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雑魚寝した夜
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『好きになったのは異世界の王子座でした』の婚約旅行編……「雑魚寝した夜」の兵士達と楽しく遊んだバージョンの修平とルーシェンの話です。
***
そうだ、大人数で雑魚寝とかすればいいんじゃないか? 飛行部隊に頼んで同じ部屋に寝かせてもらえないかな。
思い立ったら即実行だ。
枕を二つ抱えて部屋を出ると、まだ廊下にいたらしい譲二さんに見つかった。
「ミサキ様、どちらへ?」
『飛行部隊の部屋です』
飛行部隊の寝室は個室と大部屋があるらしい。アークさんやロベルトさんは個室。
個人的にロベルトさんは幽霊にも強そうだから、ロベルトさんでもいいんだけど、俺が嫌われてるから気まずいな。それに人数が多い方が安心感がある。
しばらく探索した後、ちょうど大部屋でルーシェンがみんなを集めて話しているというぴったりの場所を見つけた。勢いよく扉を開ける。
『こんばんは!』
あれ? なんだか全員がビックリしてるけど、妖精さん見えてるのか?
「シュウヘイ……どうした?」
『なんでもないです。私の事は気にせず続けてください。あ、譲二さん部屋に戻っていいですよ』
長椅子に二人分の枕を投げて寝転がる。長椅子の近くに飛行部隊がいたので愛想笑いを振りまくと、なぜかその人はすごい勢いで後ずさった。
「待て」
寝ようと思ったのにルーシェンに止められた。
『何ですか?』
「何だその枕は」
『今日は旅行初日だし、せっかく大勢の人が乗っているんだから、みんなで楽しく雑談とかしながら過ごそうかと。ルーシェンの枕も持ってきました』
「そうか」
あ、笑顔だ。
ルーシェンも意外と乗り気なのか。
「部屋に戻るぞ」
首に腕を回されて引っ張り起こされた。全然乗り気じゃなかった。
『ええっ、でもせっかくだし少しくらい良くないですか? ルーシェンが話をしてる間だけ……! 一人で部屋にいるの怖いんで』
最後の言葉を小声で付け加えると、ルーシェンは仕方なくといった調子で俺の首から腕を離した。
「少しの間だけだぞ」
『ありがとうございます』
「あと兵士の前で寝るな」
『あ、わかりました』
部下の前でダラダラするのは王太子妃として失格って事かな。
気を取り直して長椅子に座ると、ルーシェンはしぶしぶという雰囲気で話をしていた部下のもとに戻った。仕事の邪魔したら悪いからじろじろ見るのはやめておこう。仕事しているルーシェンかっこいいけど。
近くのテーブルを見ると、チェスや将棋に似た道具やトランプに似たカードが置かれていたので手に取ってみた。
『譲二さん、これ何ですか?』
「それはこの国の兵士達の間で流行しているカードゲームです」
紙素材のゲームって珍しいな。
枚数がけっこう多くて、絵柄は魔法使いの杖や魔法石、騎士や動物の柄になっていて面白い。ルールは分からないけど楽しそうだな。
それで近くでぎこちなくこっちの様子を伺っている飛行部隊の兵士達を捕まえて「ゲームしませんか?」と誘ってみた。
***
『ええと……このカードが強いんでしたっけ?』
