好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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2 心配するな

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 遅れて参加した朝食の席に飛行部隊の隊員はいなかった。
 すでに武器や食料を浮島に積んだり、近隣の村へ情報を伝達しに向かったらしい。
 俺たちがイチャイチャしている間にみんな仕事してたんだな。ちょっと申し訳ないような気持ちになる。

 朝食の時間に領主夫妻やその子供達、有力商人や貴族にくれぐれも赤砂の街に被害が出ないように頼みますとお願いされ、さすがの俺でもせっかくの食事がそんなに喉を通らなかった。
 ルーシェンは平然とした態度で、武器や資金、食料の調達に協力するように念押ししている。長年王子様をやっていると、誰かにあれこれお願いされるなんて日常茶飯事なんだろうな。ついでに命令を出すことにも慣れていて感心してしまう。

 食事が終わるとお別れを言って、赤砂の街を出る。散らかした部屋の荷物は食事の時間に赤砂の街の侍女達がすっかりきれいにまとめてくれていた。

『お世話になりました。ありがとうございました』

 お礼を言うと、侍女達はそそくさとどこかへ行ってしまった。汚れたシーツとか洗濯させたから怒ってるのかと思ったら、ポリムに怒られた。

「ミサキ様、あの者達はミサキ様のことを平凡だとか言っていた者達ですよ。お礼なんて言う必要ありません」

『でもお世話になったので』

「身分が下なのですから働いて当然ですわ。ミサキ様をお世話する事が出来て感動して欲しいくらいですのに生意気すぎます」

『まあまあ。ポリム、怒らないでください』

 なんとかポリムをなだめて領主の館を出ると、ルーシェンがフィオネさんと少人数の護衛と一緒に待っていた。角馬に乗って赤砂の街の門まで移動する。
 到着した時に歓迎してくれた大勢の赤砂の街の人々が、今度も見送ってくれた。
 大部分は領主夫妻と同じ、魔物から街を守ってくださいとか花粉をなんとかしてくださいというお願いを口にしていたけど。

 浮島に戻ると、島で待機していた皆が俺とルーシェンを出迎えてくれた。
 庭にいるはずの飛竜の数が少ない。飛行部隊の隊員の半分以上が砦に先に行っていたり近隣の村に避難を呼びかけに向かっているという話だった。

『飛竜は花粉は平気なんですか?』

 心配していた事を聞くと、ルーシェンが俺の手を握ってくれた。

「心配するな。予防薬を飲ませて、騎乗する者が魔法防御をかけている。通常の魔物より花粉には強いはずだ」

 その言い方でなんとなく気づいてしまった。飛竜もきっと例外なく花粉に弱い。凶暴化してしまったら救えないんだ。何頭も育ててきたルーシェンや飛行部隊の方が、俺よりずっと不安なはずだ。

「子供やまだ若い飛竜はトレーナー達と一緒に雲の谷へ避難させる。シュウヘイ、飛竜をよろしく頼む」

『分かりました』

 俺はそう言ってルーシェンの手を握り返した。しっかりしよう。みんなが育てた飛竜は俺が守らなきゃ。


***

 浮島に残っていたみんなに、ルーシェンが今後の行動予定を告げる。
 砦に残る人たちと、雲の谷に向かう人はすでに決まっていて、みんなが思い詰めたような顔をしていた。

『ジョシュ』

 料理班にジョシュがいたので声をかける。

「おはようございます。ミサキ様」

 ジョシュはみんなの手前、正式な挨拶をして、ちょっと心配そうな顔を向けてきた。

『ジョシュは雲の谷に来るんですか?』
「はい。僕はミサキ様付きの料理人なので……」
『良かったです。ジョシュが一緒で』
「でもミサキ様、王子様と離れるなんて心配ですね」

 ジョシュがそう言うので、なんだか込み上げるものがあってジョシュに飛びついた。

『ジョシュ~!』
「み、ミサキ君……みんな見てるよ! 王子様とか」

 ジョシュがひそひそ声で静止する。ジョシュ柔らかいなぁ。

「なんか、ミサキ君王子様の匂いがする……。エロい、エロいよ」

 エロいのはジョシュの頭の中のような気がしたけど、確かにルーシェンとフィオネさんの視線を感じたので抱きつくのはやめた。
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