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結婚式
12 白い龍
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誰でも作れそうなご飯だったのに、飛行部隊のみんなは俺の作ったご飯を絶賛してくれた。パンも料理もお茶もあっという間になくなる。もっとたくさん作ればよかった。
一戸建てみたいな家で仲間でご飯ってなんだかとてもいいな。俺も、久々に食事を美味しいと感じた。何を食べても味がしなかったのが嘘みたいだ。
ルーシェンは部下の前なのにずっと俺の腰に腕をまわしていて、やっぱり甘えモードになってる。そのうち王子様の威厳とかなくなっても知らないからな。
少し休息をとったら王都に向けて出発だ。その頃には村人からの貢物が山のようになっていた。別の隊員があとで運ぶらしい。
『エスト、元気になって良かったな』
エストは相変わらずツンとしていたけど、毒も状態異常もなくて元気そうだった。ルーシェンの言うことだけは聞くけど、機嫌は悪そうだ。王都が嵐だから飛ぶのが嫌なんだろう。
「エスト、王宮まで戻ってくれるか?」
ルーシェンが頼むと、しぶしぶという雰囲気で翼を広げた。
***
村を飛び立ち、森を越えるとすぐに緑水湖が見えてきた。それと同時に真っ黒な雲も。実際に見てみると、本当に王都の上空だけ暗い雲が立ち込めている。霧のような薄い雲じゃなくて、発達しながら生き物みたいに蠢く積乱雲だ。白い閃光が雲の中を走る。稲妻に見えるけど、よく見るとシロだ。
風が強くなって飛竜たちが近づけない。嵐の中に飛び込むのなんて動物なら絶対に嫌なはずだ。
「王子! 落雷に巻き込まれると危険です!」
飛行部隊の兵士が後方から叫んでるのがかろうじて聞こえる。暴風に混ざって雨が降り始めたのでルーシェンが後ろから俺にマントをかぶせてくれる。
「北側から王宮に向かう! 低空で飛べ!」
飛竜たちはルーシェンの指示通り、いつもより高度を下げた。王都の街並みがよく見える。いつも賑やかな王都なのに誰も外に出ていない。窓は閉めきられ、板が打ち付けられていた。
「シュウヘイ、少し魔法防御を強化していいか? 王宮に辿り着くまでの短時間だけだ」
『分かりました。でも、もう少し上空に行ってくれませんか? シロと話してみます』
「シュウヘイ⁉︎」
『雲の間にシロがいます。雷を止めてもらうよう頼みます。お願いです。少しの間だけ』
ルーシェンが後ろで笑う気配がした。ぎゅっと抱きしめられたかと思うと、ルーシェンの青と金の魔法に包まれて、雨と風の勢いが弱くなる。
「分かった。シュウヘイがそう言うなら大丈夫だな」
エストはルーシェンの指示で王都上空の巨大積乱雲に向かった。後ろから慌てた飛行部隊たちが追いかけてくる。かなりのスピードだけど、魔法防御のおかげであまりつらくない。マントのフードから顔を出して、俺はシロを探した。
『シロ! 怒りを鎮めてくれ! お願いだ! 雨が降ると困るんだ! 聞こえてるか⁉︎』
大声で叫んでいると、周りの濃い灰色の雲の隙間から巨大な白い身体がぬっと現れて、ビビりすぎて変な声が出た。同じようにエストも驚いたらしく、滅多に鳴かないエストが鳴き声を上げてバランスを崩す。
「エスト、落ち着け!」
ルーシェンが片手で俺を抱きしめ、手綱をとってエストをなだめる。ルーシェンがいないと絶対に落ちてたよ。
巨大な白い龍はゆっくりエストの真横を通過した。ぶわっと暖かい風が吹き抜ける。婚約式の時、緑水湖を泳いで渡っていたらシロが助けてくれたのを思い出した。
『シロ! 帰って来たんだ! 機嫌をなおしてくれ!』
俺の言葉が通じたのか、白い龍が金色に光り輝いて周りの黒い雲が少し割れた。そこからいくつもの光の筋が緑水湖と王都に差す。暴風はしだいに落ち着き、湖面が穏やかになる。嘘のようにぴたりと雨が止んだ。
「嵐がおさまったな……」
ルーシェンが呟き、俺はほっと胸を撫で下ろした。ちょっと責任を感じてたんだ。エルヴィンに罰を与えてほしいと願ったから。
「何か、見えたような気がする」
『シロが見えたんですか⁉︎』
「はっきりとは見えなかったが、雲に何か巨大な生き物の影がうつっていた。あれが王宮の守り神なんだな」
『そうなんです! 守り神は大きくて長いです! ルーシェンにも見えたんですね!』
ルーシェンがシロを見たのが嬉しくてつい興奮してしまった。ルーシェンは少しだけ呆然としていたけど、すぐに気をとりなおして王宮に向かう。
