好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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帰還

15 処刑命令

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 それから少しくらい眠っていたと思う。次に目を覚ました時、フィオネさんが持ってきた蝋燭が半分くらいに減っていた。まだ熱もあるし身体も痛い。それでも目を覚ましたのは、部屋の外で物音がしたからだ。

『……?』

 まさかまたフィオネさん? それとも別の誰かだろうか。
 扉をじっと見ていると、赤い異世界文字が浮かび上がって消えた。嫌な予感がする。
直後に扉が開かれて、複数の男が部屋に入って来た。全員国王軍の緑のマントを見につけている。

『誰だ……!』
「王太子妃様、部屋を出ていただきます。あなたを処刑しろとの命令が出ています」
『嘘だろ? いったい誰の命令で……』

 まさかルーシェンが? いや、国王軍だからルーシェンじゃない。さっき薬をもらったばっかりなんだぞ。

『何するんだよ! 離せよ!』

 抵抗したけど、熱もあるし相手が複数だったせいであっさり捕まった。兵士に抱えられて部屋の外に連れ出される。

『離せ! ルーシェン! 如月!』
「お静かに」

 抵抗も虚しく、廊下を抱えられて移動する。口を押さえられて声も出せなくなった。階段を降りて砦の下方部分に向かってる。岩壁に開けられた窓の外は夜で、木々がすぐ下の方に見える。
 しばらく行くと展望台のような広場があり、鳥籠のような檻が設置されていた。処刑って、今すぐ殺されるわけじゃないのか。なんだよこれ、どういう内容の処刑なんだ? 下は真っ暗で怖すぎる。

「ミサキ様!」

 誰かの声がして顔をそっちに向ける。飛行部隊の隊員が三人、国王軍の兵士の前に立ち塞がった。

『もごもご(助けてください!)』

 よく見るとジョシュの彼のマーク、それに一緒に雲の谷に向かった隊員二人だ。

「ミサキ様に何をするつもりだ。すぐにその手を離せ。無礼だぞ」
「王太子妃様には処刑命令がでている。王子の許可もいただいている」
「王子がそのような許可を出すはずがない」
「命令を遂行しなければならん」
「王子の婚約者を処刑すれば、お前たち全員罪に問われるぞ」
「しかし命令書がある」

「誰か王子をお呼びしろ!」

 マークが走って広場を離れる。そのあとを追いかける国王軍の兵士が二人。

 しばらく睨み合いが続き、飛行部隊の隊員二人が剣を抜いたので、国王軍の兵士も戦闘体制をとる。

「今なら間に合う。ミサキ様を離せ」
「邪魔をするな」

 戦闘が始まってしまった。剣が風を切り、何かとぶつかる音が響く。接近戦だから魔法は使わないのだろうか。飛行部隊の方が人数が少ないから不利だ。それでも精鋭だけあって複数の相手と対等にわたりあってる。俺は抱えられたまま檻に入れられそうになったので必死に抵抗した。

 展望台からちらりと崖のような砦を見上げると、びっしりと異世界文字の呪文が見えた。魔法村のような狂気を感じる。この砦に滞在している者は多分、知らないうちに魔法にかかってしまってる。
 最初に来た時には何も感じなかったのに、二回目に来た時には変だと思った。ホレスが奪った魔法石なのかどうか分からないけど、強力な魔法アイテムで砦にかけられた魔法が強化されたんだと思う。ここに滞在していたら、この魔法の罠をしかけた犯人、おそらくエルヴィンにたちうちできない。

『離せ!』

 しつこく暴れていると、周辺でぶわりと魔法の力が弾けるのを感じた。酔った時みたいに吐き気が込み上げた。なんの魔法か分からないけど、魔力が濃すぎて気持ち悪い。どっと冷や汗が出て視界が暗くなる。立っていられない。

「大人しくしろ」

 言われなくてももう動けない。片手で担ぎ上げられて檻に入れられそうになった時、ルーシェンの声が聞こえたような気がした。

「何をしている!」
『ルーシェン……?』

 戦いが止んだ。全員が武器をおさめてその場に膝をつく。俺を抱えていた男も、抱えたまま動きを止めた。すぐそばに歩いて来たルーシェンがいつもよりずっと低い声を出す。

「何をしていると聞いているんだ」
「命令により王太子妃様の処刑を……」
「誰がそんな命令を出した!」

 ルーシェン、怒ってるな。空気がビリビリ震えてる。そんなことをぼんやり考えてたら、いきなり抱え上げられた。いつものルーシェンの腕だ。涙が出そうになって首にしがみついた。

「申し訳ありません。しかし処刑命令が出たと言われ、命令書には王子の名前もあり……」
「そうか。では命令書を発行した者を捕まえて朝までに俺の前に連れて来い。できなければお前たちを檻に放り込む」

 ヒイッというような国王軍の兵士たちの声がその場に響いた。




 

 


 

 







 





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