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ep.4 呪術師
13 脱出③
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助けに来てくれた聖騎士は金髪の男の人で、アルバートより少し年下に見えた。でも先輩って言ってるから童顔なだけなのかも。紫のグリフォンは近くの岩壁に優雅に着地する。どこにも大きな怪我はなさそう。
「遅くなってすまない! 神子さまは……」
「ご無事だ」
俺がアルバートの後ろから顔を出すと、金髪のお兄さんが絶句した。数秒固まったあと、片手を胸の前に持っていき頭を下げる。
「み、神子さま……初めてお目にかかります。私は聖騎士第七部隊所属のロジェ=オランド。救出が遅れて本当に申し訳ありません!」
「大丈夫。助けてくれてありがとう」
「ロジェ先輩、ジャック隊長は⁉︎」
俺の返事になぜか唇を噛み締めていたロジェ先輩は、アルバートの言葉で我にかえった。
「ジャック隊長は第一、第五部隊の隊長とここから東側の岩場で呪術師を相手に戦っている。呪術師の数が多くて、なかなか突破できない。日没はまだだが、魔法の闇が迫っていて時間がない。強風でジャターユもグリフォンも思うように動けないんだ」
「そうか。ゼフィーは?」
「ゼフィーは翼を怪我して治療中だ。大怪我じゃないから安心しろ。ゼフィーの代わりに俺が来たんだが……」
「一人なのか」
「すまない。複数で隊列を作っていたが、みな攻撃を受けて散り散りになってしまった」
「なるほど。了解した」
アルバートは俺をマントごと抱え上げると、岩壁に足をかけた。
「俺なら一人で歩けるよ」
「ロジェ先輩、神子さまを頼みます」
「えっ⁉︎」
「分かった。神子さまを安全な場所にお連れしたらすぐに戻るから、それまで耐えてくれ」
「大丈夫だ。俺は戻って呪術師を一人でも道連れにする。ここは危険だからはやく離れたほうがいい」
「駄目だよ! アルの足を放っておいたら歩けなくなる。戦うなんて無茶だよ」
凍りつくような恐怖に身体が震えた。アルバートは俺を助けて自分は犠牲になるつもりだ。そうしたらまた一人でこの世界に取り残される。それだけは絶対に嫌だ。
「神子さま、こちらへ」
ロジェさんが手を伸ばしてきたけど、それは握らずにアルバートにしがみついた。
「二人一緒じゃないと行かない」
「かなめ様、あなたの代わりはいないのですよ」
「アルバートの代わりだっていないよ!」
アルバートが苛立ってるけど、ここは曲げられない。ロジェ先輩が少し笑った気がした。
「ではシンリーをお貸しします。お二人で避難を」
「シンリーはロジェ先輩しか乗せない。そうだよな? シンリー」
「クエー」
ごうっと強風が吹き、全員が慌てて顔を伏せる。パラパラと雨が降り始めた。変な匂いのする茶色い雨だ。少し痛い。小石も混ざってる。
「毒の雨か」
アルバートが舌打ちした。
「日没が近い。神子さま、アルバート、はやく!」
アルバートはしがみつく俺を地面に下ろした。
「ロジェ先輩、先に避難を。私と神子さまは建物の中にあった魔法陣で避難します。転移先は不明ですが、移動先から必ず救助要請を行います」
「しかし……」
「ロジェさん、先に行ってください。転移した後、アルバートの足を治したら連絡するので、その時にまた助けに来てください」
ロジェ先輩はしばらく躊躇ったあと、胸の前に手を置いた。
「神子さまのご命令に従います。神子さま、どうかアルバートとこの国をお救いください」
紫のグリフォン、シンリーが翼を広げて飛び立つ。俺は少しだけ思い出した魔法を飛び立つグリフォンに向けて放った。ロジェ先輩とシンリーが光に包まれる。これできっと毒の雨から守られるはずだ。
***
「馬鹿だな。乗って逃げれば良かったのに」
「アルバートを置いていけないよ」
再び箱の山を下りて、隠し扉の魔法陣に向かう。部屋の中は煙が充満していて、防御魔法をかけていても息苦しい。
足を引きずっているアルバートを支えながら、なんとか魔法陣までたどり着いた。
「どこに飛ぶかわからないから、賭けみたいなものだな」
