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新婚旅行
10 侍女の夢
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「ロベルトには一度だけ婚約を反対された事がある」
俺が思い出していたのと同じ事をルーシェンが口にした。
「魔物の討伐に行っていた時に、婚約はやめた方がいいと。今まで何があっても一度も俺に反対意見を言ったことは無かったから正直驚いたな」
その話、隣で聞いてましたと言ったら、ルーシェンはどんな顔をするだろうか。
『ロベルトさんの意見を聞いて、結婚やめようって思わなかったんですか?』
「シュウヘイには申し訳ないが、微塵も思わなかった。扉に魔法がかけられていたり、婚約式でシュウヘイが襲われたというのに今でもその意思は変わらない。ひどい男だな、俺は」
ルーシェンはそういうと、俺にすり寄って頭に頬をくっつけた。こういう所可愛いな。
『全然ひどくないです。私もルーシェンと結婚したかったので、誰かに反対されても気にしません』
慰めて欲しそうだから腕を回して背中を撫でる。妖精さんがいないから自由に触れて最高だ。
「シュウヘイが強いのは知っているが、それでも心配なんだ。ユウレイもそうだし、心臓の事もある。どうしても……辛い事が続くようなら、王位継承権を誰かに譲る事も考えている。王宮から離れて田舎の城で二人で暮らそう」
隠居しても城生活なのか。さすが王子様だな。
『それも楽しそうですけど、今は大丈夫です。幽霊もいなくなりましたし、みんな良くしてくれます。私が変な婚約者でも、そのうち慣れてくれると思います』
そういうとルーシェンは笑った。
「そういえばアークが、ロベルトはシュウヘイの事が好きで、嫉妬から反対しているだけだと言っていたな」
『ええ!? それは無いです。嫌われてますから』
むしろロベルトさんが好きなのはルーシェンなんじゃないだろうか。それなら納得できるんだけど。
「だからあいつは分かりにくいんだ。本人は認めたがらないが、好みは父親と同じだからな」
『部長ですか?』
「そうだ。あの部長は父上と同じく、自分より背が低くて痩せていて可愛いタイプに弱い。異国的な顔立ちの人間も好みだ。ロベルトもそうだと思う」
ルーシェンがロベルトさんや部長や父親の好みを把握しているのがおかしくて、思わず笑ってしまった。
それから二人でくっついて、眠りに落ちるまで他愛ない話をした。
***
その日の夜、夢を見た。
夢の中で俺は侍女になってた。
鏡の中に映る自分は、誰が見ても美しくて、美貌を褒められながらそれを当然と思って生きてきた。
ある日、王子様付きの侍女になれるチャンスがやっと巡ってきて、家族にも友人にもとても羨ましがられた。
今よりずっと若いフィオネさんが侍女頭として、仕事について教えてくれる。
本当はルーシェンの身の回りの世話がしたかったけど、それは格が高い侍女の仕事で、回ってきた仕事はプライベートスペースの周辺の掃除や雑用全般だった。
それでもその任務につけた事が誇らしくてたまらない。
夢の中の侍女も、毎日ここをルーシェンが歩くかもしれないとドキドキしながら掃除をしていた。
たまに遠くを歩く王子の姿が見えると興奮で仕事が手につかず、フィオネさんや先輩の侍女達に怒られる日々。
夢で見るルーシェンは、今よりずっと若い。多分中学生くらいかな。
髪が今より長くて、やっぱり頭の後ろで結んでる。若くても昔からかっこ良かったんだな。惚れ惚れしながらチラ見していたけど、隣にはいつも同じ男がいて、正直それが気になって仕方がなかった。
アークさんでもロベルトさんでもない。
飛行部隊にもいない。プライベートエリアの護衛にもいなかった。
彼はルーシェンより少し年上で、飛行部隊の青いマントを身につけている。痩せていて背が高く、常に柔和な笑みを浮かべていた。
「あの方はどなたなんですか?」
夢の中の侍女が仲間に聞くと、王子様の専属の護衛だと聞かされた。名前はジェイド。とても優秀な兵士で、王子様はその護衛を心から信頼しているそうなのだ。
心から信頼……?