近くにいた飛行部隊の兵士三人とカードゲームをする事になり、俺は譲二さんにいろいろ教えてもらいながらなんとかゲームを楽しんでいた。ゲームが進むにつれて、はじめは恐縮していた兵士達もだんだん勝負に熱中していき長椅子とテーブルのまわりに集まって来ている。二人にはなぜか勝てたけど(きっと俺が王太子妃だから遠慮して負けたんだな。それか譲二さんの教え方が上手いのか)最後の一人は強敵だ。まだ若くて隊長クラスではないけど、カードゲームは強いらしい。
「うわぁ……」
初心者の俺にもわかる。相手のカードを見る限り、これはかなりの劣勢だ。負け確定かな。
「ちょっと厳しいですね」
譲二さんもそう言って、次のカード選びを悩んでいると、兵士の輪が崩れてルーシェンが割って入って来た。俺の持ち札を覗きこむ。そのまま俺の隣に座って一枚のカードを抜き取った。
『次はこれですか?』
「これしかないだろう。劣勢は変わらないが」
ルーシェンは俺の味方をしてくれるらしい。王子様が相手になって若い飛行部隊の兵士はかなり顔色が悪くなった。
とりあえずルーシェンの選んだカードを置く。周りの兵士達が「おおっ」とどよめく。さらに相手が出したカードもかなり強い札だ。負けてないな。楽しい。
『ルーシェン、次どれですか?』
「次はこれだな」
そのまましばらくいい感じにゲームが続き、でも結局負けてしまった。
『うわー負けた……』
「も、申し訳ありません!」
負けた瞬間に相手の兵士が土下座したので、慌ててフォローを入れる。
『いえ、楽しかったです。また教えてください』
「もう一度勝負だな」
負けず嫌いのルーシェンがカードを配りはじめたので、取り巻きの全員ともう一度勝負する事にした。
「王子、ミサキ様、飲み物を持ってまいりました」
譲二さんがいつのまにかテーブルに飲み物を用意してくれて、兵士達もそれぞれ何か飲みながら楽しそうにゲームを始めてる。
左手の妖精さんが気にならないくらい楽しい。修学旅行の夜みたいだ。
それからもう一度勝負して、今度も俺は負けてしまったけど、すっかりカードゲームが好きになった。次はチェスみたいなゲームでルーシェンと部下が戦うのを見守りながら応援する。こんな楽しい夜がずっと続いたらいいんだけどな。みんなの楽しい声に遠慮して妖精さんの力も弱ってる気がする。
眠くなってきたのでうとうとしながらルーシェンにもたれかかると、誰かがタオルケットみたいな薄い毛布をかけてくれた。
眠ってしまった俺は、次に起きた時には用意された寝室のベッドの中だった。隣にルーシェンが眠ってる。ルーシェンが運んでくれたんだろうか。
またやらかしてしまったかな、と思った俺は今回の修学旅行みたいな夜が兵士達の間で大好評だったことを知らなかった。
***
そうだ、大人数で雑魚寝とかすればいいんじゃないか? 飛行部隊に頼んで同じ部屋に寝かせてもらえないかな。
思い立ったら即実行だ。
枕を二つ抱えて部屋を出ると、まだ廊下にいたらしい譲二さんに見つかった。
「ミサキ様、どちらへ?」
『飛行部隊の部屋です』
飛行部隊の寝室は個室と大部屋があるらしい。アークさんやロベルトさんは個室。
個人的にロベルトさんは幽霊にも強そうだから、ロベルトさんでもいいんだけど、俺が嫌われてるから気まずいな。それに人数が多い方が安心感がある。
しばらく探索した後、ちょうど大部屋でルーシェンがみんなを集めて話しているというぴったりの場所を見つけた。勢いよく扉を開ける。
『こんばんは!』
あれ? なんだか全員がビックリしてるけど、妖精さん見えてるのか?
「シュウヘイ……どうした?」
『なんでもないです。私の事は気にせず続けてください。あ、譲二さん部屋に戻っていいですよ』
長椅子に二人分の枕を投げて寝転がる。長椅子の近くに飛行部隊がいたので愛想笑いを振りまくと、なぜかその人はすごい勢いで後ずさった。
「待て」
寝ようと思ったのにルーシェンに止められた。
『何ですか?』
「何だその枕は」
『今日は旅行初日だし、せっかく大勢の人が乗っているんだから、みんなで楽しく雑談とかしながら過ごそうかと。ルーシェンの枕も持ってきました』
「そうか」
あ、笑顔だ。
ルーシェンも意外と乗り気なのか。
「部屋に戻るぞ」
首に腕を回されて引っ張り起こされた。全然乗り気じゃなかった。
『ええっ、でもせっかくだし少しくらい良くないですか? ルーシェンが話をしてる間だけ……! 一人で部屋にいるの怖いんで』
最後の言葉を小声で付け加えると、ルーシェンは仕方なくといった調子で俺の首から腕を離した。
「少しの間だけだぞ」
『ありがとうございます』
「あと兵士の前で寝るな」
『あ、わかりました』
部下の前でダラダラするのは王太子妃として失格って事かな。
気を取り直して長椅子に座ると、ルーシェンはしぶしぶという雰囲気で話をしていた部下のもとに戻った。仕事の邪魔したら悪いからじろじろ見るのはやめておこう。仕事しているルーシェンかっこいいけど。
近くのテーブルを見ると、チェスや将棋に似た道具やトランプに似たカードが置かれていたので手に取ってみた。
『譲二さん、これ何ですか?』
「それはこの国の兵士達の間で流行しているカードゲームです」
紙素材のゲームって珍しいな。
枚数がけっこう多くて、絵柄は魔法使いの杖や魔法石、騎士や動物の柄になっていて面白い。ルールは分からないけど楽しそうだな。
それで近くでぎこちなくこっちの様子を伺っている飛行部隊の兵士達を捕まえて「ゲームしませんか?」と誘ってみた。
***
『ええと……このカードが強いんでしたっけ?』
近くにいた飛行部隊の兵士三人とカードゲームをする事になり、俺は譲二さんにいろいろ教えてもらいながらなんとかゲームを楽しんでいた。ゲームが進むにつれて、はじめは恐縮していた兵士達もだんだん勝負に熱中していき長椅子とテーブルのまわりに集まって来ている。二人にはなぜか勝てたけど(きっと俺が王太子妃だから遠慮して負けたんだな。それか譲二さんの教え方が上手いのか)最後の一人は強敵だ。まだ若くて隊長クラスではないけど、カードゲームは強いらしい。
「うわぁ……」
初心者の俺にもわかる。相手のカードを見る限り、これはかなりの劣勢だ。負け確定かな。
「ちょっと厳しいですね」
譲二さんもそう言って、次のカード選びを悩んでいると、兵士の輪が崩れてルーシェンが割って入って来た。俺の持ち札を覗きこむ。そのまま俺の隣に座って一枚のカードを抜き取った。
『次はこれですか?』
「これしかないだろう。劣勢は変わらないが」
ルーシェンは俺の味方をしてくれるらしい。王子様が相手になって若い飛行部隊の兵士はかなり顔色が悪くなった。
とりあえずルーシェンの選んだカードを置く。周りの兵士達が「おおっ」とどよめく。さらに相手が出したカードもかなり強い札だ。負けてないな。楽しい。
『ルーシェン、次どれですか?』
「次はこれだな」
そのまましばらくいい感じにゲームが続き、でも結局負けてしまった。
『うわー負けた……』
「も、申し訳ありません!」
負けた瞬間に相手の兵士が土下座したので、慌ててフォローを入れる。
『いえ、楽しかったです。また教えてください』
「もう一度勝負だな」
負けず嫌いのルーシェンがカードを配りはじめたので、取り巻きの全員ともう一度勝負する事にした。
「王子、ミサキ様、飲み物を持ってまいりました」
譲二さんがいつのまにかテーブルに飲み物を用意してくれて、兵士達もそれぞれ何か飲みながら楽しそうにゲームを始めてる。
左手の妖精さんが気にならないくらい楽しい。修学旅行の夜みたいだ。
それからもう一度勝負して、今度も俺は負けてしまったけど、すっかりカードゲームが好きになった。次はチェスみたいなゲームでルーシェンと部下が戦うのを見守りながら応援する。こんな楽しい夜がずっと続いたらいいんだけどな。みんなの楽しい声に遠慮して妖精さんの力も弱ってる気がする。
眠くなってきたのでうとうとしながらルーシェンにもたれかかると、誰かがタオルケットみたいな薄い毛布をかけてくれた。
眠ってしまった俺は、次に起きた時には用意された寝室のベッドの中だった。隣にルーシェンが眠ってる。ルーシェンが運んでくれたんだろうか。
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