好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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帰還

16 まだ怒ってますか?

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 動揺している国王軍の兵士とは対照的に、飛行部隊の三人はルーシェンの周りに集合した。
 
「治療師を俺の部屋に呼べ」
「かしこまりました」
「王子、ポリム殿をお呼びください。あの方ならミサキ様にお出しする薬を熟知しておられます」
「そうだな、そうしてくれ。マーク、引き続き国王軍を見張れ。ノーラン、お前は命令書を発行した者を調査しろ」
「はいっ」

 飛行部隊の部下が全員いなくなると、ルーシェンは俺を抱えたまま広場をあとにした。砦の内部に入ろうとするので、魔法のことを教えようと服を引っ張る。

『ルーシェン……砦には魔法が。外に出ないと』

 俺の声が聞こえてるはずなのに、ルーシェンは何も言わず部屋まで歩いて向かう。廊下にいた国王軍の兵士たちは慌てて距離をとり、その場に跪いて顔を伏せた。

『……まだ怒ってますか?』

 怒ってるよな。オーラを見ればわかる。無言のまま俺を抱いている腕に力がこもる。

『ごめん。でも、俺は無実で……』
「熱がある。何も言わずに寝てろ」

 やっぱりすごく怒ってるよ。婚約破棄でもなんでもすればいいって言ったの、フィオネさんから聞いたのかな。

 ルーシェンの部屋の前にフィオネさんが待っていて、そのまま部屋に通された。ベッドに寝かされると冷たい布を額に乗せてもらった。ずっとそばにいて欲しいのに、ルーシェンはベッドを離れてフィオネさんと話してる。

「お薬を用意いたします」
「ポリムを呼んだ。すぐに部屋に来るはずだ」
「護衛はどういたしましょうか」
「国王軍の兵は信用できない。ジョージの謹慎を解くから呼びに行ってくれ」
「かしこまりました」

 フィオネさんが出ていくと、しばらくして薬の袋の束を持ったポリムがやって来た。息をきらしてる。ルーシェンへ深々と礼をしてベッドのそばにきてくれた。降格処分って聞いたけど、元気そうで良かった。涙目になってるけど。

「ミサキ様」
『ポリム、すみません』
「せっかくお元気になられて砦に戻ったのに、こんなに熱が。すぐに薬を用意いたします」
『ポリムには迷惑ばかりかけてますね……』
「とんでもありません」

 ポリムはルーシェンを気にしてそれ以上何も言わなかった。ポリムの用意してくれた苦い薬を飲んで再び横になる。

「王子様、おやすみになられるのでしたら私がミサキ様の看病をいたします」
「いや、あとは俺がみる」
「では隣の部屋で待機しております。いつでもお呼びくださいませ」

 ポリムが部屋を出ていくと、ルーシェンと二人っきりだ。ルーシェンは何も言わないし眉間に深い皺が刻まれているのに、そばにいて欲しくて手を出すと、ためらいがちに握ってくれた。

***

 眠っていたらしい。
 どのくらい眠っていたかは分からない。たくさん汗をかいて、身体は熱っぽいのにぞくぞくと寒気がした。あまり良くなってない。
 暗い部屋にルーシェンがいる。俺と同じベッドには眠らず、隣に座ったままの姿勢で目を閉じて眠っていた。片手は布団の中で俺の手を握ってくれていたみたいだ。

『ルーシェン……』

 掠れた声で名前を呼ぶとルーシェンは目を覚ました。
すぐに額に手を乗せられ、ムッとした表情になる。それがおかしくて少し笑ってしまった。

「熱が全然下がっていない。なぜ笑っている」
『ルーシェンが隣にいるのが嬉しくて』
「浮かれるな。死にかけたし高熱もあるんだぞ。おまけにシュウヘイは謹慎処分中だ」
『そうなんですか?』
「当然だ。ロベルトだけ罰を与えるのもおかしいだろう」
『魔法で眠らされて、運ばれただけです』
「服を脱いでいた」
『眠らせた人が脱がしたんです』
「俺以外に肌を見せるなと言っただろう」

 意識ないのに無茶いうよな。こういうところは相変わらず王子様だな。

「だいたいシュウヘイは昔から隙がありすぎる。出会った頃からそうだった。初対面の俺に風呂を見張れだとか、部下と雑魚寝をしたいとか、異世界ではそれが普通なのかもしれないが」

 ルーシェンがぶつぶつ言ってる。さっきよりは怒りがおさまったみたいだ。熱でぼーっとするし、寒気もするからあまり頭に入らない。

「シュウヘイ……? 大丈夫か」
『寒気がします』

 ルーシェンは少し考えて、俺のベッドに潜り込んだ。身体に手を回して暖めてくれる。

『暖かい』
「熱があるのに寒いのか。シュウヘイが魔力酔いをしているから、本当は離れていた方がいいんだが」
『そばにいてください』

 そう言うと、ルーシェンはぎゅっと腕に力を込めた。










 












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