらおう。
階段の陰に隠れて下を見ると、ルーシェンとフィオネさんが話をしている所だった。
ルーシェンはお風呂からあがった後みたいで、髪が少し濡れている。フィオネさんが渡す寝間着と呼ぶには高級すぎる青い衣装に着替えていたけど、格好良すぎて見とれてしまうな。いまだに王子と婚約してるなんて信じられない。
ニヤニヤしながら何て声をかけようか悩んでいると、二人の会話が聞こえてきた。
「……ミサキ様はすでにおやすみになられております」
「そうか。何か変わったことはないか」
「ここ数日は、安静に過ごされております」
風邪引いてる訳でもないのに、二人とも心配性だなぁ。
「治療師の話では、出来るだけ早いうちに薬を飲ませた方が良いとのこと」
「……そうか」
ん?薬?
薬ってなんの話だ?
「魔法治療ではやはり心臓への負荷がかかるようです。発作を起こす可能性も低くはありません。薬が一番良いのですが今はどこの国も、有能な薬師ですら取り扱ってはいないようです」
「だろうな。素材が貴重すぎる」
ルーシェンは重いため息をついた。
嫌な予感がする。まさか俺の事を話してるんじゃないよな。
「ですが、王子ならきっと手に入れられると信じております。各地を巡る行程も素材集めを見越して組んでおりますから」
「さすがフィオネだな」
「あまり安静にさせておくと、いつか、ミサキ様が飛び出していくのではないかと心配なのです。あの方は王子より無鉄砲ですから」
俺は黙って寝室に戻り、ベッドにもぐり込んだ。
今の話、やっぱり俺の話だろうか。
心臓?
発作?
服の隙間から手を入れて、心臓のあたりを撫でる。そこにはファンクラブ男の変態親父に魔法攻撃を受けた胸の傷跡がある。
でも、今は何ともないのに。痛くもないし、心臓が止まりそうになったこともない。だからきっと俺のことじゃないと思いたいのに。
暗い中ぐるぐると考えていると、ルーシェンの足音が聞こえてきて、俺は思わず息を潜めて寝たふりをした。
「シュウヘイ……」
ルーシェンがベッドに膝を付いて、俺の髪を撫でる。目を閉じたままされるがままになっていると、ふわりと柔らかいルーシェンの魔法の力に包まれた。隣に横になって体重がかからないように俺を抱きしめてくれる。
体重をかけてもいいのに。体温と重さを感じるのも好きなんだから。それから唇にキスされたから、もう寝たフリが出来なくなって、ルーシェンの深い口づけを受け入れる。
「……すまない。起こしてしまったな」
『帰ってくるの、遅いです』
「シュウヘイにはいつも怒られてばかりだ」
『あまり忙しいと身体を壊します』
「そうだな。気をつけるよ」
ルーシェンはもう一度俺にキスをすると、俺の心臓の傷跡を撫でた。
「シュウヘイ、ずっと俺のそばにいてくれ」
『……もちろん、ずっといます』
「そうか……良かった。おやすみ、シュウヘイ」
すぐに隣で規則正しい寝息を立て始めたルーシェンを見つめながら、もしかして、ルーシェンがここ最近ろくに帰ってこなくて、あまりイチャイチャしていないのは俺の身体を心配してわざとそうしているんだろうか、とそんなことを考えた。
らしいというのは、ベッドに入ってからの記憶がないからだ。次に起きたのは夜中で、突然何かの重圧を感じたせいだ。
うわ……!
