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帰還
9 甘いですよ、ミサキさん
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小型の飛行船に戻ると、如月がインスタントコーヒーをいれてくれた。
「これって日本製?」
「そうです。前回日本に行っていた友人からのお土産です。私は紅茶を頼んだんですけどね」
「俺にもくれよ」
「ミサキさんがコーヒーを飲むイメージはなかったですね。お好きなんですか?」
「日本にいた頃はあまり飲まなかったけど、今は日本の味はなんでも恋しい。日本語のパッケージも見るだけで癒される」
「こちらの世界はミサキさんから見ればすべて異世界の言葉になりますからね。お茶菓子もどうぞ。これは日本製ではありませんが」
マグカップに注がれたブラックコーヒーを飲みながら、こっちの世界のクッキーみたいなお菓子をかじる。ちょっとだけ落ち着いた。
「そういえば夕食がまだでしたね。どなたかが呼びに来るでしょうから、お菓子はほどほどにしておきましょうか」
如月は設計図をテーブルの上に広げた。地図みたいに見える。
「転移魔法陣って、そうやって作るのか? 地図を見て設計図を描いてるなんて知らなかった」
「描いていませんよ」
「でも、設計図を作るって」
「あれは嘘です。設計図なんてなくても、王都への転移魔法陣くらいは即興で作れます」
「え? じゃ、それは?」
如月は眼鏡をくいっと指で押し上げた。
「これは砦の地図です。ミサキさんも何か気づかれているかもしれませんが、あの砦には何か大きな魔力の元があります。巧妙に隠されていますが、何かしらの魔法陣でしょう。それが王子をはじめとした状態異常の魔法の原因です」
「えっ……?」
状態異常は魔物の襲撃が原因じゃないのか?
「あのエルヴィンという男、なかなかの策士ですね。潜在魔力も報告よりずっと高いでしょう。おそらく砦で一番の魔法使いです。ただし、私を除けば、ですが」
「あいつヤバいよな! 誰も見えないから信じてもらえないと思うけど、オーラ真っ黒なんだぜ! すました顔してルーシェンを狙ってるんだ」
如月が理解してくれたので、つい興奮して愚痴ってしまった。
「あの噂話も、計画的に広めたのかもしれませんね」
「でも、ルーシェンのことは本当に好きみたいだったけど。回復魔法だって本当にかけてたし……。状態異常の魔法は違うんじゃないか?」
「甘いですよ、ミサキさん。私たちが兵士たちに挨拶回りをしている間、エルヴィンの姿が見えませんでした。私の予想が正しければ、私に勘づかれたと思い魔法陣を隠すか、威力を弱めに行ったと思われます。ですから王子や兵士たちの状態異常はこの先回復に向かうはずです」
「そんな……」
嫌なやつだとは思ってたけど、俺限定だと思ってたのに。
「相手に魔法をかけて苦しめてまで、恋人になりたいのか」
「王子の恋人は将来王妃になりますからね。子供を作って王位を継承させるつもりかもしれませんね。あともう一つ、いくらエルヴィンが優秀な魔法使いでも、私の方が上だと思います。ですが、私ですら王子に状態異常の魔法を複数かけるほどの魔力はありません。強い魔法アイテムが必要です」
「強い魔法アイテム?」
「そう。例えば浮島に使われるような魔法石などですね」
浮島に使われる魔法石って、それはつまりホレスがエルヴィンに協力したってことなのか……?
