好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

文字の大きさ
191 / 209
結婚式

7 転移魔法陣

しおりを挟む
 エルヴィンは俺にカードを投げた。どこかの部屋の鍵だ。

「20階のその部屋に転移魔法陣を用意しています。護衛は自分でなんとかしてくださいね」

『用意周到すぎて引くレベルだ。もしかして花粉もそうなのか?』

「花粉の飛散は数年以内と予定されてましたから、数年以内に王子が砦に来ることは想定していました。そのために時間をかけて砦中に魔法を施したんですよ。まさか婚約旅行の途中とは思いませんでしたが。それも、あなたのような無能な異世界人と婚約するとは」

『腹黒のお前よりマシだろ』

「なんとでも言ってください。あなたがいなくなっても、私が王子との間に可愛い子供を産んで差し上げますから、無能な異世界人と付き合った恥ずかしい歴史も、私と子供を見ているうちにすぐに忘れますよ」

 一瞬殺意が湧いて、左手の甲の魔法を発動させることを考えた。でも、エルヴィンがポケットから魔法石を取り出したので踏みとどまる。あれは、浮島に使われていた強い力の魔法石だ。エストの翼を落とすと言っていたし、どんな魔法がかかっているかわからない。浮島の魔法石は複数あったし、相手は如月並みの魔法使いだ。黙ってカードを受け取るのが最善だと思えた。

 カードをとって王都の空を見上げる。世界が色褪せてから、空にシロの姿が見えない。回復の聖獣も。
 王妃様、俺にエルヴィンは裁けないみたいです。不甲斐ない俺を許してください。今はシロだけが頼りだ。どうかこいつに罰を与えてほしい。

***

『ジョシュに会いに行きたいんですけどいいですか?』
「先にプライベートエリアに戻ってからジョシュさんを呼びましょう」
『短時間でいいので会いたいです。それにあの人がいるから、すぐにプライベートエリアに戻りたくないんです』

 そう言うと、ポリムは折れてくれた。

「分かりました。ではジョシュの職場に連絡を入れますね。少し待っていていただけますか?」
『はい』

 エルヴィンと新しい侍女たちがフィオネさんと一緒にプライベートエリアに向かったあと、俺はわがままをいって20階のフロアに残った。
 護衛の譲二さんにはトイレに行くと告げて、個室にこもる。
 最後にルーシェンに会いたかった。さっきまで会って話をしていたのに、最後に何を話したかはっきり覚えていない。ルーシェンは多分、エストのことを話して、先に寝ていてくれとか、顔色が悪いけど大丈夫かとか、そんな会話をしたような気がする。ろくにまともな返事もできなかった。

 俺はポケットからパスケースを取り出した。中にあるのは如月にもらった緊急避難用の転移魔法陣が書かれた紙だ。あんな男の罠かもしれない転移魔法陣なんて使う気はなかった。とりあえず俺が消えれば、エストが殺されることはないはずだ。

 譲二さん、ポリム、ごめん。

 俺は紙を開き、転移魔法陣を発動させた。

 

しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される

Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。 中1の雨の日熱を出した。 義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。 それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。 晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。 連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。 目覚めたら豪華な部屋!? 異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。 ⚠️最初から義父に犯されます。 嫌な方はお戻りくださいませ。 久しぶりに書きました。 続きはぼちぼち書いていきます。 不定期更新で、すみません。

【16+4話完結】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜

キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」 平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。 そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。 彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。 「お前だけが、俺の世界に色をくれた」 蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。 甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

最弱オレが、最強魔法騎士様のパートナーになった件

竜也りく
BL
「最悪だ……」 その日イールはめちゃくちゃ落ち込んでいた。 イールが通う魔術学校の卒業試験は制限時間72時間の中でどれだけ強い魔物を討伐できるかで審査される上、二人ひと組のチーム選だからだ。 入学してからこのかた常にダントツ最下位を取り続けてきたイールと組むなんて誰だってイヤだろうと思うと気が重いのに、パートナーを見てさらにため息を深くした。 イールのパートナーは、入学以来ダントツで首席な上に、代々騎士の家系に生まれたせいか剣の腕にも定評がある。その上人を寄せ付けない雰囲気ではあるものの顔もいいという、非の打ちどころのない完璧さを誇る男だった。 しかも彼はとんでもないSランクの魔物を仕留めるだなんて言いだして……。

生まれ変わったら知ってるモブだった

マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。 貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。 毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。 この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。 その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。 その瞬間に思い出したんだ。 僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

処理中です...