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ep.4 呪術師
12 脱出②
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足音は俺たちに気づくことなく遠ざかっていった。天幕の陰から廊下を覗くと、黒い煙が充満していたから煙から逃げるように逆方向に進んだ。出口がどこなのか分からない。しばらく歩いたけど、廊下の先は行き止まりで倉庫になっているらしく、箱が山積みになっていた。
「煙が上に流れているな。外に出られる場所があるのかもしれない」
アルバートが燭台を持ってきて倉庫を調べてる。天幕で隠れていたけど高い場所に木の窓があった。少し光が洩れてる。
「ここから上に行けそうだ。先に様子を見てくる。隠れてろ」
アルバートが箱を登っていくのをハラハラしながら見つめる。足が痛そうだ。大丈夫かな……。
「ピィ」
アルバートを心配していると、おもちが服を引っ張った。
「おもち、どうしたの?」
おもちはポケットを出て、倉庫の壁に飛んでいく。そのまま壁をコツコツ叩いてる。よく見ると分かりにくい場所に隠し扉が存在していた。魔法で閉められてる。普通の人なら難しいと思うけど、俺は開けられそうだ。
魔法を解いて扉を開けると、秘密の部屋の奥に魔法陣が見えた。
***
「かなめ」
天井近くの窓が開いていて、アルバートが呼んでいた。外に出られるのかな。魔法陣のことは後で話そう。
「アル、待ってて。すぐそっちに行く」
箱に登るのをアルバートが手伝ってくれた。一番上の箱に登ると、窓に手が届くように抱き上げて支えてもらった。マントを着ていて良かった。お尻を支えてもらったから下着姿だったらと思うと恥ずかしすぎる。
ようやく窓から顔を出し、そのままベランダみたいな狭いスペースに這い出た。久々に明るい場所に出られたような気がする。外は一面の夕焼け空だった。砂混じりの強い風が吹いてる。煙と血の匂いがした。
ベランダには落ちないように低い柵がしてあった。ここ、かなり高い位置にある。下りるのは厳しそう。
外はゴツゴツした岩山が見渡す限り遠くまで続いていた。茶色やベージュの岩肌はオレンジに染まっているけど太陽はよく見えない。おまけに家も建物も見当たらないしどう見てもエルトリアの首都じゃない。俺がいた建物は岩山と見分けがつかないけど、よく見れば窓や通路が存在していた。岩山に造られた巨大な城みたいな雰囲気だ。
俺とアルバートがいる狭いスペースの近くにも、崩れそうな石の細い階段や上まで続くハシゴが見えたから岩壁の外を移動することもできるみたいだけど、アルバートの足を完全に治さないと無理だろうな。俺はどこも怪我をしていないけど、強風の中、こんな高いところを移動するのはやっぱり怖いかも。足を踏み外したら確実に死ぬ自信がある。
遠くの空にジャターユが飛んでいるのが見えた。グリフォンに乗った聖騎士の姿も。それに向かって放たれる矢や魔法。爆発音が響いてる。みんなが戦っているのは少し離れた場所みたいだ。思ったより大規模な戦いになっていて怖くなった。この戦いって、もしかして全部俺のせいなんだろうか。
「かなめ、頭を低くしてろ。見つかるとまずい」
「どうするの?」
「ゼフィーを呼びたいが……位置が悪いな」
アルバートが首に下げていた小さな笛を吹く。俺には音は聞こえないけど、ゼフィーには届いて欲しい。
ゼフィーを待っている間にアルバートの足に痛み止めの魔法をかけた。アルの足は少ししか時間が経っていないのに、再び傷が開いて血が流れていた。呪いは棘のあるワイヤーのように変化し、アルバートの足を傷つけている。呪いは厄介だ。完全に治療しないとどんどん悪化する。
「だめだ……聞こえないのか?」
時間が経ってもゼフィーは現れなかった。
「アル、実は下の部屋に隠し扉を見つけたんだ。魔法陣があったから、ゼフィーが来なかったらそこから移動しよう」
「魔方陣?」
「うん」
「移動先が分からないが、このまま誰も来ないならその方法しかないな。この足ではお前を抱えて走れない」
アルと話していると、近くで風を切る音がした。アルバートが剣を抜く。
「かなめ、伏せてろ!」
言われた通り頭を低くして伏せる。すぐそばの壁に黒い矢が突き刺さった。呪いがセットになった呪術師の矢だ。怖すぎる。回復以外の魔法を大急ぎで何か思い出せ、俺。
「見つけたぞ! こっちに神子が!」
顔を上げると、数メートル先の見張り台のような岩の上に弓矢をつがえた呪術師がいた。アルバートを狙ってる。
「アル!」
飛んでくる矢をアルバートが正確に剣で弾いてる。でもそれは普通の矢と違ってどこかに刺さった後も呪いを飛ばしてくる。俺は飛んでくる呪いを捕まえては墨みたいなそれを手で砕いた。少し痺れるけど浄化ならできそうだ。
「くっ……ここから脱出するのは無理か……!」
「アルバート!」
