好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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結婚式

19 魔法の効果

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 悩んだ挙句に俺と同じ心臓のあたりに書くことにした。人の身体に文字を、それも名前を書くって独占欲丸出しの行為だよな。緊張しながら杖の先に魔法の粉を浸し、座っているルーシェンの胸元に杖を近づける。

「えっと……」
「名前と、それから結婚したと書いてくれればいい」
「分かった」

(岬修平と結婚する)

 長文を書くのもどうかと思い、シンプルにそれだけにしておいた。ただの文字なのに、魔法の粉のせいで絶大な効果があるのが不思議だ。どんな効果かいまいち実感はわかないけど。
 気持ちよかったのか気になってルーシェンの表情を盗み見たけど、俺ほど気持ちよさそうじゃない。嬉しそうではあるけど。

「気持ちいい?」
「ああ」
「本当かな。俺、名前書かれてるときイキそうだったんだけど」
「シュウヘイは敏感すぎる。そこが可愛い」
「魔法慣れしてないからだ。そんなに敏感じゃな……」
「試してみようか?」
「あっ、待って! まだ無理!」

 裸のルーシェンに押し倒されて杖も奪い取られた。太ももの内側にするりと線を描かれる。

「ああっ、駄目……!」
「駄目ならやめようか?」

 意地悪なルーシェンが焦らしプレイを仕掛けてくる。涙目で首を振ると、ルーシェンは杖をベッドサイドに置いた。安心したのも束の間、お酒の混ざった魔法の粉を指ですくう。まさか。

「うう、あはは……ちょっと、待って!」

 これは反則だろ。粉付きの指で身体を撫でられてくすぐったいのと気持ちいいのが我慢できない。仕返しにルーシェンの身体にもペタペタ塗ってやって、二人とも青い粉まみれになった。あまりやるとベッドのシーツが汚れるのに気づき、慌てて禊ぎの部屋に移動する。

「替えのシーツあるかな」
「フィオネに頼もう。欲しいものを書いて石板に乗せておろせば届けてくれるはずだ」
「夜ご飯は?」
「それも一緒に運ばれてくる。メニューに希望があればそれも書こうか」
「食材があればルーシェンに何か作るけど。一緒に作ってもいいし」
「では以前食べたラーメンとかいう料理が食べたいな」
「じゃあ明日はラーメンにしよう」

 頼めば持ってきてもらえるの便利だな。高級ホテルのルームサービスみたいだ。

 禊ぎのお風呂の水温がぬるすぎるので、魔法石を入れて少し温かくした。お互いの身体にお湯をかけて遊ぶ。青い粉は綺麗に流れ落ちて身体には何も残っていない。それでも目を凝らしてみれば金色のオーラが残っている。名前は消えても身体には残ってるってことか。

「あれ? 俺、目が良くなったかも」

 ぬるま湯に浸かって天井を眺めると、詳細な模様がはっきりと見えた。もともと日本にいた時もメガネをかけなければいけないほど目は悪くなかったけど、かけなくてもすむ程度だった。それが異世界に来てから目が良くなったと感じていたのに、今日はさらに視力が上がったような気がする。

「そうか。それはよかった。言葉も流暢になったな」
「そういえば……」

 ルーシェンに指摘されてようやく気づく。今までは頭で考えてから言葉にするのに少し時間がかかっていたのに、それがなくなってる。日本語から異世界語に翻訳して話すこともなく、考えている時も異世界の言葉だ。

「これも魔法の効果かな。すごい」
「訛りもなくなった。シュウヘイはいろいろな場所のイントネーションでいつも丁寧に話していたが」
「異世界ガイドブックで練習してたから。腹が立った時とかケンカの時、うまく言い返せなくて困ってた」
「あれはあれで可愛かったな」
「そうかな」

 思ったことがストレートに伝わるってすごいな。余計なストレスを抱えなくてすむ。

「おそらく契約によって魔力も少し受け取っているはずだ」
「魔力も?」
「一生かけて少しずつ受け取ってもらおうと思っていたが、想像していたより多い」

 ルーシェンが背後から俺を抱きしめてきて、そのまま膝に乗せられた。耳もとで囁かれながら耳朶を指でなぞられると気持ちよくて頭がくらくらする。

「おじいさんになる頃には大魔法使いになってるかも」
「そうだな」

 大魔法使いはきっと無理だけど。俺への陰口の定番といえば『魔力なしの異世界人』だったから、もう言われなくてすむかな。それなら嬉しいんだけど。
 ルーシェンが耳朶からゆっくりと首筋にキスを落としてくる。胸の尖りを摘まれて、耐えきれなくて手を押さえたけど、そんなことで止められるわけなかった。



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