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結婚式
17 魔法の粉
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離宮は全体に白っぽくて簡素な建物だった。王様や王妃さまの宮殿の方がはるかに豪華でお金がかかってる。石畳の庭も狭くて、木が二本ほど生えているだけ。
それなのに、漂う神聖な空気はプライベートエリアの上をいく荘厳さだった。白い建物なのに黄金に輝いているような気がする。後光っていうのか、とにかく漂う空気が金色だ。そしてその金色はどこかで見たことがある。ルーシェン、それに王様や王妃さまのまとうオーラの色だ。
『金色ですね……』
「何が?」
『建物っていうか』
「俺には白く見えるが」
なるほどルーシェンには見えないやつか。
「ここは王族が儀式の時にしか使わない建物なんだ。結婚や王位継承などに利用される。俺も生まれた時と、十歳、二十一歳の儀式で使用した」
『二十歳の時には魔法村にいたからですよね』
「そうだな。結婚式にはシュウヘイと来たいと思っていた。次に来るのは王位継承の時だろうな」
王族しか来られない場所か。なんだか結婚の重みが急に実感としてずしりと肩にのしかかって来たぞ。
『あっ……!』
「どうした?」
庭に生えている木の後ろに何か動くものを見つけた。よく見ると、大根みたいな姿をしてる。俺たちをちらっと見て、そのまま建物に入って行った。
『王妃さまの故郷で会った回復の聖獣がいました』
「そうか……母上についてきたのだろうな」
いや、多分俺についてきてルーシェンにくっついていた奴だと思う。落ち込んでいた時に見えなくなったから、いなくなったと思っていたけど、こんなところにいたのか。消えていなくてよかった。
石板エレベーターのある広場からまっすぐ歩き、二人で正面の建物をくぐる。入ると自動的に魔法の灯りがポツポツと輝いて、壁に飾られた絵を照らした。何もない広い湖と、湖を見下ろす三人の若者の絵だ。ルーシェンが言うには、ラキ王国を建国した初代国王とその配下の絵みたいだ。
次の部屋に進むと、祭壇のような場所に箱があって、中にはキラキラした砂が入っていた。色は青い色だけど、よく見ると金色に輝いてる。
『これ、なんですか?』
「魔法石を砕いたものだ。染料と混ぜて魔法の文字を描くのに使う。儀式用の特別製だ」
『書類か何かに署名するんですね』
婚姻届を出すって感じかな。そう思っていたら、ルーシェンが笑顔で首を振った。
「書類じゃない。身体に文字を書く。正確には呪文とお互いの名前を」
『か、身体⁉︎』
「母上と父上は政略結婚だったから、結婚式は手のひらにお互いの名前を書いただけの短時間で終わったらしい」
ふと婚約式の時に俺の心臓に電流を浴びせた変態親父を思い出した。あいつも俺の身体にろくでもない魔法をかけたんだった。あれはもう消えたし呪いみたいなものだったけど、魔法の世界の結婚ってそれに近いのかな。
俺の不安を察知したのか、ルーシェンは優しく笑って俺の頬を撫でた。
「心配するな。呪いとは違う。二人の同意があって初めて成立する契約だ。解除することも出来る。痛みもないし、この魔法の粉は王宮の特別製だから怪我や病気や魔法にも強くなる。洗い流せば魔法があることも他人には気づかれない」
『大丈夫です。ルーシェンの名前ならどこでも書けます』
胸をはって言う。エルヴィンや他の人にルーシェンを渡したくない。きっと痛みがあっても呪いでも俺は契約できると思う。
「どこでも?」
頷くと、ルーシェンは何気ない仕草で俺の着ていたシャツのボタンの一番上を外した。とても自然にルーシェンの指がシャツの下に入り込み、心臓の上あたりをさらりと撫でる。思わず声が出そうになった。
ルーシェンの指が胸の尖りを摘み、頭の先からつま先まで甘い痺れが走り抜けた。すごく久しぶりな気がして、身体中の血液が沸騰しそうになる。
『ちょ、ちょっと、待って……』
泣きそうな気持ちよさに、うまく言葉が紡げない。耐えられなくてルーシェンの手を押さえたけど、そんな力で止められるわけもなくて、断続的な快感に力が抜けそうだ。
「俺も手のひらだけじゃなく、シュウヘイの身体の好きな場所に名前を書いてみたい」
『好きな、場所って』
「シュウヘイの身体はどこも好きだから、悩むな。こことか」
『あっ……そこ、敏感、なので……!』