「気をつけてくださいね。相手は手段を選ばず王太子妃の座を狙って来ています。砦にいる間は単独行動は絶対に避けてください」
如月は鞄からパスケースみたいな物を取り出すと俺に手渡した。部屋のカードキーでも入っているのかと思って中を覗くと折り畳まれた紙が入っている。
「この紙には転移魔法陣が描かれています。私しか知らない避難場所に転移できますので、命の危険を感じた時は使ってください」
「……ありがとう」
「私は砦の地図をもとに、エルヴィンの魔法の痕跡を探ります。証拠があれば断罪しやすいですが、まだ憶測にすぎませんので、このことは飛行部隊や護衛の方にも内密にしてください」
「分かった。頼むよ、如月」
「これって日本製?」
「そうです。前回日本に行っていた友人からのお土産です。私は紅茶を頼んだんですけどね」
「俺にもくれよ」
「ミサキさんがコーヒーを飲むイメージはなかったですね。お好きなんですか?」
「日本にいた頃はあまり飲まなかったけど、今は日本の味はなんでも恋しい。日本語のパッケージも見るだけで癒される」
「こちらの世界はミサキさんから見ればすべて異世界の言葉になりますからね。お茶菓子もどうぞ。これは日本製ではありませんが」
マグカップに注がれたブラックコーヒーを飲みながら、こっちの世界のクッキーみたいなお菓子をかじる。ちょっとだけ落ち着いた。
「そういえば夕食がまだでしたね。どなたかが呼びに来るでしょうから、お菓子はほどほどにしておきましょうか」
如月は設計図をテーブルの上に広げた。地図みたいに見える。
「転移魔法陣って、そうやって作るのか? 地図を見て設計図を描いてるなんて知らなかった」
「描いていませんよ」
「でも、設計図を作るって」
「あれは嘘です。設計図なんてなくても、王都への転移魔法陣くらいは即興で作れます」
「え? じゃ、それは?」
如月は眼鏡をくいっと指で押し上げた。
「これは砦の地図です。ミサキさんも何か気づかれているかもしれませんが、あの砦には何か大きな魔力の元があります。巧妙に隠されていますが、何かしらの魔法陣でしょう。それが王子をはじめとした状態異常の魔法の原因です」
「えっ……?」
状態異常は魔物の襲撃が原因じゃないのか?
「あのエルヴィンという男、なかなかの策士ですね。潜在魔力も報告よりずっと高いでしょう。おそらく砦で一番の魔法使いです。ただし、私を除けば、ですが」
「あいつヤバいよな! 誰も見えないから信じてもらえないと思うけど、オーラ真っ黒なんだぜ! すました顔してルーシェンを狙ってるんだ」
如月が理解してくれたので、つい興奮して愚痴ってしまった。
「あの噂話も、計画的に広めたのかもしれませんね」
「でも、ルーシェンのことは本当に好きみたいだったけど。回復魔法だって本当にかけてたし……。状態異常の魔法は違うんじゃないか?」
「甘いですよ、ミサキさん。私たちが兵士たちに挨拶回りをしている間、エルヴィンの姿が見えませんでした。私の予想が正しければ、私に勘づかれたと思い魔法陣を隠すか、威力を弱めに行ったと思われます。ですから王子や兵士たちの状態異常はこの先回復に向かうはずです」
「そんな……」
嫌なやつだとは思ってたけど、俺限定だと思ってたのに。
「相手に魔法をかけて苦しめてまで、恋人になりたいのか」
「王子の恋人は将来王妃になりますからね。子供を作って王位を継承させるつもりかもしれませんね。あともう一つ、いくらエルヴィンが優秀な魔法使いでも、私の方が上だと思います。ですが、私ですら王子に状態異常の魔法を複数かけるほどの魔力はありません。強い魔法アイテムが必要です」
「強い魔法アイテム?」
「そう。例えば浮島に使われるような魔法石などですね」
浮島に使われる魔法石って、それはつまりホレスがエルヴィンに協力したってことなのか……?
「気をつけてくださいね。相手は手段を選ばず王太子妃の座を狙って来ています。砦にいる間は単独行動は絶対に避けてください」
如月は鞄からパスケースみたいな物を取り出すと俺に手渡した。部屋のカードキーでも入っているのかと思って中を覗くと折り畳まれた紙が入っている。
「この紙には転移魔法陣が描かれています。私しか知らない避難場所に転移できますので、命の危険を感じた時は使ってください」
「……ありがとう」
「私は砦の地図をもとに、エルヴィンの魔法の痕跡を探ります。証拠があれば断罪しやすいですが、まだ憶測にすぎませんので、このことは飛行部隊や護衛の方にも内密にしてください」
「分かった。頼むよ、如月」
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