好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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雲の谷へ

5 落下

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 ガタガタとした揺れが一段と激しくなり、ベッドから離れることも出来ずに布団にしがみつく。遠くで悲鳴や叫び声が聞こえる。それと同時に複数の足音と声が近づいて来た。

「ミサキ様! ご無事ですか⁉︎」
『ポリム! 譲二さん!』

 部屋の扉が勢いよく開いて、二人が飛び込んできた。

『一体何が……』

「ミサキ様! 非常事態ですので無礼をお許し下さい!」

 言うなり譲二さんがベッドに飛び乗って来て、シーツとマントにくるまった俺を背後から抱きしめる。
 その瞬間、例えるなら飛行機で雷雲に突っ込んだ時のような衝撃と、ストンとした浮遊感に包まれた。そう、ジェットコースターでてっぺんから落下するときのような無重力状態のあれ。
 浮島がすごい勢いで落下してる。光る石の瓶が転がり、部屋の中は揺れる光と闇と轟音で何が起きているか分からない。

「うわわわわ!」
「ミサキ様! 舌を噛みますので叫びませんよう!」
「でも!」

 急に落下の速度が低下した。それでも数秒後にすごい音がしてベッドごと床に叩きつけられる。

 止まった。

「いててて……」

 譲二さんが抱きしめてくれたおかげで、たいした怪我もなくすんだ。ベッドの上に落ちたことも大きい。

「失礼いたしました。ご無事ですか……?」
『あっ、はい』

 譲二さんが俺から離れた。任務とはいえ抱きしめられてちょっとドキドキしたぞ。落下も怖かった。心臓の痛みはいつの間にかおさまってる。

『ポリム! 無事ですか⁉︎』

 真っ暗な部屋がぽわんと光に包まれる。
 ポリムが手のひらの上に丸い光の球を魔法で出現させていた。

「私なら防御魔法をかけていましたので大丈夫ですわ。ミサキ様がご無事で良かったです! ジョージ様、どこか怪我があれば回復いたしますけど」

「俺も大丈夫だ」

 譲二さんはそう言ったけど、ベッドの周りには雑貨や家具が散乱していた。譲二さんのおかげで俺には何一つ当たらなかったけど、譲二さんは痛かったんじゃないだろうか。

「飛行部隊ですもの。防御魔法がなくてもミサキ様を守れて当然ですわね」

 なんだかポリム、譲二さんに厳しいな。譲二さん、俺が魔法厳禁だから防御魔法唱えなかったのか。悪いことをした。

「ミサキ様、立てますか? ここを出て、状況を確認しましょう」
『はい』

 なんで急に浮島が落下したんだろう。他にも悲鳴が聞こえたような気がしたけど、みんな無事か心配だ。

 部屋は散乱した家具でめちゃくちゃになったけど、下に行けば俺のいた地下三階は一番マシだということが分かった。

 浮島は垂直に落下したらしく、下に行くほど建物の崩壊がひどい。森の中に落ちたため、浮島の一番底の部分は大木の枝や岩にぶつかって大きな穴があいていた。

 穴の周りにロベルト隊長がいて、飛行部隊に怒号を飛ばしている。俺に気づくと膝を着いて頭を下げた。

「ミサキ様、ご無事で何よりです。このような事になり誠に申し訳ありません……」

 頭を下げたロベルトさんの身体から今まで見たことのないような本気のオーラが立ち上って、ちょっとだけそれに圧倒された。これは多分本当に申し訳ないと思ってるし、あとめちゃくちゃ怒ってる。部下じゃなくて良かった。

『ロベルトさん、どうして浮島が落下したんでしょうか。被害はどんな状況ですか? 何か問題があれば教えてください。今後のことも話し合いたいです』

 ロベルトさんは気分を立て直し立ち上がった。

「負傷者は多数ですが、死人は出ていません。森の中に食糧や武器が散乱したので、現在飛行部隊に回収させております。幸い近くに大型の魔物はいないようです。回復魔法が使える者は大部屋で負傷者の治療に当たっております」

 なるほど。ロベルトさんの話を聞く限り、想像したより被害は少なそうだ。でも、過去何度か聞いたロベルトさんの報告より、現実の方がいつも深刻だった気がする。だから気を引き締めないと。

「ミサキ様、こちらでしたか」

 如月がやって来て軽く頭を下げる。如月のオーラはロベルトさんほどじゃない。如月はいつも冷静だな。

「動力部にいらしてください。落下の原因をお話しいたします」




 
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