「呪術師の本拠地かも。でも多分、避難場所だと思うよ」
「行くか」
魔法陣はほんの少しの魔力で黒く輝き始めた。足を踏み入れた瞬間、目の前の景色はぼやけて消えた。
「遅くなってすまない! 神子さまは……」
「ご無事だ」
俺がアルバートの後ろから顔を出すと、金髪のお兄さんが絶句した。数秒固まったあと、片手を胸の前に持っていき頭を下げる。
「み、神子さま……初めてお目にかかります。私は聖騎士第七部隊所属のロジェ=オランド。救出が遅れて本当に申し訳ありません!」
「大丈夫。助けてくれてありがとう」
「ロジェ先輩、ジャック隊長は⁉︎」
俺の返事になぜか唇を噛み締めていたロジェ先輩は、アルバートの言葉で我にかえった。
「ジャック隊長は第一、第五部隊の隊長とここから東側の岩場で呪術師を相手に戦っている。呪術師の数が多くて、なかなか突破できない。日没はまだだが、魔法の闇が迫っていて時間がない。強風でジャターユもグリフォンも思うように動けないんだ」
「そうか。ゼフィーは?」
「ゼフィーは翼を怪我して治療中だ。大怪我じゃないから安心しろ。ゼフィーの代わりに俺が来たんだが……」
「一人なのか」
「すまない。複数で隊列を作っていたが、みな攻撃を受けて散り散りになってしまった」
「なるほど。了解した」
アルバートは俺をマントごと抱え上げると、岩壁に足をかけた。
「俺なら一人で歩けるよ」
「ロジェ先輩、神子さまを頼みます」
「えっ⁉︎」
「分かった。神子さまを安全な場所にお連れしたらすぐに戻るから、それまで耐えてくれ」
「大丈夫だ。俺は戻って呪術師を一人でも道連れにする。ここは危険だからはやく離れたほうがいい」
「駄目だよ! アルの足を放っておいたら歩けなくなる。戦うなんて無茶だよ」
凍りつくような恐怖に身体が震えた。アルバートは俺を助けて自分は犠牲になるつもりだ。そうしたらまた一人でこの世界に取り残される。それだけは絶対に嫌だ。
「神子さま、こちらへ」
ロジェさんが手を伸ばしてきたけど、それは握らずにアルバートにしがみついた。
「二人一緒じゃないと行かない」
「かなめ様、あなたの代わりはいないのですよ」
「アルバートの代わりだっていないよ!」
アルバートが苛立ってるけど、ここは曲げられない。ロジェ先輩が少し笑った気がした。
「ではシンリーをお貸しします。お二人で避難を」
「シンリーはロジェ先輩しか乗せない。そうだよな? シンリー」
「クエー」
ごうっと強風が吹き、全員が慌てて顔を伏せる。パラパラと雨が降り始めた。変な匂いのする茶色い雨だ。少し痛い。小石も混ざってる。
「毒の雨か」
アルバートが舌打ちした。
「日没が近い。神子さま、アルバート、はやく!」
アルバートはしがみつく俺を地面に下ろした。
「ロジェ先輩、先に避難を。私と神子さまは建物の中にあった魔法陣で避難します。転移先は不明ですが、移動先から必ず救助要請を行います」
「しかし……」
「ロジェさん、先に行ってください。転移した後、アルバートの足を治したら連絡するので、その時にまた助けに来てください」
ロジェ先輩はしばらく躊躇ったあと、胸の前に手を置いた。
「神子さまのご命令に従います。神子さま、どうかアルバートとこの国をお救いください」
紫のグリフォン、シンリーが翼を広げて飛び立つ。俺は少しだけ思い出した魔法を飛び立つグリフォンに向けて放った。ロジェ先輩とシンリーが光に包まれる。これできっと毒の雨から守られるはずだ。
***
「馬鹿だな。乗って逃げれば良かったのに」
「アルバートを置いていけないよ」
再び箱の山を下りて、隠し扉の魔法陣に向かう。部屋の中は煙が充満していて、防御魔法をかけていても息苦しい。
足を引きずっているアルバートを支えながら、なんとか魔法陣までたどり着いた。
「どこに飛ぶかわからないから、賭けみたいなものだな」
「呪術師の本拠地かも。でも多分、避難場所だと思うよ」
「行くか」
魔法陣はほんの少しの魔力で黒く輝き始めた。足を踏み入れた瞬間、目の前の景色はぼやけて消えた。
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