好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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王妃様に弟子入り(婚約旅行編)

10 旅行の準備

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 飛行船という名の浮島を見学した後、俺は一度王宮のプライベートゾーンに戻る事にした。
 ちなみにルーシェンはこれから王様と会って、旅行についてだったり政治的なあれこれだったりを話し合うらしい。俺も夕方の食事会から合流だ。パーティー会場や婚約式で何度か会ってるけど、いまだに王様とはあまり会話した事がない。初対面で雰囲気に飲まれそうになって以来、なんとなく苦手だ。ルーシェンの父ちゃんなんだけどな。

 出発は明日の午後だから、それまでにその場に集合していた部下や従者たちは衣装や装飾品、食料なんかを船に積み込むらしい。
 食事会まで暇だから、手伝おうとしたらバッサリと断られた。
「王太子妃様にそのような事を頼むなど考えられません」
『大丈夫です。何か手伝います』
「大丈夫ではありません。私達が王子様に叱られてしまいます」
と必死に頭を下げられるので、仕方なく王宮のプライベートゾーンに戻ることにしたのだ。何か手伝いたかったな。俺の旅行だし。

『ポリム、帰って荷造りしましょうか』
「そうしましょう」

 ポリムは俺の専属侍女で、目が大きくて髪がふわふわした、とても可愛い女性だ。噂話と可愛い物が大好きで、俺を飾り付けるのも好きだし、お風呂に入れる薬草なんかにも凝っている。いろんな事をやりすぎるらしく、よくフィオネさんに怒られている。たしかにフィオネさんとはタイプが真逆だ。

「王妃様の故郷の国に立ち寄るなんて初めてですわね」
『故郷の国ってどこですか?』
「雲の谷ですわ。独特の魔法文化があるんですって」

 雲の谷か。確か三番目に立ち寄る場所だったよな。最初が赤砂の街で、次が黄葉樹の都、それから雲の谷と白の都、寄れたら桃花村だったよな。

「さすがは王子様、ミサキ様の身体の事をちゃんと考えてるんですわ。赤砂の街は砂漠に近いですし、黄葉樹の村は……」
「ポリム、余計な事を喋るんじゃありません」
「あ、申し訳ありません。フィオネ様」

 フィオネさんに怒られてポリムはしゅんとしてしまった。でも、今の話すごく気になる。ポリムに後でこっそり聞いてみよう。

***

 プライベートゾーンに戻ってくると、みんなが俺のキラキラ衣装や装飾品をケースに入れては運び出していた。ポリムもよくわからない香料や化粧品を箱に詰めている。
 俺も勝手に自分の持って行きたい物をキャリーバッグに詰める事にした。まずパジャマ代わりの(最近着ていないが)スウェット上下と、Tシャツとジーンズ。それにインスタントラーメンと味噌と梅干しと、日本のお菓子。パーティー続きだと日本の味が恋しくなるに決まってるし、毎日堅苦しい衣装だと息がつまるからな。後は、異世界のあれこれを勉強したノートも持って行こう。

「ミサキ様、そちらも運ぶのですか?」
『お願いします』

 侍従に頼んでキャリーバッグも船に積んでもらうように頼むと、夕食まで庭園を散歩する。


「いよいよ旅行ですわね。私もとっても楽しみです」

 自分の仕事を終えたポリムが話しかけてきたので、気になった事を聞いてみる。

『あの、さっきポリムはルーシェンが私の身体の事を考えて街を選んだっていってましたけど、どういう意味ですか?』

 ポリムは一瞬困った表情を浮かべたけど、周りに誰もいないので教えてくれた。

「王子様はミサキ様の身体のために、薬草の素材集めをなさるつもりなのですわ」
『素材集め?』
「はい。赤砂の街の近くには砂漠がありまして、そこに貴重な薬の原料があるとか。黄葉樹の街には黄金の樹木の樹液がありますし、他にもいろいろと……」
『それは何の薬なんですか?』
「万能薬だったと思いますわ。王子様は、ミサキ様にプレゼントして驚かせるおつもりなのです。私がうっかり口を滑らせてしまいましたけど」

 万能薬……なるほど。
 少しだけすっきりした。きっと胸の傷跡を治せるような薬なんだろう。

「王子様は本当にミサキ様にお優しいですわね。私もお二人に仕えることができて幸せですわ」
『ありがとうございます』
「お二人にお仕えできたおかげで、色々な都市を訪問できるんですもの。楽しみで仕方ありません。きっと美味しい物がたくさん食べられますわ。それに可愛らしい物もたくさんありそうですわね。私ミサキ様に似合うお土産を探しますね」

 ポリムは本当に嬉しそうだ。
 俺も旅行は楽しみだけど、どうせ大勢で行くならみんなが楽しんでくれた方がいい。

 はしゃぐポリムと一緒に、俺の大好きな王都が一望できる見晴らしのいい場所まで歩く。今日も緑水湖は綺麗だし、王都は賑やかだ。旅行から帰ってくるまでこの景色も見納めかと思うと少し寂しいな。

 ふと、離れの方が気になって視線を向けると、いつものように階段下に侍女ゾンビ……もとい妖精さんが佇んでいた。
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