王都では雨が止んだことに気づいた王都の人々が、家の外に出て歓声をあげている。こっちに手を振っているのが見えた。
一戸建てみたいな家で仲間でご飯ってなんだかとてもいいな。俺も、久々に食事を美味しいと感じた。何を食べても味がしなかったのが嘘みたいだ。
ルーシェンは部下の前なのにずっと俺の腰に腕をまわしていて、やっぱり甘えモードになってる。そのうち王子様の威厳とかなくなっても知らないからな。
少し休息をとったら王都に向けて出発だ。その頃には村人からの貢物が山のようになっていた。別の隊員があとで運ぶらしい。
『エスト、元気になって良かったな』
エストは相変わらずツンとしていたけど、毒も状態異常もなくて元気そうだった。ルーシェンの言うことだけは聞くけど、機嫌は悪そうだ。王都が嵐だから飛ぶのが嫌なんだろう。
「エスト、王宮まで戻ってくれるか?」
ルーシェンが頼むと、しぶしぶという雰囲気で翼を広げた。
***
村を飛び立ち、森を越えるとすぐに緑水湖が見えてきた。それと同時に真っ黒な雲も。実際に見てみると、本当に王都の上空だけ暗い雲が立ち込めている。霧のような薄い雲じゃなくて、発達しながら生き物みたいに蠢く積乱雲だ。白い閃光が雲の中を走る。稲妻に見えるけど、よく見るとシロだ。
風が強くなって飛竜たちが近づけない。嵐の中に飛び込むのなんて動物なら絶対に嫌なはずだ。
「王子! 落雷に巻き込まれると危険です!」
飛行部隊の兵士が後方から叫んでるのがかろうじて聞こえる。暴風に混ざって雨が降り始めたのでルーシェンが後ろから俺にマントをかぶせてくれる。
「北側から王宮に向かう! 低空で飛べ!」
飛竜たちはルーシェンの指示通り、いつもより高度を下げた。王都の街並みがよく見える。いつも賑やかな王都なのに誰も外に出ていない。窓は閉めきられ、板が打ち付けられていた。
「シュウヘイ、少し魔法防御を強化していいか? 王宮に辿り着くまでの短時間だけだ」
『分かりました。でも、もう少し上空に行ってくれませんか? シロと話してみます』
「シュウヘイ⁉︎」
『雲の間にシロがいます。雷を止めてもらうよう頼みます。お願いです。少しの間だけ』
ルーシェンが後ろで笑う気配がした。ぎゅっと抱きしめられたかと思うと、ルーシェンの青と金の魔法に包まれて、雨と風の勢いが弱くなる。
「分かった。シュウヘイがそう言うなら大丈夫だな」
エストはルーシェンの指示で王都上空の巨大積乱雲に向かった。後ろから慌てた飛行部隊たちが追いかけてくる。かなりのスピードだけど、魔法防御のおかげであまりつらくない。マントのフードから顔を出して、俺はシロを探した。
『シロ! 怒りを鎮めてくれ! お願いだ! 雨が降ると困るんだ! 聞こえてるか⁉︎』
大声で叫んでいると、周りの濃い灰色の雲の隙間から巨大な白い身体がぬっと現れて、ビビりすぎて変な声が出た。同じようにエストも驚いたらしく、滅多に鳴かないエストが鳴き声を上げてバランスを崩す。
「エスト、落ち着け!」
ルーシェンが片手で俺を抱きしめ、手綱をとってエストをなだめる。ルーシェンがいないと絶対に落ちてたよ。
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『シロ! 帰って来たんだ! 機嫌をなおしてくれ!』
俺の言葉が通じたのか、白い龍が金色に光り輝いて周りの黒い雲が少し割れた。そこからいくつもの光の筋が緑水湖と王都に差す。暴風はしだいに落ち着き、湖面が穏やかになる。嘘のようにぴたりと雨が止んだ。
「嵐がおさまったな……」
ルーシェンが呟き、俺はほっと胸を撫で下ろした。ちょっと責任を感じてたんだ。エルヴィンに罰を与えてほしいと願ったから。
「何か、見えたような気がする」
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「はっきりとは見えなかったが、雲に何か巨大な生き物の影がうつっていた。あれが王宮の守り神なんだな」
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ルーシェンがシロを見たのが嬉しくてつい興奮してしまった。ルーシェンは少しだけ呆然としていたけど、すぐに気をとりなおして王宮に向かう。
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