好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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帰還

21 国王軍の兵士

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 食事が終わり、王妃様のあとにくっついて王妃様が乗ってきたという飛行船を見に行く。外は夜だけど飛行船の周りだけ魔法の灯りに照らされて明るい。
 ご機嫌な王妃様とその後ろにルーシェン。それから俺と従者たち。みんなが何か話をしているのに俺の頭には何も入ってこなかった。

 ルーシェンに新しい妃?
 エルヴィンがプライベートエリアに住む? 俺だけのルーシェンじゃなくなる。そんなのってありなのか? 昔のお城や異国では一夫多妻とか、一妻多夫とかいろいろな結婚の形があると知っていたけど、ラキ王国の王様には王妃様以外の他の妃なんていない。それとも俺が知らないだけだったのか? そういえば王様は部長とよく遊んでいるってルーシェンが言ってた。今はいないだけなのかも。
 でも、この世界の結婚で一夫多妻が認められていても、俺は嫌だ。誰かと同じ人を共有するなんて。ルーシェンは誰とも共有したくない。
 エルヴィンが、どうしてもルーシェンの家に住むなら、俺は一緒にはいられない。とても冷静でいられる自信がない。それ以前に殺されるかもしれないけど。

「この飛行船なら石化した兵士や負傷した者たちも全員乗せられるはずよ。室内も豪華だから快適に王都まで帰還できるわ」

「母上はどうされるのです?」

「私は砦に少し残り、王都へは転移魔法陣で帰るとするわ。ハルバートがちょうどいい魔法陣を設置してくれたようだから。あなたたちは飛行船で帰りなさい。帰ったら21階に新しい住居を建てる手配をしておくわ」


 ルーシェンと王妃様が飛行船の中を見回っていても、何も目に入らなくて、歩く気力も湧いてこない。それで入り口付近で立ち止まっていると、エルヴィンが砦から歩いて飛行船にやってくるのが見えた。俺を押し退けるようにして王妃様やルーシェンの側に来ると、あれこれ話しかけている。

 見ていられなくて飛行船を出た。飛行船が接岸している岩場の近くの石のベンチに座って、自分だけ雲の谷から乗ってきた小型の飛行船で帰りたいと思った。

「ミサキ様……私から王子様や王妃様にもう一度お願いしてみます。あんな人がプライベートエリアに住むなんて考えられません」
「ポリム、よせ」
「ジョージは悔しくないのですか」
「俺たちが口を挟める事じゃない」
「ミサキ様がこれほどショックを受けていらっしゃるのに?」

 二人が話しているのを聞きながらぼんやり遠くを見ていると、こちらに歩いてくる国王軍の兵士が見えた。
 不意に寒気に襲われる。
 兵士の男はどこか見覚えのある顔をしていた。挨拶をした中にいた兵士だろうか。だが男は口元から血を流し、それが国王軍の緑の軍服の胸元をべっとりと汚している。手足も怪我をしているのか、身体を引きずるように歩いてくる。

 もしかして魔物が襲来したのか? 寒気もしたし、その可能性はある。

「ミサキ様、どうなさいました?」
『ポリム、譲二さん、兵士が……』
「兵士?」

 何か変だ。岩場にいる見張りの兵士は誰も歩いてくる男に注意を払わないし、ポリムも譲二さんも気にしてなさそうだ。もしかして、俺の大嫌いなあの……。

「シュウヘイ、ここにいたのか」

 兵士に気を取られて、ルーシェンが飛行船から出て俺のそばにいたことに、声をかけられるまで気づかなかった。びっくりしすぎて悲鳴をあげるところだった。ルーシェンは気づかず俺の隣に座ると手を握る。

「母上にもう一度話してみる。そんな顔をするな。シュウヘイ以外の誰かと婚約するつもりはない」
『……』
「エルヴィンには別の褒美か役職を与えようと思う」

 ルーシェンの気持ちは嬉しいけど、今はオバケが怖すぎてなにもいえなかった。ただ、本音をいえば俺は一瞬だってエルヴィンと過ごすのは嫌なんだ。そんな事言っても困らせるだけだろうな。


「さすが王妃様、とても豪華な飛行船ですね。岩だらけの砦に何年もいた私には別世界のようです。王宮のプライベートエリアも豪華なのでしょうね」
「もちろんよ」

 エルヴィンと王妃様が話しながら飛行船から出てくる。
 歩いていた兵士が突然、言葉を発した。

(エルヴィン隊長)

 ぞわぞわと悪寒がひどくなる。生きている者の出す声じゃない。洞窟の中を通り抜ける風みたいなうつろな声だ。妖精さんがこんな声で話していたのを思い出す。
 足を引きずりながらエルヴィンに近づく兵士。エルヴィンは全く見えないのか、相変わらず王妃様と笑顔で話してる。

(なぜ、私を切り捨てたのですか……隊長)

 どこで見たのか思い出した。俺を処刑しようとした兵士のうちの一人だ。









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