突然聞いたことのない声がして、紫色の物体が視界を横切った。それがグリフォンだと少し遅れて気づく。騎乗した聖騎士は細い槍を持ち一気に呪術師に振り下ろす。グリフォンの爪と槍の攻撃で呪術師は倒れ見えなくなった。
「ロジェ先輩!」
「煙が上に流れているな。外に出られる場所があるのかもしれない」
アルバートが燭台を持ってきて倉庫を調べてる。天幕で隠れていたけど高い場所に木の窓があった。少し光が洩れてる。
「ここから上に行けそうだ。先に様子を見てくる。隠れてろ」
アルバートが箱を登っていくのをハラハラしながら見つめる。足が痛そうだ。大丈夫かな……。
「ピィ」
アルバートを心配していると、おもちが服を引っ張った。
「おもち、どうしたの?」
おもちはポケットを出て、倉庫の壁に飛んでいく。そのまま壁をコツコツ叩いてる。よく見ると分かりにくい場所に隠し扉が存在していた。魔法で閉められてる。普通の人なら難しいと思うけど、俺は開けられそうだ。
魔法を解いて扉を開けると、秘密の部屋の奥に魔法陣が見えた。
***
「かなめ」
天井近くの窓が開いていて、アルバートが呼んでいた。外に出られるのかな。魔法陣のことは後で話そう。
「アル、待ってて。すぐそっちに行く」
箱に登るのをアルバートが手伝ってくれた。一番上の箱に登ると、窓に手が届くように抱き上げて支えてもらった。マントを着ていて良かった。お尻を支えてもらったから下着姿だったらと思うと恥ずかしすぎる。
ようやく窓から顔を出し、そのままベランダみたいな狭いスペースに這い出た。久々に明るい場所に出られたような気がする。外は一面の夕焼け空だった。砂混じりの強い風が吹いてる。煙と血の匂いがした。
ベランダには落ちないように低い柵がしてあった。ここ、かなり高い位置にある。下りるのは厳しそう。
外はゴツゴツした岩山が見渡す限り遠くまで続いていた。茶色やベージュの岩肌はオレンジに染まっているけど太陽はよく見えない。おまけに家も建物も見当たらないしどう見てもエルトリアの首都じゃない。俺がいた建物は岩山と見分けがつかないけど、よく見れば窓や通路が存在していた。岩山に造られた巨大な城みたいな雰囲気だ。
俺とアルバートがいる狭いスペースの近くにも、崩れそうな石の細い階段や上まで続くハシゴが見えたから岩壁の外を移動することもできるみたいだけど、アルバートの足を完全に治さないと無理だろうな。俺はどこも怪我をしていないけど、強風の中、こんな高いところを移動するのはやっぱり怖いかも。足を踏み外したら確実に死ぬ自信がある。
遠くの空にジャターユが飛んでいるのが見えた。グリフォンに乗った聖騎士の姿も。それに向かって放たれる矢や魔法。爆発音が響いてる。みんなが戦っているのは少し離れた場所みたいだ。思ったより大規模な戦いになっていて怖くなった。この戦いって、もしかして全部俺のせいなんだろうか。
「かなめ、頭を低くしてろ。見つかるとまずい」
「どうするの?」
「ゼフィーを呼びたいが……位置が悪いな」
アルバートが首に下げていた小さな笛を吹く。俺には音は聞こえないけど、ゼフィーには届いて欲しい。
ゼフィーを待っている間にアルバートの足に痛み止めの魔法をかけた。アルの足は少ししか時間が経っていないのに、再び傷が開いて血が流れていた。呪いは棘のあるワイヤーのように変化し、アルバートの足を傷つけている。呪いは厄介だ。完全に治療しないとどんどん悪化する。
「だめだ……聞こえないのか?」
時間が経ってもゼフィーは現れなかった。
「アル、実は下の部屋に隠し扉を見つけたんだ。魔法陣があったから、ゼフィーが来なかったらそこから移動しよう」
「魔方陣?」
「うん」
「移動先が分からないが、このまま誰も来ないならその方法しかないな。この足ではお前を抱えて走れない」
アルと話していると、近くで風を切る音がした。アルバートが剣を抜く。
「かなめ、伏せてろ!」
言われた通り頭を低くして伏せる。すぐそばの壁に黒い矢が突き刺さった。呪いがセットになった呪術師の矢だ。怖すぎる。回復以外の魔法を大急ぎで何か思い出せ、俺。
「見つけたぞ! こっちに神子が!」
顔を上げると、数メートル先の見張り台のような岩の上に弓矢をつがえた呪術師がいた。アルバートを狙ってる。
「アル!」
飛んでくる矢をアルバートが正確に剣で弾いてる。でもそれは普通の矢と違ってどこかに刺さった後も呪いを飛ばしてくる。俺は飛んでくる呪いを捕まえては墨みたいなそれを手で砕いた。少し痺れるけど浄化ならできそうだ。
「くっ……ここから脱出するのは無理か……!」
「アルバート!」
突然聞いたことのない声がして、紫色の物体が視界を横切った。それがグリフォンだと少し遅れて気づく。騎乗した聖騎士は細い槍を持ち一気に呪術師に振り下ろす。グリフォンの爪と槍の攻撃で呪術師は倒れ見えなくなった。
「ロジェ先輩!」
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