不安な気持ちになりながらも二人の姿を見守りながら任務に励む。
事件が起きたのはそれからすぐの事だった。
俺が思い出していたのと同じ事をルーシェンが口にした。
「魔物の討伐に行っていた時に、婚約はやめた方がいいと。今まで何があっても一度も俺に反対意見を言ったことは無かったから正直驚いたな」
その話、隣で聞いてましたと言ったら、ルーシェンはどんな顔をするだろうか。
『ロベルトさんの意見を聞いて、結婚やめようって思わなかったんですか?』
「シュウヘイには申し訳ないが、微塵も思わなかった。扉に魔法がかけられていたり、婚約式でシュウヘイが襲われたというのに今でもその意思は変わらない。ひどい男だな、俺は」
ルーシェンはそういうと、俺にすり寄って頭に頬をくっつけた。こういう所可愛いな。
『全然ひどくないです。私もルーシェンと結婚したかったので、誰かに反対されても気にしません』
慰めて欲しそうだから腕を回して背中を撫でる。妖精さんがいないから自由に触れて最高だ。
「シュウヘイが強いのは知っているが、それでも心配なんだ。ユウレイもそうだし、心臓の事もある。どうしても……辛い事が続くようなら、王位継承権を誰かに譲る事も考えている。王宮から離れて田舎の城で二人で暮らそう」
隠居しても城生活なのか。さすが王子様だな。
『それも楽しそうですけど、今は大丈夫です。幽霊もいなくなりましたし、みんな良くしてくれます。私が変な婚約者でも、そのうち慣れてくれると思います』
そういうとルーシェンは笑った。
「そういえばアークが、ロベルトはシュウヘイの事が好きで、嫉妬から反対しているだけだと言っていたな」
『ええ!? それは無いです。嫌われてますから』
むしろロベルトさんが好きなのはルーシェンなんじゃないだろうか。それなら納得できるんだけど。
「だからあいつは分かりにくいんだ。本人は認めたがらないが、好みは父親と同じだからな」
『部長ですか?』
「そうだ。あの部長は父上と同じく、自分より背が低くて痩せていて可愛いタイプに弱い。異国的な顔立ちの人間も好みだ。ロベルトもそうだと思う」
ルーシェンがロベルトさんや部長や父親の好みを把握しているのがおかしくて、思わず笑ってしまった。
それから二人でくっついて、眠りに落ちるまで他愛ない話をした。
***
その日の夜、夢を見た。
夢の中で俺は侍女になってた。
鏡の中に映る自分は、誰が見ても美しくて、美貌を褒められながらそれを当然と思って生きてきた。
ある日、王子様付きの侍女になれるチャンスがやっと巡ってきて、家族にも友人にもとても羨ましがられた。
今よりずっと若いフィオネさんが侍女頭として、仕事について教えてくれる。
本当はルーシェンの身の回りの世話がしたかったけど、それは格が高い侍女の仕事で、回ってきた仕事はプライベートスペースの周辺の掃除や雑用全般だった。
それでもその任務につけた事が誇らしくてたまらない。
夢の中の侍女も、毎日ここをルーシェンが歩くかもしれないとドキドキしながら掃除をしていた。
たまに遠くを歩く王子の姿が見えると興奮で仕事が手につかず、フィオネさんや先輩の侍女達に怒られる日々。
夢で見るルーシェンは、今よりずっと若い。多分中学生くらいかな。
髪が今より長くて、やっぱり頭の後ろで結んでる。若くても昔からかっこ良かったんだな。惚れ惚れしながらチラ見していたけど、隣にはいつも同じ男がいて、正直それが気になって仕方がなかった。
アークさんでもロベルトさんでもない。
飛行部隊にもいない。プライベートエリアの護衛にもいなかった。
彼はルーシェンより少し年上で、飛行部隊の青いマントを身につけている。痩せていて背が高く、常に柔和な笑みを浮かべていた。
「あの方はどなたなんですか?」
夢の中の侍女が仲間に聞くと、王子様の専属の護衛だと聞かされた。名前はジェイド。とても優秀な兵士で、王子様はその護衛を心から信頼しているそうなのだ。
心から信頼……?
不安な気持ちになりながらも二人の姿を見守りながら任務に励む。
事件が起きたのはそれからすぐの事だった。
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