好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

文字の大きさ
196 / 209
結婚式

12 白い龍

しおりを挟む
 誰でも作れそうなご飯だったのに、飛行部隊のみんなは俺の作ったご飯を絶賛してくれた。パンも料理もお茶もあっという間になくなる。もっとたくさん作ればよかった。
 一戸建てみたいな家で仲間でご飯ってなんだかとてもいいな。俺も、久々に食事を美味しいと感じた。何を食べても味がしなかったのが嘘みたいだ。
 ルーシェンは部下の前なのにずっと俺の腰に腕をまわしていて、やっぱり甘えモードになってる。そのうち王子様の威厳とかなくなっても知らないからな。

 少し休息をとったら王都に向けて出発だ。その頃には村人からの貢物が山のようになっていた。別の隊員があとで運ぶらしい。

『エスト、元気になって良かったな』

 エストは相変わらずツンとしていたけど、毒も状態異常もなくて元気そうだった。ルーシェンの言うことだけは聞くけど、機嫌は悪そうだ。王都が嵐だから飛ぶのが嫌なんだろう。

「エスト、王宮まで戻ってくれるか?」

 ルーシェンが頼むと、しぶしぶという雰囲気で翼を広げた。

***

 村を飛び立ち、森を越えるとすぐに緑水湖が見えてきた。それと同時に真っ黒な雲も。実際に見てみると、本当に王都の上空だけ暗い雲が立ち込めている。霧のような薄い雲じゃなくて、発達しながら生き物みたいに蠢く積乱雲だ。白い閃光が雲の中を走る。稲妻に見えるけど、よく見るとシロだ。
 風が強くなって飛竜たちが近づけない。嵐の中に飛び込むのなんて動物なら絶対に嫌なはずだ。

「王子! 落雷に巻き込まれると危険です!」

 飛行部隊の兵士が後方から叫んでるのがかろうじて聞こえる。暴風に混ざって雨が降り始めたのでルーシェンが後ろから俺にマントをかぶせてくれる。

「北側から王宮に向かう! 低空で飛べ!」

 飛竜たちはルーシェンの指示通り、いつもより高度を下げた。王都の街並みがよく見える。いつも賑やかな王都なのに誰も外に出ていない。窓は閉めきられ、板が打ち付けられていた。

「シュウヘイ、少し魔法防御を強化していいか? 王宮に辿り着くまでの短時間だけだ」

『分かりました。でも、もう少し上空に行ってくれませんか? シロと話してみます』

「シュウヘイ⁉︎」

『雲の間にシロがいます。雷を止めてもらうよう頼みます。お願いです。少しの間だけ』

 ルーシェンが後ろで笑う気配がした。ぎゅっと抱きしめられたかと思うと、ルーシェンの青と金の魔法に包まれて、雨と風の勢いが弱くなる。

「分かった。シュウヘイがそう言うなら大丈夫だな」

 エストはルーシェンの指示で王都上空の巨大積乱雲に向かった。後ろから慌てた飛行部隊たちが追いかけてくる。かなりのスピードだけど、魔法防御のおかげであまりつらくない。マントのフードから顔を出して、俺はシロを探した。

『シロ! 怒りを鎮めてくれ! お願いだ! 雨が降ると困るんだ! 聞こえてるか⁉︎』

 大声で叫んでいると、周りの濃い灰色の雲の隙間から巨大な白い身体がぬっと現れて、ビビりすぎて変な声が出た。同じようにエストも驚いたらしく、滅多に鳴かないエストが鳴き声を上げてバランスを崩す。

「エスト、落ち着け!」

 ルーシェンが片手で俺を抱きしめ、手綱をとってエストをなだめる。ルーシェンがいないと絶対に落ちてたよ。
 巨大な白い龍はゆっくりエストの真横を通過した。ぶわっと暖かい風が吹き抜ける。婚約式の時、緑水湖を泳いで渡っていたらシロが助けてくれたのを思い出した。

『シロ! 帰って来たんだ! 機嫌をなおしてくれ!』

 俺の言葉が通じたのか、白い龍が金色に光り輝いて周りの黒い雲が少し割れた。そこからいくつもの光の筋が緑水湖と王都に差す。暴風はしだいに落ち着き、湖面が穏やかになる。嘘のようにぴたりと雨が止んだ。

「嵐がおさまったな……」

 ルーシェンが呟き、俺はほっと胸を撫で下ろした。ちょっと責任を感じてたんだ。エルヴィンに罰を与えてほしいと願ったから。

「何か、見えたような気がする」
『シロが見えたんですか⁉︎』
「はっきりとは見えなかったが、雲に何か巨大な生き物の影がうつっていた。あれが王宮の守り神なんだな」
『そうなんです! 守り神は大きくて長いです! ルーシェンにも見えたんですね!』

 ルーシェンがシロを見たのが嬉しくてつい興奮してしまった。ルーシェンは少しだけ呆然としていたけど、すぐに気をとりなおして王宮に向かう。
 王都では雨が止んだことに気づいた王都の人々が、家の外に出て歓声をあげている。こっちに手を振っているのが見えた。

 





しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

オメガだと隠して魔王討伐隊に入ったら、最強アルファ達に溺愛されています

水凪しおん
BL
前世は、どこにでもいる普通の大学生だった。車に轢かれ、次に目覚めた時、俺はミルクティー色の髪を持つ少年『サナ』として、剣と魔法の異世界にいた。 そこで知らされたのは、衝撃の事実。この世界には男女の他に『アルファ』『ベータ』『オメガ』という第二の性が存在し、俺はその中で最も希少で、男性でありながら子を宿すことができる『オメガ』だという。 アルファに守られ、番になるのが幸せ? そんな決められた道は歩きたくない。俺は、俺自身の力で生きていく。そう決意し、平凡な『ベータ』と身分を偽った俺の前に現れたのは、太陽のように眩しい聖騎士カイル。彼は俺のささやかな機転を「稀代の戦術眼」と絶賛し、半ば強引に魔王討伐隊へと引き入れた。 しかし、そこは最強のアルファたちの巣窟だった! リーダーのカイルに加え、皮肉屋の天才魔法使いリアム、寡黙な獣人暗殺者ジン。三人の強烈なアルファフェロモンに日々当てられ、俺の身体は甘く疼き始める。 隠し通したい秘密と、抗いがたい本能。偽りのベータとして、俺はこの英雄たちの中で生き残れるのか? これは運命に抗う一人のオメガが、本当の居場所と愛を見つけるまでの物語。

黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜

せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。 しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……? 「お前が産んだ、俺の子供だ」 いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!? クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに? 一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士 ※一応オメガバース設定をお借りしています

転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される

Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。 中1の雨の日熱を出した。 義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。 それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。 晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。 連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。 目覚めたら豪華な部屋!? 異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。 ⚠️最初から義父に犯されます。 嫌な方はお戻りくださいませ。 久しぶりに書きました。 続きはぼちぼち書いていきます。 不定期更新で、すみません。

【16+4話完結】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜

キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」 平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。 そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。 彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。 「お前だけが、俺の世界に色をくれた」 蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。 甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

処理中です...