好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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結婚式

16 石板エレベーター

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 朝が来た。
 結婚式の朝だ。空は青く、白い雲がふわふわと浮いている。起きるとベッドにルーシェンはいなかった。下の方でフィオネさんと話す声が聞こえる。毎日忙しくて全然眠れていなかったルーシェンよりも、如月の隠れ家で暇を持て余していた俺の方が遅くまで寝てるってどういうことなんだろう。しかも昨日は何もしてないのに。

『おはようございます』

 階下にいくと、フィオネさんとルーシェンとアークさんがいて仕事の打ち合わせをしていた。挨拶をするとフィオネさんとアークさんに「ご結婚おめでとうございます」と完璧な礼儀作法で返された。

「シュウヘイ、起きたのか。まだゆっくり寝ていて良かったのに」
『もう目が覚めました。今日は結婚式ですよね? 忙しいかと思って……』
「結婚式は二人きりでおこなうから、普段の仕事の指示はアークとフィオネに出してもらう。だから三日は自由だ」

 ルーシェンが満面の笑みでそう言う。自由がよほど嬉しいらしい。結婚式って儀式だよな。休暇の間違いなんじゃないか? 婚約式も婚約旅行も仕事みたいなものだったから、今回も半分くらい仕事なんじゃないかと疑っていたけど、ルーシェンの様子を見る限り一番自由度が高そうだ。

「王子、三日の間の仕事は全て私たちが引き受けますので、ミサキ様とごゆっくり。ミサキ様、王子をよろしくお願いいたします。しっかり癒してさしあげてください」
『あっ、はい。こちらこそよろしくお願いします』

 挨拶のあと朝食をとって、恒例の健康チェックを受けて、いつもの苦い薬を飲む。
 それからポリムや譲二さんたちも含むルーシェンのプライベートエリアの侍従たちと一緒に、王様の宮殿の近くに向かう。イベントがある時にはいつも近くに玉座が設置される広場の大きな台座まで進むと、ルーシェンが手を伸ばして俺を台座に上げてくれた。台座といっても二メートル四方くらいしかない。いや、二メートルは言い過ぎかな。もっと小さいぞ。これからどうするんだ? ここに魔法陣を描くのか?

「報告書は食事と一緒に届けてくれ」
「かしこまりました」

 アークさんやフィオネさん、ポリムや譲二さんたちが見守る中、俺とルーシェンの立っている石の台座が動いた。びっくりしてルーシェンにしがみつくと、そのまま台座ごとすうっと上空に浮かぶ。これは、石板エレベーターってやつか。

 垂直に上昇するといっても壁がないし、高いからけっこう怖い。焦る俺の腰に手を回してルーシェンが支えてくれた。どんどん小さくなっていくみんなに手を振る余裕もない。

「高いところが平気なシュウヘイでも、怖がることがあるんだな」
『これは高すぎます』

 王宮のプライベートエリアがだんだん小さくなる。建物がびっしりと並んだ王都の街並みや緑水湖、周りに伸びる川や取り囲む山まで見えはじめたのに、足下には二メートルくらいの重そうな石しかないっていうのが現実離れしていて怖い。そもそもなんでこんな石が浮いてるんだろう。

「もうすぐ離宮に到着だ」

 石板エレベーターはもやのような雲の中を通過して、上空にポツンと浮かんでいた宮殿に近づいていった。あんな宮殿が真上にあったなんて知らなかった。よく落ちてこないな。
 宮殿の底の部分に四角い穴が空いている。この石板エレベーターの形に似ていると思ったら、正解だった。石板エレベーターはそのまま四角い穴に吸い込まれるように入っていった。

「怖かった……」

 動いていた石板エレベーターが、上空に浮かぶ離宮の床にピタリとはまった瞬間、俺は膝から崩れ落ちそうになった。また落ちたら怖いから這うようにして石板から離れる。

「シュウヘイ、大丈夫か? 帰りもこれなんだが」
『言わないでください……ルーシェンは怖くないんですか?』
「飛竜や浮島の方が高いところを飛んでいるからな。それに何度か来たことがある」

 そういえば浮島や王宮だって似たようなものか。ルーシェンには魔法があるし、落ちても魔法でなんとかなるんだろうな。

『足場が狭いと、なんとなく心細いんです』

 相変わらず床に崩れ落ちている俺を笑って、ルーシェンが抱き上げた。

『ルーシェン?』
「これで三日は二人きりだ。誰にも邪魔されない」
『建物に二人きりって、魔法村みたいですね』

 そう言うとルーシェンは目を丸くした。





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