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帰還
10 回復の聖獣
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「ミサキ様、こちらにいらっしゃったのですね。お食事の用意ができましたわ。それにお部屋のご用意も」
『ありがとう』
如月が想像したとおり、しばらくするとポリムが俺を呼びに来た。ちょっとだけ如月を見て頬を赤くしてる。如月はポリムの誘いを断り、飛行船で適当に食事をするというので、二人で砦に戻った。
『ルーシェンの様子はどうですか?』
「今は雲の谷のかたに回復を代わっていただきました。まだお目覚めにはなりません」
『そうですか……』
「お部屋でお食事をとったあと、ミサキ様の体調に問題がなければ、王子様と二人っきりで過ごせる時間を作りますから、元気出してくださいね。ハルバート様が転移魔法陣を作られると聞きましたから、それまでの辛抱です。一緒に王都に戻られたら、王子様もすぐにご回復なさって、また二人で仲良く過ごせますわ」
『そうですね』
たしかにポリムの言う通りなんだけど、なぜかそんなに上手く行くような気がしなかった。如月の話を聞いたせいかもしれない。ここまで周到に準備していたエルヴィンが、すんなりルーシェンを王都に帰すだろうか。
砦は相変わらずどんよりした空気に包まれていた。ルーシェンの部屋の前には飛行部隊の兵士が、隣の俺の部屋には譲二さんが立ってる。さっき会議に使った部屋は、ベッドや調度品が置かれて少しだけ豪華になっていた。
『ここ、フィオネさんが使ってたんですよね。フィオネさんの部屋はあるんですか?』
「私と同じ部屋です。フィオネ様が一緒だと緊張してしまいますわ。テレサがいるからまだ怒られませんけど」
フィオネさんの部屋を取り上げたから少し申し訳ない気がしていたけど、女の人ばかりでちょっとだけ楽しそうだな。
部屋で準備してもらった食事をとり、軽く身体を拭いて着替えをして、フィオネさんとポリムから健康チェックを受けて、ルーシェンの部屋に送り出してもらった。
「ミサキ様、王子様との面会は申し訳ありませんが短時間でお願いします。私たちは扉の外に控えておりますので、何か異変があればお呼びください」
『分かりました』
魔法の灯りがともるだけの部屋に入ると、やっぱり部屋中に魔力が充満していた。入っただけで息が詰まりそうだ。この部屋にいるせいで具合が悪くなるんじゃないかと思ってしまう。
「ルーシェン……」
ルーシェンは相変わらず眠っていた。シーツの中に手を入れて、少し冷たい手をゆっくりと握る。石化の魔法もかかってるらしいから、痛めないように細心の注意を払う。
「……如月が転移魔法陣を作ってくれるって言うから、一緒に王都に帰ろう」
あまり触るなと言われていたけど、誰もいないから、そっと唇にキスをした。体温が低い。いつもの金のオーラも青のオーラもすごく弱い。悲しくなってポロポロ涙が出た。涙が顔にかかったからあわてて指で拭う。こういう時、俺に魔法の力があったら、魔法にかかったルーシェンを口づけでもとに戻せるのに。俺が触ってもなんの変化もない。それどころか、回復魔法をかけられないから時間が経つと悪化するだけだ。
涙を拭いて気持ちを立て直す。しっかりしないとダメだ。如月の言ったことが本当だとしたら、ルーシェンをこんなに苦しめているエルヴィンが許せない。証拠を掴んだら、必ず左遷してやるからな。
決意を新たにしていると、身体がむずむずして思わず変な声が出そうになった。
こんな時なのにエロい気分になる自分が信じられなくて服の中を覗くと、下着の中から小さくなった大根の聖獣が出てきた。
「お前か……」
誰も見られなくて良かった。変な形のおもちゃを服にしのばせる変態なのかと思われるところだった。いや、こいつは誰にも見えないんだっけ。
「あ、そうだ」
こいつは変な見た目だけど、パワースポットにいる回復の聖獣だ。それならルーシェンにも効くんじゃないか? そう思って大根をつまみ、ルーシェンのベッドに移動させた。一緒についてきていた緑のふわふわは見当たらないから一匹だけ。
大根の聖獣はルーシェンの布団に潜り込んだ。気のせいかもしれないけど、ルーシェンの顔色が良くなった気がする。良かった。もっと早くこうすればよかったな。
「ルーシェンの下着には入るなよ」
小声で聖獣に伝えたけど、聞いてくれるのかな。でもムズムズしているルーシェンを想像したらちょっと笑えてきた。性欲が勝って目覚めてくれないかな。いくらでも相手するから。
我慢できなくなって、添い寝しようとベッドに片足をかける。突然、身体に電流のように痛みが走り、そのまま動かせなくなった。
床を見ると、青い色の異世界文字がくっきりと浮かび上がっている。壁や扉にも。ゾワゾワと背筋が寒くなる。この魔法陣、全体が見えないくらい大きい。もしかしたら砦全てに魔法がかかってるのか?
