好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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結婚式

15 慈悲深いな

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 ルーシェンがお風呂に入っている間に寝る前の準備をして、ベッドで待つ。
 お風呂について行こうかと思ったけど、疲れているだろうし一人の方がゆっくり入れると思って我慢した。それにあのお風呂場は屋外みたいなものだから、エルヴィンの取り巻きのお化けが間違えてこっちに出てきたら怖い。お化けが見えるの俺だけだし。

 そんなことを考えながら星空を見上げていると、寝室にルーシェンが戻ってきた。お風呂上がりのラフなスタイルなのに、愛用の長剣だけはしっかり持ち歩いてる。受け取って枕元に置くと、背中に飛びついて髪の匂いを嗅いでみた。

「その動物みたいな行動はなんだ」
『いい匂いです。でも髪が濡れてますよ。乾かさないと』
「シュウヘイに会いたいから早めに戻ってきた」
『拭いてあげます』

 厚地の布で吹いていると、ルーシェンがそのまま寄りかかってきて膝枕状態になった。これだと拭きにくいな。

『濡れた髪のまま寝ると髪が傷むって姉ちゃんが言ってました』
「シュウヘイの姉君は物知りなのだな」
『ルーシェンは髪が綺麗だから大事にしないと』
「討伐に出ている時は気にしたこともなかった」

 ルーシェンが目を閉じて気持ちよさそうにしてる。やりにくいけど幸せだからいいか。

「この寝室で眠るのも久しぶりだ」
『え? だって……』
「せっかく帰ってきたのに、婚約者がいなくなって眠る暇もなかった」

 ルーシェンが目を開けて俺を見る。この顔はちょっと拗ねてるな。

『……すみません。心配かけました』
「いいんだ。無事ならいい。シュウヘイは悪くない」
『……あの男のことなんですけど』
「エルヴィンか?」
『はい。あまり言いたくないけど、プライベートエリアから出して医療部屋に送った方がいいと思います』

 俺がいうと、ルーシェンは少し真剣な表情に戻った。

「シュウヘイはエルヴィンに、転移魔法陣で異世界に帰れと脅されたと言っていたな」
『はい』
「それで異世界に戻る転移魔法陣を全て調べたが、魔力が充分に溜まっていて実際に異世界に通じているものはなかった。
 行き先は戦争中の他国や海の上、砂漠などに書き換えられていた。異世界担当課の者に調べてもらったから間違いない。転移していたら命を落とすか、運が良くても王都に帰るまでに数年かかりそうな場所ばかりだった」

『やっぱり……』

「エルヴィンのこれまでの国への功績を差し引いても、シュウヘイに対する罪は重い。投獄するか労役につかせるか、島送りにするのが妥当だ。それでも医療部屋に送った方がいいと思うか?」

『ここにいると、多分近いうちに命を落とします』

 理由は詳しく言わなかったけど、ルーシェンは何も聞かずに理解してくれた。

「そうか。では明日にでも医療部屋に送ろう。シュウヘイは本当に慈悲深いな」

『そうでもないです。あいつは大嫌いだけど、私とルーシェンと、王様や王妃様の住むプライベートエリアに嫌な思い出を作りたくないだけなんです』

「それでも慈悲深い。侍女も侍従もみなシュウヘイが戻って来て喜んでいる。飛行部隊もそうだ。シュウヘイが王太子妃で、俺もラキ王国の民も幸せだな」

『……それは言い過ぎです』

 もう少し何か言おうと思ったけど、ルーシェンが眠そうなのでやめておいた。ここ数日ずっと働いていたのだから、今日はゆっくり休ませてあげよう。ルーシェンがそのうちスヤスヤと寝息を立てはじめたので、起こさないように移動して隣に潜り込んだ。






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