どこでもって言ったけど無理かも。そんなところに書かれたら泣く。気持ち良くて。
でもそんな俺の言葉をさらりとながして、ルーシェンは楽しみだな、と笑った。
それなのに、漂う神聖な空気はプライベートエリアの上をいく荘厳さだった。白い建物なのに黄金に輝いているような気がする。後光っていうのか、とにかく漂う空気が金色だ。そしてその金色はどこかで見たことがある。ルーシェン、それに王様や王妃さまのまとうオーラの色だ。
『金色ですね……』
「何が?」
『建物っていうか』
「俺には白く見えるが」
なるほどルーシェンには見えないやつか。
「ここは王族が儀式の時にしか使わない建物なんだ。結婚や王位継承などに利用される。俺も生まれた時と、十歳、二十一歳の儀式で使用した」
『二十歳の時には魔法村にいたからですよね』
「そうだな。結婚式にはシュウヘイと来たいと思っていた。次に来るのは王位継承の時だろうな」
王族しか来られない場所か。なんだか結婚の重みが急に実感としてずしりと肩にのしかかって来たぞ。
『あっ……!』
「どうした?」
庭に生えている木の後ろに何か動くものを見つけた。よく見ると、大根みたいな姿をしてる。俺たちをちらっと見て、そのまま建物に入って行った。
『王妃さまの故郷で会った回復の聖獣がいました』
「そうか……母上についてきたのだろうな」
いや、多分俺についてきてルーシェンにくっついていた奴だと思う。落ち込んでいた時に見えなくなったから、いなくなったと思っていたけど、こんなところにいたのか。消えていなくてよかった。
石板エレベーターのある広場からまっすぐ歩き、二人で正面の建物をくぐる。入ると自動的に魔法の灯りがポツポツと輝いて、壁に飾られた絵を照らした。何もない広い湖と、湖を見下ろす三人の若者の絵だ。ルーシェンが言うには、ラキ王国を建国した初代国王とその配下の絵みたいだ。
次の部屋に進むと、祭壇のような場所に箱があって、中にはキラキラした砂が入っていた。色は青い色だけど、よく見ると金色に輝いてる。
『これ、なんですか?』
「魔法石を砕いたものだ。染料と混ぜて魔法の文字を描くのに使う。儀式用の特別製だ」
『書類か何かに署名するんですね』
婚姻届を出すって感じかな。そう思っていたら、ルーシェンが笑顔で首を振った。
「書類じゃない。身体に文字を書く。正確には呪文とお互いの名前を」
『か、身体⁉︎』
「母上と父上は政略結婚だったから、結婚式は手のひらにお互いの名前を書いただけの短時間で終わったらしい」
ふと婚約式の時に俺の心臓に電流を浴びせた変態親父を思い出した。あいつも俺の身体にろくでもない魔法をかけたんだった。あれはもう消えたし呪いみたいなものだったけど、魔法の世界の結婚ってそれに近いのかな。
俺の不安を察知したのか、ルーシェンは優しく笑って俺の頬を撫でた。
「心配するな。呪いとは違う。二人の同意があって初めて成立する契約だ。解除することも出来る。痛みもないし、この魔法の粉は王宮の特別製だから怪我や病気や魔法にも強くなる。洗い流せば魔法があることも他人には気づかれない」
『大丈夫です。ルーシェンの名前ならどこでも書けます』
胸をはって言う。エルヴィンや他の人にルーシェンを渡したくない。きっと痛みがあっても呪いでも俺は契約できると思う。
「どこでも?」
頷くと、ルーシェンは何気ない仕草で俺の着ていたシャツのボタンの一番上を外した。とても自然にルーシェンの指がシャツの下に入り込み、心臓の上あたりをさらりと撫でる。思わず声が出そうになった。
ルーシェンの指が胸の尖りを摘み、頭の先からつま先まで甘い痺れが走り抜けた。すごく久しぶりな気がして、身体中の血液が沸騰しそうになる。
『ちょ、ちょっと、待って……』
泣きそうな気持ちよさに、うまく言葉が紡げない。耐えられなくてルーシェンの手を押さえたけど、そんな力で止められるわけもなくて、断続的な快感に力が抜けそうだ。
「俺も手のひらだけじゃなく、シュウヘイの身体の好きな場所に名前を書いてみたい」
『好きな、場所って』
「シュウヘイの身体はどこも好きだから、悩むな。こことか」
『あっ……そこ、敏感、なので……!』
どこでもって言ったけど無理かも。そんなところに書かれたら泣く。気持ち良くて。
でもそんな俺の言葉をさらりとながして、ルーシェンは楽しみだな、と笑った。
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