『ありがとう』
如月が想像したとおり、しばらくするとポリムが俺を呼びに来た。ちょっとだけ如月を見て頬を赤くしてる。如月はポリムの誘いを断り、飛行船で適当に食事をするというので、二人で砦に戻った。
『ルーシェンの様子はどうですか?』
「今は雲の谷のかたに回復を代わっていただきました。まだお目覚めにはなりません」
『そうですか……』
「お部屋でお食事をとったあと、ミサキ様の体調に問題がなければ、王子様と二人っきりで過ごせる時間を作りますから、元気出してくださいね。ハルバート様が転移魔法陣を作られると聞きましたから、それまでの辛抱です。一緒に王都に戻られたら、王子様もすぐにご回復なさって、また二人で仲良く過ごせますわ」
『そうですね』
たしかにポリムの言う通りなんだけど、なぜかそんなに上手く行くような気がしなかった。如月の話を聞いたせいかもしれない。ここまで周到に準備していたエルヴィンが、すんなりルーシェンを王都に帰すだろうか。
砦は相変わらずどんよりした空気に包まれていた。ルーシェンの部屋の前には飛行部隊の兵士が、隣の俺の部屋には譲二さんが立ってる。さっき会議に使った部屋は、ベッドや調度品が置かれて少しだけ豪華になっていた。
『ここ、フィオネさんが使ってたんですよね。フィオネさんの部屋はあるんですか?』
「私と同じ部屋です。フィオネ様が一緒だと緊張してしまいますわ。テレサがいるからまだ怒られませんけど」
フィオネさんの部屋を取り上げたから少し申し訳ない気がしていたけど、女の人ばかりでちょっとだけ楽しそうだな。
部屋で準備してもらった食事をとり、軽く身体を拭いて着替えをして、フィオネさんとポリムから健康チェックを受けて、ルーシェンの部屋に送り出してもらった。
「ミサキ様、王子様との面会は申し訳ありませんが短時間でお願いします。私たちは扉の外に控えておりますので、何か異変があればお呼びください」
『分かりました』
魔法の灯りがともるだけの部屋に入ると、やっぱり部屋中に魔力が充満していた。入っただけで息が詰まりそうだ。この部屋にいるせいで具合が悪くなるんじゃないかと思ってしまう。
「ルーシェン……」
ルーシェンは相変わらず眠っていた。シーツの中に手を入れて、少し冷たい手をゆっくりと握る。石化の魔法もかかってるらしいから、痛めないように細心の注意を払う。
「……如月が転移魔法陣を作ってくれるって言うから、一緒に王都に帰ろう」
あまり触るなと言われていたけど、誰もいないから、そっと唇にキスをした。体温が低い。いつもの金のオーラも青のオーラもすごく弱い。悲しくなってポロポロ涙が出た。涙が顔にかかったからあわてて指で拭う。こういう時、俺に魔法の力があったら、魔法にかかったルーシェンを口づけでもとに戻せるのに。俺が触ってもなんの変化もない。それどころか、回復魔法をかけられないから時間が経つと悪化するだけだ。
涙を拭いて気持ちを立て直す。しっかりしないとダメだ。如月の言ったことが本当だとしたら、ルーシェンをこんなに苦しめているエルヴィンが許せない。証拠を掴んだら、必ず左遷してやるからな。
決意を新たにしていると、身体がむずむずして思わず変な声が出そうになった。
こんな時なのにエロい気分になる自分が信じられなくて服の中を覗くと、下着の中から小さくなった大根の聖獣が出てきた。
「お前か……」
誰も見られなくて良かった。変な形のおもちゃを服にしのばせる変態なのかと思われるところだった。いや、こいつは誰にも見えないんだっけ。
「あ、そうだ」
こいつは変な見た目だけど、パワースポットにいる回復の聖獣だ。それならルーシェンにも効くんじゃないか? そう思って大根をつまみ、ルーシェンのベッドに移動させた。一緒についてきていた緑のふわふわは見当たらないから一匹だけ。
大根の聖獣はルーシェンの布団に潜り込んだ。気のせいかもしれないけど、ルーシェンの顔色が良くなった気がする。良かった。もっと早くこうすればよかったな。
「ルーシェンの下着には入るなよ」
小声で聖獣に伝えたけど、聞いてくれるのかな。でもムズムズしているルーシェンを想像したらちょっと笑えてきた。性欲が勝って目覚めてくれないかな。いくらでも相手するから。
我慢できなくなって、添い寝しようとベッドに片足をかける。突然、身体に電流のように痛みが走り、そのまま動かせなくなった。
床を見ると、青い色の異世界文字がくっきりと浮かび上がっている。壁や扉にも。ゾワゾワと背筋が寒くなる。この魔法陣、全体が見えないくらい大きい。もしかしたら砦全てに魔法がかかってるのか?
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