何がおきたのかと思ってベッドの上に飛び起きたら、真上にシロがいた。
やけにハッキリと見える。それもルーシェンが寝室に張り巡らせている魔法のすぐ上を、まるでトランポリンの上で跳ねるように飛行して遊んでいる。
何だ……シロか。びっくりした。
隣を見てもルーシェンはいなかった。
まだ仕事をしているんだろうか。今日は早く帰るって言ってたのにな。
下の階に降りていって水とか夜食をもらおうか悩む。身分が低ければ何てことのない行動だけど、今の立場でそれをやると侍女達が大騒ぎする。誰かは必ず起きているけど、眠れる立場の侍女達まで起こすのは申し訳ないような気がするし、我慢しようか考えていたら下の方で声がした。
ルーシェンだ。多分帰ってきたんだな。
裸はまずいから脱いだ服を着て、びっくりさせてやろうとこっそり寝室を抜け出す。ついでに夜食ももらおう。
階段の陰に隠れて下を見ると、ルーシェンとフィオネさんが話をしている所だった。
ルーシェンはお風呂からあがった後みたいで、髪が少し濡れている。フィオネさんが渡す寝間着と呼ぶには高級すぎる青い衣装に着替えていたけど、格好良すぎて見とれてしまうな。いまだに王子と婚約してるなんて信じられない。
ニヤニヤしながら何て声をかけようか悩んでいると、二人の会話が聞こえてきた。
「……ミサキ様はすでにおやすみになられております」
「そうか。何か変わったことはないか」
「ここ数日は、安静に過ごされております」
風邪引いてる訳でもないのに、二人とも心配性だなぁ。
「治療師の話では、出来るだけ早いうちに薬を飲ませた方が良いとのこと」
「……そうか」
ん?薬?
薬ってなんの話だ?
「魔法治療ではやはり心臓への負荷がかかるようです。発作を起こす可能性も低くはありません。薬が一番良いのですが今はどこの国も、有能な薬師ですら取り扱ってはいないようです」
「だろうな。素材が貴重すぎる」
ルーシェンは重いため息をついた。
嫌な予感がする。まさか俺の事を話してるんじゃないよな。
「ですが、王子ならきっと手に入れられると信じております。各地を巡る行程も素材集めを見越して組んでおりますから」
「さすがフィオネだな」
「あまり安静にさせておくと、いつか、ミサキ様が飛び出していくのではないかと心配なのです。あの方は王子より無鉄砲ですから」
俺は黙って寝室に戻り、ベッドにもぐり込んだ。
今の話、やっぱり俺の話だろうか。
心臓?
発作?
服の隙間から手を入れて、心臓のあたりを撫でる。そこにはファンクラブ男の変態親父に魔法攻撃を受けた胸の傷跡がある。
でも、今は何ともないのに。痛くもないし、心臓が止まりそうになったこともない。だからきっと俺のことじゃないと思いたいのに。
暗い中ぐるぐると考えていると、ルーシェンの足音が聞こえてきて、俺は思わず息を潜めて寝たふりをした。
「シュウヘイ……」
ルーシェンがベッドに膝を付いて、俺の髪を撫でる。目を閉じたままされるがままになっていると、ふわりと柔らかいルーシェンの魔法の力に包まれた。隣に横になって体重がかからないように俺を抱きしめてくれる。
体重をかけてもいいのに。体温と重さを感じるのも好きなんだから。それから唇にキスされたから、もう寝たフリが出来なくなって、ルーシェンの深い口づけを受け入れる。
「……すまない。起こしてしまったな」
『帰ってくるの、遅いです』
「シュウヘイにはいつも怒られてばかりだ」
『あまり忙しいと身体を壊します』
「そうだな。気をつけるよ」
ルーシェンはもう一度俺にキスをすると、俺の心臓の傷跡を撫でた。
「シュウヘイ、ずっと俺のそばにいてくれ」
『……もちろん、ずっといます』
「そうか……良かった。おやすみ、シュウヘイ」
すぐに隣で規則正しい寝息を立て始めたルーシェンを見つめながら、もしかして、ルーシェンがここ最近ろくに帰ってこなくて、あまりイチャイチャしていないのは俺の身体を心配してわざとそうしているんだろうか、とそんなことを考えた。
7
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜
せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。
しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……?
「お前が産んだ、俺の子供だ」
いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!?
クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに?
一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士
※一応オメガバース設定をお借りしています
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
【16+4話完結】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜
キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」
平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。
そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。
彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。
「お前だけが、俺の世界に色をくれた」
蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。
甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる