転生したら神子さまと呼ばれています

カム

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ep7.神官と聖騎士団

3 ロジェ先輩

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「神子さま、聖騎士一同、神子さまの無事を信じて探し続けておりました……! 救出が遅れて本当に申し訳ありません」

 紫の羽根の優雅なグリフォンから降り立った聖騎士さんは、俺の前に来ると膝をついて腕を胸の前に置いた。白いフードを脱げば柔らかそうな金の髪。優しくて頭の良さそうな人だけど、今は泣き出しそうな表情をしてる。

「ありがとう。あなたは砦でお会いした方ですよね」
「はい。私は聖騎士第七部隊のロジェ=オランドと申します。神子さまに魔法をかけていただいたおかげで呪術痕も毒も免れました」

 そういえば砦で別れた時、毒の雨が降っていたんだった。

「みんなは大丈夫? 他の聖騎士さんたちは」

 俺が聞くとロジェさんは表情を曇らせた。

「呪術師との戦いは小規模ながらずっと続いており、エルトリア各地で被害と負傷者が出ています。聖騎士は各都市と砦に集まり負傷者と呪術師に対応しております。神子さまの捜索チームも各地に派遣されていたのですが、アルバートと連絡がとれずに手掛かりを失っておりました。まさかエルトリア国外に転移されていたとは……。大変な苦労をされたのですね」

「俺なら大丈夫です。初めて地下の街に行ったので驚いたけど、アルバートのおかげで無事に戻ってこられました」

 安心してもらおうと笑顔で答えたら、ロジェさんはしばらく俺の顔を見て固まっていた。この反応よくあるんだけど、あまり笑わない方がいいのかな。笑い方がおかしいとか?

「ロジェ先輩、先にグリフォンたちを休ませましょう」

 アルバートが話してようやくロジェ先輩の金縛り?が解けたみたいだ。それにしてもアルバートの丁寧な話し方が久しぶりで新鮮な気分になる。周りに人がいる時はアルバートはいつもこんな感じだった。

「あ、ああ。確かにグリフォンたちもずっと飛行していて疲れてるよな」
「クェー」

「聖騎士様、グリフォンの眠る場所を用意したので僕たちがご案内します」
「じゃあお願いしようかな」

 グリフォンは灯台の隣にある建物で休憩できるみたいだ。俺が想像していた動物の飼育小屋ではなくて人の住む部屋に近かった。グリフォンって虎みたいな大きさだけど室内飼いの生き物なのかも。床には絨毯も敷かれているしクッションもある。大神殿にあるゼフィーの小屋には入ったことがなかったけど、きっと豪華なんだろうな。

「あの、触っていいですか?」
「こんなに綺麗なグリフォン初めて見た」
「神子様がいらっしゃるだけで夢みたいだけど、聖騎士さまがお二人も来られる事もすごいわ」
「そうなの?」
「アルバート様や他の聖騎士様はいつもお一人で来られてました。それで聖水を渡してくださったあとはお食事してお帰りになるの。村にはもう私たちしか住んでないから、みんな聖騎士様に会えるのを楽しみにしていました」
「そうでしたね」

 アルバートの聖騎士時代の話が聞けて楽しい。アルバートはそっけないけど子供達に慕われてる。
 ゼフィーが尻尾を振っているので俺もグリフォンに触らせてもらった。ロジェさんのグリフォンはシンリーという名前らしい。シンリーはつんとしてるけど、白い毛並みに紫の羽根はすごく美しい。それにロジェさんのことが大好きなのが伝わってくる。
 子供達に協力してもらってグリフォンに水と餌をあげる。アルバートがずっとゼフィーを撫でていて、なんだか羨ましくなった。

***

 俺が目覚めたのは朝だと思っていたけど、お昼をすぎていたみたいだ。グリフォンたちを休ませた後、夕食まで時間があるのでアルバートとロジェさんは灯台の周辺の結界を強化するために村の外に出かけるらしい。

「俺も付いていっていい?」
「お好きにどうぞ」
「アルバート、神子さまが危険なのでは?」
「イルケデニアスに比べたらはるかにマシです。そうですよね、かなめ様」
「はい。ロジェさん、大丈夫です」
「分かりました。私たちのそばから離れませんように」

 ロジェさんが周囲を警戒しながら歩いているのが面白い。アルバートはロジェさんよりリラックスして周囲を眺めてる。俺はそんなアルバートの横顔を見てる。

「かなめ様、明日はナラミテへ出発します。ここからだとグリフォンで半日もかかりません。ナラミテに到着したら護衛を強化して王都へ向かう予定です」
「もしかしてグリフォンに乗せてもらえるの?」
「はい。短距離なら回復魔法をかければ大丈夫でしょう」
「やった!」
「浮かれすぎて落ちても知りませんよ」

「アルバート、お前、神子様になんて口のききかただ……」
「ロジェさん、これでも丁寧な方なんだよ」
「ええっ!」

 大神殿がよく許してるな、とかなんとかぶつぶつ言っているロジェさんを横目に、俺とアルバートは灯台の外のなだらかな斜面を歩いていった。
 
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